松本人志と上原浩治

 ネット上に出されたニュース記事が、立て続けに炎上した。

 記事に異議申し立てをしたのは、ダウンタウンの松本人志氏(57)と元プロ野球選手で野球解説者の上原浩治氏(46)。

いまだに世帯視聴率を指標にしている新聞社

 松本氏は12日に放送されたコント特番『キングオブコントの会』(TBS系)の視聴率が「6.8%」と報じられたことに対し、

「ネットニュースっていつまで“世帯”視聴率を記事にするんやろ?」

 と疑問を投げかけた。

 さらにお笑い芸人の千鳥の番組『相席食堂』(テレビ朝日系)について「視聴率5.8% 激戦区でリベンジならず」と報じたスポーツ紙に対し、

「これぞ勉強不足のバカライター」

 とバッサリと切り捨てたのだ。

「松本さんの異議申し立ては、問題点がはっきりしています。記事の書き手はビデオリサーチ社が発表する世帯視聴率によっていて、松本さんはコア視聴率など広告指標になる詳細な視聴率によっていること。これではかみ合いません」

 と解説するのはテレビ局制作関係者だ。こう続ける。

「テレビ局員や制作スタッフが見ることができる視聴率表では、細かいデータを見ることができます。すでに局内に張り出す紙でも、世帯視聴率ではなく個人視聴率になっています。ただ、新聞で毎週発表される視聴率の表がありますが、あれがいまだに世帯視聴率表示によっていて、その上位から1位、2位と順番づけられている。それをもとに原稿を書いてしまうから、今回のような問題が起きるわけです。テレビ局内は個人、局外は世帯と視聴率の尺度が乖離しているということが原因です」

 テレビ局の稼ぎは視聴率のぶんどり合戦で決まるため、よく横一列の時間帯の優劣をつける。朝の番組では、世帯視聴率のトップはテレビ朝日系の『羽鳥慎一 モーニングショー』で、2番手が日テレ系の『スッキリ!』だが、13歳から49歳までのコアターゲット(局により年齢の設定に違いあり)を見ると、両番組の立場は逆転する。『スッキリ!』のほうに、クライアントは当然、広告を出したがる。

 そんなふうに、古い世帯視聴率と新たな個人視聴率は違っているのである。

上原浩治

全面降伏、コラムの休載も

 一方の、上原氏のケースは、ネット媒体『J-CASTニュース』内のコラムで、容姿を揶揄されたことに端を発している。

『テレビ見朱蘭(みしゅらん)』と題されたコラムで、筆者が「現役の時、筆者は彼の顔が苦手で、あまり好意を持っていなかった」と、上原氏の見た目に対する嫌悪感に言及したのである。

 これに対し上原氏は、

「容姿のことを言われてもこれでも一生懸命に生きてるんです。親には感謝してます。苦手な顔、好意を持ってない…そりゃ~好き嫌いは自由ですが、表立って書くことではないと思うんです。俺だって人間…傷つくこともありますので」

 とツイッターで反論。さらにブログでは、

「報道の自由にも程があります」

 と怒りを静かにぶちまけた。

 J-CASTは全面降伏で、コラムの休載も発表した。

「100%、悪いのは媒体側。筆者もダメなら、それをチェックする編集体制もダメ」

 と、ダメだしするのはウェブサイトデスクだ。

「筆者はベテランの放送コラムニストです。高齢者でも、きちんと自分の考えを修正したり、バージョンアップできる人もいますが、彼はそれができなかった。ここしばらくの世の中をきちんと見ていれば、見かけの問題はルッキズム(外見にもとづく差別)の問題として騒がれているのがわかる。書き手も編集もそこを認識できなかったことは、媒体としてアウトです」

 視聴率のうわべにだけ今も着眼して記事を書いたライター、人の見た目を平気で揶揄したライター。原稿を執筆することに対する、心配りの足りなさを露呈したために炎上物件になってしまった。

 決して人ごととはせず、書き手として自らを律したい。

〈取材・文/薮入うらら〉