「身体の不調は、姿勢の悪さが原因となることが多いんです」と話すのは理学療法士の乾亮介さん。現代人は長時間のデスクワークや運動不足で、大多数の人が姿勢不良。肩コリ、腰痛はもちろん、背骨のS字カーブが乱れることによる自律神経のトラブル、前傾姿勢による呼吸や内臓のトラブルなど、さまざまな悪影響を及ぼす。
「運動やストレッチで身体を整えることがいちばんですが、毎日続けなければ効果は薄い。そこで、運動嫌いでも忙しくてもできる“うつぶせ”をおすすめします」(乾さん、以下同)
正しいうつぶせで冷え性改善、免疫力もアップ
うつぶせになるだけ? と、にわかには信じがたいが効果は抜群とのこと。
「まず呼吸が格段に深くなります。背面の圧迫がなくなり、肋骨が大きく開くので、空気をたくさん取り込めるように」
1~2分もすると、身体がジンワリと温かくなるのを感じるほど。
「十分な酸素が取り込めると、血流がアップするからです。冷え性改善はもちろん、病原菌を退治する白血球が全身に行きわたり免疫力も上がりますよ」
また、深い呼吸は自律神経を整える働きも。
「寝つきの悪い夜にうつぶせになれば、副交感神経が優位になり、すっと入眠できるでしょう。不眠が改善したという人も多いです」
深いリラックス効果から、身体の緊張もゆるみ、肩コリや腰痛も次第に軽くなっていくのが感じられるはず。
疲労物質が流れて身体がスッキリ!
うつぶせの効果はこれだけではない。
「股関節がしっかりと伸びることも重要です」
姿勢の悪さや長時間の座りっぱなしでは、股関節の筋肉は縮んだ状態。そけい部に集中しているリンパや太い血管も圧迫されてしまう。
「ストレッチもいいですが、立った姿勢は重力が働き、血流が上に行きにくい。うつぶせで横になった状態なら、より簡単に血流やリンパの流れを改善させることができます」
循環のよい身体になり、体内にたまった余分な水分や疲労物質を排出しやすくなるのだ。
また高齢者ともなれば、股関節を伸ばすことは特に重要。股関節が縮んでいると歩幅が狭くなり、転倒の原因になる。すり足で歩けば、足首が硬くなる、ひざが曲がる、腰が反る……という具合に、歩行困難につながりかねない。
そして最近では、肺炎患者や新型コロナウイルスの重篤な感染者にも多用されているという。
「あおむけでは、肺の背面が圧迫されているので肺は十分に広がりません。ウイルスの影響で肺が傷ついている場合、呼吸がより困難になります。コロナ感染者の方なら、人工呼吸器からの離脱を早め、さらなる重篤化を防ぐことができるといわれています」
うつぶせ体験者からは、便秘が改善した、朝の目覚めがよくなったなど、喜びの声が続々。
「毎日の習慣にぜひ取り入れてみて。身体が変わっていくのを実感できるはずです」
これが正しいうつぶせです!
習慣化しやすいタイミングは、寝る前に1分間行うこと。朝起きたときや日中にやってもOK。1日1回で十分だが、何度やっても大丈夫。苦痛でなければ5分~10分行うとより効果的。
【POINT】
・顔の向きはラクなほうでOK。つらくなければ時々反対側も向いてみて
・平らな場所で行って。布団の上でもよいが、やわらかすぎないほうがいい
・足の向きはそろえなくてもOK。ラクな状態に
・足を動かしてもOK
【こんな人はうつぶせを始めてみて!】
□運動が続かない、身体が痛くて運動ができない
□座りっぱなし
□寝つきが悪い
□便秘がち
□肩コリや腰痛がある
□自律神経に不調がある(寝る前にあれこれ考えてしまう)
□呼吸が浅いと感じる
□冷え性だ
【うつぶせをする際に守ること】
・食後30分以上たってから行う
・初めて行うときは、ゆっくりとうつぶせの体勢になって。少しでもつらいと感じたら、無理をしない
・身体に痛みや苦しみを感じたら、すぐに中止を
・風邪などで体調がすぐれないときは控える
・身体に負担がかかる場合があるので、うつぶせのまま眠ってしまわないように。長時間のうつぶせも、身体の様子を見ながら行って
・うつぶせのまま本を読んだりスマホの操作をしていると、腰に負担がかかる場合も。うつぶせ以外の行為は控えて
・腰痛や反り腰の強い人は、お腹の下にクッションを入れてもOK
うつぶせの効果を実感!2人の体験談
【体験談1】『雨の日に起こる片頭痛がやわらぐ』A・Oさん(52歳、東京都)
「寝る前にうつぶせになると、深いリラクゼーションが得られるのでまるで瞑想のような時間に。呼吸が深くなって眠りの質も上がっているように感じます。熟睡できるおかげで、翌朝は頭も軽くスッキリと起きられます。低気圧の日などは頭痛に悩まされることが多かったのですが、うつぶせになると痛みがやわらぐので、助かっています
」
【体験談2】『内臓が正しい位置に戻っていくよう!』K・Mさん(61歳、岐阜県)
「うつぶせになっていると、胃や腸がギュルギュルと鳴りだし、内臓が正しい位置に戻ろうとしているように感じます。そのおかげか翌朝は快便! ぽっこりお腹もかなり凹んできました。さらに年に2回は風邪をひいていたのですが、今では病院に行くことも激減。呼吸がしやすくよく眠れるようになったことで、風邪をひかなくなったのだと思います」
理学療法士、ピラティスインストラクター。整形外科疾患、脳血管疾患、呼吸器疾患、心疾患など2000人以上の患者のリハビリに携わる。予防医学サロン&ピラティススタジオ「リハティスプラス」を開設。著書の『うつぶせ1分で健康になる』(ダイヤモンド社)では、うつぶせでできる応用エクササイズも紹介。
(取材・文/樫野早苗)
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