地元の草野球チームでプレーする八木下海斗容疑者

「私にとってはかわいい孫。“祖母バカ”と言われるでしょうが、愛嬌があって、近所の人にもきちんと挨拶できるいい子なのよ。世間さまに顔向けできないような、こんなことをなぜしてしまったのか……申し訳ないです」

 横浜市に住む八木下海斗容疑者(23)の80代になる祖母は、途方に暮れてうなだれていた。

児相職員の立場を悪用して少女に接近

 5月26日、神奈川県警は横浜市中央児童相談所の職員2人の逮捕を発表した。冒頭の八木下容疑者は中学3年生のA子さん(14)と今年4月15日、横浜市内のホテルで性交したという児童福祉法違反の疑いでの逮捕だった。

 もう1人の逮捕者は、同県茅ケ崎市に住む大野正人容疑者(27)。昨年10月30日、高校2年生のB子さん(16)と横浜市内のホテルでわいせつな行為をしたという県青少年保護育成条例違反の疑いだった。A子さんもB子さんも、かつて同児相に一時保護されていて、すでに退所。子どもたちと職員が連絡をとることは禁止されているが、容疑者たちはSNSなどを通じて彼女たちと接触したのだ。

 被害者たちは、彼らと会った理由について“相談に乗ってほしかった”だけで、“性的な関係になることは望んでいなかった”と話している。

 児相職員という立場を悪用して、少女たちに近づいて性的行為に及ぶという悪質極まりない犯行といえるだろう。

 同児相は、週刊女性の取材に対して、

「2人が同時に逮捕されたのは、まったくの偶然です。八木下容疑者は勤務2年目で、これまで特に問題を起こしたことはありませんでした。非常に明るくて、子どもさんには慕われる職員。

 大野容疑者は4年目で、やはり特に問題はなかった。きちんと子どもさんに向き合うことができる、まじめな職員だったのですが……。指導が甘かったと指摘されてもしかたがありません」

 と反省の弁を述べた。

 横浜市のこども青少年局にも話を聞くと、

「本来であれば子どもを守るべき立場にある職員が逮捕されたという事実を重く受け止め、速やかに事実関係を確認のうえ、厳正に対処していきます」

少女の弱みにつけ込む卑劣行為

 児相職員による子どもへの性犯罪が後を絶たない──。

 '19年10月には、仙台市の児相職員が未就学の少女2人に下半身を触らせるなどしたとして懲役3年の実刑判決となっている。福岡市の児相職員も14歳の少女にわいせつな行為をしたとして逮捕され、'20年6月に懲役2年、執行猶予4年の有罪判決に。

 児童心理司として長年、児相に勤務していた心理カウンセラーの山脇由貴子さんは、次のように厳しく指弾する。

「児相に来る子は親から虐待を受けていたり、家庭に問題があって家出してきたりとメンタルが弱っている。だから、誰かに優しく接してもらいたいという願望が強いんです。そこにつけ込んだ、悪辣な行為といえます。容疑者は出来心かもしれませんが、子どもへの下心を持っていて、性的な目的のために児相という職に就いている人間は一定数いると思います」

 だが“個人の資質だけではなく、組織の問題でもある”と、山脇さんは続ける。

「このような人間を採用時にふるい落とすような仕組みが、できていないんです。それは厚労省も十分に認識していると思うので、あとは真剣に、本気で向き合うべき」

容疑者が勤めていた横浜市中央児童相談所

 今回、事件を起こした容疑者たちは、いったいどんな人物なのか──。週刊女性は、14歳の少女を毒牙にかけた八木下海斗容疑者の取材を進めた。

容疑者は“やんちゃ”“遊び人”の印象

 彼の実家は横浜市の大地主。1300平米を超える敷地内に豪邸が立っている。

「祖母、母、クラシックギターを教えている姉との4人暮らし。中華料理店を経営していた父親は、2年前に50代の若さで突然亡くなっています」(近所の住民)

草野球のチームメートに笑みを見せる容疑者

 中学校の同級生は、容疑者のことを次のように振り返る。

「部活はバスケ部に入っていたけど、からきしヘタで(笑)。でも、性格は明るくて“イジられキャラ”って感じ。面白いやつでしたよ」

 高校は地元の県立高校に進学して、野球部に入部。その後、私立大学に進んで幼児教育を専攻していたが、

「あいつは勉強ができなかった。でも、親が金持ちで“何でもいいから入っとけ”と、大学にすべり込んだみたいですよ」(高校の同級生)

 そのころから、周囲の容疑者の印象が“やんちゃ”“遊び人”へと変わっていく。児相関係者によると、普段は“子どもに慕われる職員”である容疑者も、機嫌が悪いと児童を叱るなど身勝手な態度をとっていた一面も。

「両親が甘やかしてしまったのかも」

 さらに近所の住民によると、

「大学で遊び方を覚えちゃったんですかね。社会人になってからは大型バイクで通勤していましたよ。数人のバイク仲間がいて、集まるとブンブンうるさいのよ。バイクのほかにも、4WDの車も持っていた。まぁ、跡継ぎのボンボンだからね」

 同児相によれば、八木下容疑者の給料は月21万円程度。大型バイクや4WD車は、彼の収入では到底買えるシロモノではない。

 何不自由ない人生が、道を踏みはずすきっかけになったのか──。自宅の庭で草取りをしていた容疑者の祖母に話を聞くと、冒頭のような無念を告白した。さらに、

「私は40年前に夫を亡くして、女手ひとつで子どもたちを育ててきた。2年前にその子ども(容疑者の父親)を失い、それで今回は、孫の海斗(容疑者)も警察沙汰になって……さんざんな人生ですよ。いったい何が悪かったのか」

容疑者の実家は広大な土地に立つ大豪邸。車庫には大型バイクも

 容疑者は、夜勤の仕事も、文句ひとつ言わずにこなすまじめな性格ではあったが、

「最近はやんちゃな子になっていたかもしれない。私は秋田生まれで厳しく育てられたので、子どもが悪いことをすればパシッと叩いていた。でも、海斗の両親は優しかったからねぇ……。甘やかしてしまったのかもしれんね」

 容疑者の面会には、母親しか行っていないというが、

「今度、私が面会に行こうと思っています。職場はクビになるのは当然だし、子ども相手の仕事に就くのはもう無理でしょうけど、立ち直らせたい。そのためにも、被害者にはきちんと償いをして、更生させます。私が生きているうちに、なんとか……」

 欲望にまかせたひとり善がりの犯行。犯した罪は、あまりにも重い──。