痛みを感じる場所に必ずある、コリッと固い「筋硬結」。ここをボールペンで5秒押してほぐすだけ。テレビを見ながら、家事の合間に、いつでもOK。マッサージに行きづらい今、ボールペンが完璧な代役を果たしてくれる!?
痛みやコリの多くは筋肉のけいれんが原因
なかなか消えない、すぐにぶり返す痛みやコリ。その根源から改善できれば……と考えたことはありませんか。
「筋肉は筋線維という糸状の組織からできており、この筋線維がけいれんして固まると、筋硬結というコリが生じます。そして、放置された筋硬結が徐々に悪化し、ある一線を越えると急に痛みが。一種の筋肉痛といえますが、この筋肉のしこりが、肩こりや腰痛などを引き起こす大きな原因のひとつと考えられます」
と語るのは、理学療法士の石部伸之さん。筋肉のしこり=筋硬結は、誰でも、ふだんの生活でできるものだとか。
「食品のつまったエコバッグを持ち上げたときなど、筋肉に瞬間的に力が入ったときや不自然な姿勢で力が入った瞬間、またデスクワークなどで長時間同じ姿勢でいるときにもできやすいですね」
すぐにできてしまうものだからこそ、こまめにほぐすことが重要だという石部さん。
「筋硬結をほぐすためには、ある程度の力が必要になりますが、指でマッサージをすると指の筋肉や関節に負担がかかるだけでなく、手首や前腕にある、腕を動かすための筋肉も疲労してしまいます」
マッサージで手に痛みが生じてしまっては本末転倒。
「ボールペンを使えば、指や手に大きな負担はかかりません。また、筋硬結の太さは、鉛筆の芯ぐらいからマカロニぐらい。ボールペンのペン尻の太さは、筋肉内にできた筋硬結をピンポイントで押すのに最適なんです」
ボールペンマッサージで筋硬結をほぐすと、軽い痛みやコリなら1~2日で解消。
「マッサージは、テレビを見ながら行ってもOKですよ」
痛みのモトを気軽に効率よくほぐしてスッキリしよう!
どんなときにやるといい?
●急激な痛みが落ちつき、慢性的な痛みやコリがあるとき
●運動や力仕事、筋トレなどをしたあと、筋肉痛を感じる前
●入浴後の身体が温まっているときやリラックスしているとき
【注意!】こんなときはマッサージを控えて
●ケガをした直後や次の日、または運動や筋トレなどによる筋肉痛がひどいとき
●明らかに腫れているとき
●ぎっくり腰の直後
●関節リウマチやがんの治療中
※血管障害や湿疹、日やけ後の炎症など皮膚のトラブル、持病がある方も注意が必要です。気になる場合は、まずはかかりつけの医師に相談を。
ボールペンマッサージやり方のポイント
【1】あちこち押してみて「コリコリ」「痛い」ところを探し出す
痛みを感じるところの筋肉を、まずは指やボールペンのペン尻であちこち押してみましょう。すると、少しコリッとしていたり、明らかにほかとは違う痛みを感じるポイントがあるはず。重症の場合は、飛び上がるほど痛いかもしれません。その箇所こそが、ほぐすべき筋硬結!
【2】面ではなく「点」で5秒間押したらパッとはなす
痛みのポイント「筋硬結」をボールペンで垂直に5秒間押してから、パッとはなす。1か所につき、3~5回。やりすぎると筋繊維を傷めてしまうので、同じ箇所を何度もしつこく押すのは厳禁です。また、強さは「痛気持ちいい」程度で。慢性の痛みを改善したいなら、1日1~2セットを毎日続けるとよいでしょう。
【3】とがっていないペン尻で直径5~8ミリ程度の太さが◎
マッサージに使うボールペンは、ペン尻またはキャップがとがっていないもので、直径5~8ミリ程度の太さが最適です。ノック式のタイプは押すときにうまく力が入らないのでNG。家にあるもの、安価なものでかまいませんが、グリップがついていてすべりにくいものがおすすめ。
【4】指に負担がかからないようしっかり握って持つ
ボールペンでマッサージをする際には、親指とほかの指でしっかりと握るように持ち、筋肉に対して垂直方向に圧を加えるように押していきましょう。字を書くときの持ち方で行うと、指に大きな負担がかかってしまうので注意して。
ボールペンマッサージ 〜その1〜
肩こり・首こり・後頭部の痛みに
背中の上半分を覆っている大きな筋肉である僧帽筋と、僧帽筋の深層にあるインナーマッスルの肩甲挙筋、頭板状筋をほぐす。変形性頸椎症、胸部出口症候群の改善にも。
【1】背中まわりの筋肉をあちこち押してみて、筋硬結を探す。まずは肩を指で押さえて、肩甲骨の上のフチを見つけて。フチのあたりが肩甲挙筋で、その上に僧帽筋がある、このあたりは筋硬結ができやすい
【2】筋硬結を見つけたら、ボールペンでマッサージ。背もたれにひじをのせ、肩甲骨を浮き上がらせてやると押しやすくなる
※押しづらいときは…
押す側と反対の手で持ったボールペンを、首の前から回してマッサージしてもOK。
【3】両わきにある筋硬結を確認したら、ボールペンで押す
首の中心部に浮き上がっている骨のすぐ両わきも、肩甲挙筋と僧帽筋の筋硬結ができやすいところ。
【4】くぼみのまわりの上下をボールペンで押して、頭板状筋をほぐす
頭板状筋は、頭の後ろで両手の指を組み、親指で首の後ろ側にあるくぼみを押したあたりにある。
ボールペンマッサージ 〜その2〜
頭痛・眼精疲労・こめかみの痛みに
首から肩にかけて僧帽筋が壁のようについている僧帽筋壁と、首の左右にある胸鎖乳突筋をほぐす。ただし、激しい頭痛がある場合は、さまざまな病気が疑われるのですぐに病院へ!
【1】僧帽筋壁を指でつまんで、筋肉の位置を確認する
【2】確認したところを押していく。鋭く痛むポイントがあれば、そこが筋硬結。ボールペンで圧をかけてマッサージして。上、前、後ろなど、いろいろな方向から押してOK
【3】乳様突起から、筋肉の中心を徐々に下に向かって、ボールペンでやさしく押していく
胸鎖乳突筋は、耳の後ろにある乳様突起からふたつに分かれてついている。顔を横に向けると浮かび上がってくる
ボールペンマッサージ 〜その3〜
腰痛・ぎっくり腰に
腰から背中にかけては、広背筋や脊柱起立筋群、腰方形筋など姿勢を維持するための筋肉があります。腰痛の約85%は明確な原因を特定しづらいものですが、その多くに、これらの筋肉にできた筋硬結が関係していると考えられます。
腰の周囲にあるいちばん下の肋骨、背骨、骨盤の上側の骨は、服の上からでもでっぱりを確認できる。これが押す場所の目安となる
【1】ボールペンで、骨のでっぱりに囲まれた腰まわりを押す
【2】上半身と下半身をつなぐ腸腰筋の位置を確認する。太もものつけ根あたりを親指で押さえて太ももを上下させると、動く腸腰筋の腱を確認できる
【3】腸腰筋の腱の上をボールペンで押していく。鋭く痛む筋硬結を見つけたら、圧をかけてマッサージ
【4】脊柱起立筋は、骨盤から後頭部にかけて、背骨の両わきにかまぼこのような形をした長い筋肉がついているイメージ。腰まわりにある半円柱型のかまぼこ全体を、上と横から押していく
【5】背骨のすぐ両わきも筋硬結ができやすい。骨がゴツゴツとしているところのすぐわきをボールペンで押していく
〜筋硬結をうまく探すコツ〜
筋肉に力が入って緊張した状態では筋硬結がうまく探せないため、マッサージする側とは反対側の脚に体重をかけ、マッサージする側の筋肉をゆるめる。テーブルなどに手をついて行うとやりやすい
教えてくれたのは……理学療法士、石部伸之さん ●准看護師、介護支援専門員。デルタフォースジム主宰。勤務する病院でさまざまな疾患のリハビリテーションを行うほか、その豊富な臨床経験から独自のリハビリテーション「逆ストレッチ」を考案。日々、実践指導を行っている。『たった5秒で 痛みを治す! ほぐすだけ ボールペンマッサージ』(廣済堂出版)
〈構成/長谷川英子〉
【『週刊女性PRIME』MSNニュース限定配信記事】