ここまで綿密で大掛かりな計画を立てたストーカーは芸能史上で見たことがない。まるで『ミッション:インポッシブル』のようだ。
“紀州のドンファン”こと野崎幸助氏殺害容疑で逮捕された須藤早貴(さき)被告がジャニーズタレントをストーキングしていたというのだ。
『週刊文春』(6月10日号)が報じたところによれば、須藤被告は野崎氏が亡くなったわずか半年後に、探偵業を営むX氏、つまり私立探偵に『King&Prince』の神宮寺勇太の自宅を割ってほしいと依頼したという。X氏によればそのような依頼は受けることは特に珍しいことではなく、このときも神宮司を張り込み、尾行して彼の自宅マンションを突き止めた。2020年秋ごろに偶然、同マンションに空き部屋があることがわかり、彼女はその部屋に転居。神宮寺に接近することに成功した。
ジャニーズがストーカーされてきた歴史
これだけでも驚愕なのだが、神宮寺が過去のインタビューで、
《彼女と一緒にバイクでツーリングし海を見に行くのが理想のデート》
と語っていたことから、須藤被告は大型自動二輪免許を取得し大型バイクを購入、駐車場は神宮寺の隣を確保したという。恐るべき行動力だ。
芸能人がストーカー被害に遭うのは珍しいことではない。それどころか年々その被害が増えており深刻な問題となっている。
記憶に新しいところでは福山雅治・吹石一恵夫妻の事件。夫妻の部屋に福山のファンでもあったストーカーが侵入したのだが、犯人はふたりが住むマンションのコンシェルジュだった。2018年には菊池桃子にストーカー行為を繰り返していたタクシー運転手が逮捕されている。古くは1977年、岡田奈々の自宅に暴漢が侵入しナイフで切りつけ、朝まで”籠城する”という事件も発生した。
「当時はまだストーカーという言葉が一般的ではなく、芸能人につきまとうファンは“追っかけ”と呼ばれていました。岡田に切りつけた犯人も熱狂的なファンということでしたが逃走したまま時効を迎えています」(週刊誌記者)
ストーカーという言葉が浸透するきっかけとなったのは1999年に起きた『桶川ストーカー殺人事件』。女子大学生が元交際相手の男を中心とする犯人グループから嫌がらせ行為を受け続けた末、JR東日本高崎線桶川駅前で殺害された事件だ。本件の発生が契機となり、2000年に『ストーカー規制法』が制定された。
ジャニーズタレントでは2019年に『Hey! Say! JUMP』の中島裕翔さんにストーカー行為を行なっていた、20代の会社員の女性が逮捕されたことがある。『関ジャニ∞』大倉忠義が“やらかし”と呼ばれる熱狂的なファンにつきまとわれていたことを明かしブログで苦言を呈したこともあった。また、中居正広は自宅に見知らぬ女性から頻繁に電話が入ったことがあるとも。
芸能史に残る“最凶ぶり”
かくいう、私もあるジャニーズタレントの取材で自宅前を張り込んでいたとき、そのあたりに佇んでいた30代くらいの主婦と出くわした。いわく、「業者にお金を払って自宅を割ってもらった」らしい。そして、「今日は帰ってこないかもしれないです。〇〇に行っているから」と堂々とした様子で語っていたことが思い出される。
だが、こうした熱狂的なファン(あるいはストーカー)は、たとえ芸能人の居場所を突き止めたとしても、その近くや同じマンションに引っ越すなどそう易々とできることではない。しかも趣味を合わせるように大型バイクを購入することも。当たり前だがそれには大金、そして並外れた行動力が必要となるからだ。
「須藤被告はドンファンから月100万円のお手当をもらっていたようですし、ドンファンが亡くなった後に彼の会社の代表取締役になると約3800万円の報酬を受け取っていましたからね。ホストクラブなどで浪費していたということですが、神宮司に近づくためにもかなり使っていたんでしょうね」(写真誌記者)
お膳立てはすべて整い、“さあ、これから”というときに逮捕されてしまい本人はさぞかし悔しがっていることだろうが、
「不謹慎ですが、あの妖艶さとナイスバディですからね。自分と同じ高級タワーマンションに住んで、ポルシェや大型バイクを乗り回していたら“ストーカー・追っかけ”とは区別がつかないでしょう。しかし、それにしても同じマンションを借りるまでの“資金力”を持ち合わせたストーカーはこれまでにいない。芸能史に残る最凶ぶりではないでしょうか」(同・写真誌記者)
お金持ちで殺人容疑で起訴された美人ストーカーなんて聞いたことがないが、神宮寺が被害に遭う前に逮捕されてファンはきっと胸をなでおろしているだろう。
<芸能ジャーナリスト・佐々木博之> ◎元フライデー記者。現在も週刊誌等で取材活動を続けており、テレビ・ラジオ番組などでコメンテーターとしても活躍中。