現在と初代のパッケージ

 日ごろから慣れ親しんでいるロングセラー商品たち。よく考えてみると、どんな意味があるのかな……。名前の由来を調査しました!

8×4(エイト・フォー)由来は説が2つ

●ヤクルト【1935年~】
・エスペラント語のヨーグルトを言いやすいように変更した造語

 福岡県福岡市で誕生。生きたまま腸に到達する乳酸菌 シロタ株を、1本に200億個含んだ乳製品乳酸菌飲料。

ヤクルトは、エスペラント語でヨーグルトを意味するヤフルト(jahurto)という言葉を言いやすくした造語です。エスペラント語は1887年、ポーランド人のザメンホフという人が、一種の世界共通語として考案した言語です。『世界共通の願いである健康に寄与する飲み物の名前としてふさわしい』ことから、世界共通語であるエスペラント語を選びました」(ヤクルト 広報担当)

ヤクルト

●ビスコ【1933年~】
​・酵母が入ったビスケットから命名ただし現在は乳酸菌を配合

 誕生から80年以上のビスケット菓子。2005年のリニューアルでは、口どけがよくなって、クリームの量もアップ。乳酸菌の量も増やして、栄養面も強化された。

「創業者の江崎利一が、酵母に胃腸の機能をよくし、消化吸収作用を盛んにする効果があると知り、ビスケットに入れることを考えました。試行錯誤の末に、生きた酵母をクリームに含ませることに成功し、商品化が決定。酵母が入った身体にいい栄養菓子だとわかる商品名を考えることに。

 酵母が入ったビスケットだから『酵母ビスケット』、略して『コービス』、最終的には前後を入れ替えて『ビスコ』となりました。なお、現在のビスコには、酵母ではなく乳酸菌が入っています」(グリコ 広報担当)

 栄養満点だということを伝えたいがためのネーミングだったのだ。

初代のパッケージと現在のビスコ

●アンメルツ【1966年~】
​・諸説あり、有力なのはドイツ語の組み合わせ説

 1966年に発売された、肩こり薬であり、外用消炎鎮痛薬。貼るタイプと異なり、塗りやすいボトルでにおいも気にならないことから人気に。

英語で“反対”を意味する『アンチ』と、ドイツ語で“痛み”を意味する『シュメルツ』を組み合わせたという説が有力です」(小林製薬 広報担当)

アンメルツゴールドEXNEO

●8×4(エイト・フォー)【1951年~】
​・有効成分もしくは開発番号の32にちなんでドイツで名づけられた

 エイト・フォーは1951年にドイツのバイヤスドルフ社で誕生した、制汗デオドラント剤。日本では、初めてのパウダースプレーとして1974年に誕生した。日本の気候・体質・習慣・嗜好性に合わせ、日本独自処方のパウダースプレーや、1回使い切りカプセル製品も独自開発。

当時の広告マネージャーが開発時の有効成分をドイツ語で表した『Hexachlordihydroxydiphenylmethan』が32文字あり、『32を構成するもの』=『8×4』というアイデアを発案し、ブランドネームになったという説がひとつ。

 ドイツでの発売前についていた開発番号が『B32』だったため、同広告マネージャーが『32を構成するもの』=『8×4』というアイデアを発案し、ブランドネームになったという説の2つがあります」(ニベア花王 広報担当)

8×4(エイト・フォー)

シッカロール、名付け親は2人の教授

●Biore(ビオレ)【1980年~】
​・満ち足りた(Ore)生活(Bios)を意味するギリシャ語が由来の造語

 1980年に誕生した、洗顔料・基礎化粧品の化粧品ブランド。

固形石けんでの洗顔が主流だった時代に、洗い上がりと使い勝手のよい洗顔フォームとして開発されたのが『ビオレ洗顔フォーム』です。ギリシャ語の『Bios(生活)』と『Ore(満ち足りた)』を組み合わせて作られた造語で、満ち足りた(Ore)生活(Bios)を意味しています。

 いい肌でいられることと、充実した生活を送ることは、お互いにいい作用をもたらすと考え、健康な素肌を通して幸福な生活をサポートするブランドでありたい、という願いが込められています。ロゴは全世界共通で、白地にディープブルーの文字で表すのがルールとなっており、『清潔』と『すがすがしさ』を意味しています」(花王 広報担当)

ビオレ マシュマロホイップ モイスチャー

●仁丹【1905年~】​
・儒教の教えと中国の良薬という意味を持つことから命名

 明治時代に「懐中薬」として発売され、改良が重ねられてきた口中清涼剤。16種類の生薬が配合されている。

仁丹とは、儒教の教えの中心で最高の徳とされる“仁”と良薬や丸薬の意である“丹”を合わせたものです。“丹”は古代中国では、不老長生をかなえる仙薬として知られていました。『通天閣』の名づけ親である漢学者・藤沢南岳と、朝日新聞の論説委員だった西村天囚からのアドバイスを受け、創業者である森下博が命名しました

 大礼服マークの由来には諸説ありますが、森下はマークは外交官を意味し、『仁丹は薬の外交官である』と言っています。広く世界中の人々の健康のために役立てたいという思いが込められています」(森下仁丹 広報担当)

発売当時のケースと現在の瓶

●ドメスト【1920年代~】
​・家庭や家事を意味する英語“ドメスティック”が由来

 日本では1981年に販売がスタートした除菌クリーナー。1920年代にイギリスで生まれ、最初は漂白剤として訪問販売されていた。1960年代に濃縮タイプの除菌クリーナーが発売され、現在では世界30か国以上で販売されている。

ドメストは英語で“家庭の、家事の”という意味のDomestic(ドメスティック)に由来しています。トイレやキッチン、パイプなどの除菌ができ、その除菌力は99.99%。バイ菌を徹底除菌して、汚れはもちろん、バイ菌の繁殖によって起こる悪臭やヌメリも退治し、ドメストで家の中を衛生的に、清潔に保ってほしいとの思いを込めています」(ユニリーバ・ジャパン・カスタマーマーケティング 広報担当)

ドメスト

●シッカロール【1906年〜】
​・ラテン語で“乾かす”を意味する「シッカチオ」が由来

 なんと明治時代に発売された日本初のベビーパウダー。あせも、おむつかぶれ、ただれ、股ずれなどへの予防に使われているロングセラー商品。

商品名は、ラテン語で“乾かす”を意味する『シッカチオ』に由来しています。考案したのは、創業者であり、東大小児科の教授でもあった弘田長博士と、東大薬学科の丹波敬三教授で、彼らが名づけました

 明治末期につけられた名前としては、とてもモダンなものでしたが、『広辞苑』や『新言海』に掲載され、天瓜粉(天花粉)やベビーパウダーよりもシッカロールといったほうが通用するほど、一般的な言葉となっています」(アサヒグループ食品 広報担当)

シッカロール

マロニーの由来にギャグセンスあり

●シュミテクト【1992年~】​
・「シミる」と「プロテクト」を合わせた造語

 知覚過敏症状予防ハミガキを中心としたオーラルケア製品のブランド名。日本では1992年に発売され、世界各国ではSensodyne(センソダイン)のブランド名で販売されている。

知覚過敏症状で歯がシミるのを防ぐという意味で、『シミる』と『プロテクト』を合わせた造語として、シュミテクトと名づけられました」(グラクソ・スミスクライン・コンシューマー・ヘルスケア・ジャパン 広報担当)

シュミテクト エナメルケア+

●モンプチ【1987年~】
​・フランス語で“私の大切な可愛い子”という意味

 高級志向のキャットフードのブランド。

「日本で初めての食べきりサイズの高級ウエットキャットフードを発売するにあたり、従来の商品とは一線を画し、“大切な猫ちゃんに提供する、喜んでもらうための高級な食事”という新しいコンセプトで展開しました。

 その際に商品のブランド名称として『Mon Petit』という、フランス語で“私の大切な可愛い子”というニュアンスがコンセプトを表していたことと、日本人にとって覚えやすくなじみやすい言葉であったことから決定しました。『モンプチ』は発売と同時にヒット商品となり、現在でも高い認知と人気を獲得しています」(ネスレ日本 広報担当)

モンプチ

●スプライト【1961年〜】
​・Spirit(元気)とSprite(妖精)を掛け合わせた名称

 60年前にアメリカで誕生した炭酸飲料水。日本では1971年から全国で販売され、フレーバーのリニューアルが何度か行われている。現在では190以上の国や地域で販売。

英語のSpirit(元気の意)とSprite(妖精)に由来し、炭酸が威勢よくはじける様子、さわやかな透明感などを表現しています。炭酸による刺激と清涼感のあるクリアな味わいが、世界で若者を中心に幅広い層からの支持を集めています」(日本コカ・コーラ 広報担当)

スプライト

●マロニー【1964年〜】​
・「まろやかに煮える」という意味とシベリアの少女・マロンの思い出

「溶けにくいはるさめ」として1964年に販売スタート。主原料は北海道産じゃがいも澱粉で、コーンスターチを配合。

マロニー創業者の吉村義宗は、終戦後シベリアでの抑留生活を余儀なくされました。帰国した吉村が開発したマロニーは、まろやかに煮えるというシンプルな連想から名づけられたものでした。さらに、吉村はその響きからシベリアの工場で一緒に働いていたロシア娘を思い起こしました。

 愛称はマロンで、誰にも分け隔てのない明るい性格の持ち主。暗くてつらいシベリア生活の中でも、彼女の周りだけはいつも明るい光が満ちあふれていたそうです。マロニーは、『まろやかさ』と、このシベリア少女のイメージを重ね合わせたものです」(マロニー 広報担当)

 関西のギャグセンスとロマンチックさの融合が、ひらめきの源だったのだ。

現在と初代のパッケージ

ルマンドはまさかの造語?

●ルマンド【1974年~】
​・高級感のある洋風菓子を連想させる名称として考案

 幾重にも重ねたクレープ生地を、甘さを抑えたココアクリームで包んだクッキー菓子。ブルボンの創立50周年を記念して、1974年に発売。当時は生産が追いつかないほど人気で、ピーク時にはルマンドを求めて問屋さんがトラックを仕立て、工場まで買いつけに来るなどのエピソードもある。

ルマンドは、高級感・上質感のある洋風菓子のイメージから考えられたネーミングです。当社の商品名はすべて特定のモチーフはなく、商品イメージによる造語になっています。3代目社長が名づけており、詳しいことはわかっておりません」(ブルボン 広報担当)

 あの人気商品の優雅な名前が造語だったとは……。

ルマンド

〈取材・文/紀和静〉