第59回 小島瑠璃子
6月23日放送の『あちこちオードリー』(テレビ東京)。ゲストはお笑い芸人・ニューヨークとタレント・小島瑠璃子(以下、こじるり)でしたが、こじるりのトークを聞いていて、腑に落ちないことがありました。
『キングダム』作者と熱愛、匂わせ発言も
こじるりと言えば2020年に『週刊ポスト』(8月14・21日号)で、人気漫画『キングダム』の作者、原泰久センセイの住まう福岡で手つなぎデートをしていたことを報じられています。同誌によると、『キングダム』の大ファンでもあるこじるりが猛アタックをして、交際に至ったそうです。ファンの間では愛妻家として名高い原センセイでしたが、離婚をして独身になっていたことも明らかにされています。
原センセイの離婚がいつなのか明らかにされていなかったため、状況証拠から「こじるりが不倫略奪したのでは?」という憶測が飛び交います。しかし、事実はもっとえげつなかったようです。『週刊文春』によると、原センセイはアイドルAさんと再婚を前提に不倫をしていたそうです。妻とは離婚したものの、再婚をしようとしない原センセイに業を煮やし、Aさんは芸能界を引退。そこにタイミングよく表れたのが、こじるりだったそうです。
そんな「ワケあり」の人に恋をした焦りからか、それとも「恋は盲目」で周りが見えないのか、こじるりは出演番組で、原センセイとの交際を匂わせるような発言をしていました。
しかし、前出『あちこちオードリー』では、幸せの条件として「自分でお金を稼ぐのがマスト」「結婚して子どもが生まれても、そこが守れるようにしたい」「自分の足で立ちたい」と、落ち着いたテンションで話していました。結婚に関しても「(バラエティーの仕事を)邪魔しない結婚って何? ムズッ」「なるべく、いい人を好きになれたらいいな」と、具体的なパートナーがいないかのようなスタンスだったのです。
これはどういうことだと思っていたら、6月28日に2人の破局報道があったのでした。まぁ、男女の間にはいろいろあるでしょうから、こういうこともあるでしょう。それよりも、『あちこちオードリー』を見て、こじるりのヤバいまでのメンタルの強さの秘密に触れた気がしたのでした。
メンタルの強い人、弱い人というのは存在して、最近はその理由を“自己肯定感”に求めるのが流行しています。自己肯定感は生育環境によるところが大きいので、幼少期に健康的な自己肯定感を親によって育まれることが理想的ですが、完璧な人間がいないように、完璧な親もいません。そうなると、ほとんどの人の自己肯定感は完璧なものではないでしょう。「自己肯定感が低いから、メンタルが弱い」という理論は間違ってはいないと思いますが、その一方で「それを言うなら、みんなそう」という責任転嫁になる危険性もはらんでいると思います。
視野の狭い人ほどメンタルが弱い
生育環境に関わらず、メンタルを強くする方法を考えるとき、チェックすべきは「視野の広さ」ではないでしょうか。視野が広い人は比較的メンタルが強い(傷つきにくい)ですし、反対に視野の狭い人ほどメンタルが弱い(傷つきやすい)ことになります。
自分の視野の狭さというのは、なかなか自分では気づかないものです。5月27日放送の『アメトーーク!』(テレビ朝日系)の「生きづらい芸人」では、芸人がそれぞれの“生きづらさ”を披露していました。テレビに出る人は人より感受性が敏感な部分があるでしょうから、彼らの“生きづらさ”は才能であることは間違いありませんが、「それは単に視野が狭いからでは?」と言いたくなるケースも含まれているように思います。
たとえば、蛙亭のイワクラが、こんなエピソードを披露していました。先輩A、Bとイワクラの3人で飲みに行ったことがあり、支払いは最年長の先輩Aがすることになっていたそうです。イワクラは普段から「グラスが空いたら、お酒を注文するように」と指導されていて、実際、先輩Aにはそうしていたそうですが、先輩Bにはしなかった。それは「私がお金を出すわけではないのに、失礼だと思うから」だそうですが、飲み会の後に先輩Bに「全然いいけど、ああいうとき(俺に)何飲みますかって聞いたほうがいいで」と注意されてしまったらしく、生きづらさを感じたというもの。
「気を使ったつもりなのに注意されて、傷ついた」のかもしれませんが、これが典型的な視野の狭さだと思うのです。「私がお金を出すわけではないから、飲み物を注文しない」というのはイワクラの考えですが、先輩には先輩の考えがあるはずです。また、もし自分が先輩Bだったとして、後輩が自分の飲み物だけ気にしなかったら、どんな気持ちになるかを考えてみることも必要です。
自分の考えだけで判断すると「自分の意見が通らなかった、怒られた、傷ついた」と思いがちですが、「相手の立場」で考えたら、傷つくことは格段に減るのではないでしょうか。
オードリー・若林正恭は「こじるりって番組のスタッフが求めていることと視聴者が求めていることが感覚で瞬時にわかる」と、こじるりが「相手の立場」で物が見られることを高く評価しています。こじるり自身も、スタッフに積極的に意見を求めていることを認めていました。その一方で「スタッフさんのほうはわかるんですけど、視聴者のほうはわからないかも」「だから、びっくりするところで炎上するし」と冷静に分析しています。
すべてのマイナス意見を片づける“嫉妬理論”
確かにこじるりは視聴者(一般人)の気持ちはわからないタイプのような気がします。2020年12月26日放送の『さまぁ〜ず三村マサカズと小島瑠璃子の「みむこじラジオ!」』(ニッポン放送)に出演したこじるりは、熱愛報道とそれにまつわる批判を振り返って「(コロナ禍で)やっぱりみんな家に閉じ込められているから、人が何をやっているのかをものすごく(気にする)」「そういうところを刺激しちゃって申し訳なかったかな」と反省しています。
こじるりが叩かれたのは、コロナ禍に福岡に出かけていたこともあるでしょうが、略奪愛疑惑が払しょくできなかったことが影響していると私は思います。が、こじるり本人は「福岡まで出かけて行って楽しいことをした私に嫉妬したんでしょ? 私ばっかり幸せでごめんね☆」と、上段から物を言っているようにとらえられる発言をしました。どこの世界にも「私が嫌われるのは、嫉妬されているから」と言う人はいますが、こういう人はすべてのマイナス意見をこの論理で片づけてしまうため、自分のメンタルを傷つけることはありません。
こじるりはジャーナリストの池上彰、さまぁ〜ず・三村マサカズ、ヒロミなどオジサンからも高い評価を受けています。こじるりは『あちこちオードリー』で、自身を「お酒、クルマ、麻雀が大好きなオジサン」と話していましたが、確かにこういう会話の糸口があれば、大物の懐に入りやすいでしょう。そんなこじるりを「媚びていてヤバい」と陰口を言う人もいるかもしれませんが、「私が嫌われてるのは嫉妬されてるから」と考える人にとっては、そんな声など痛くもかゆくもないでしょう。そりゃ、仕事途切れないわけだ。
その昔、『アメトーーク!』で、有吉弘行がこじるりについて「知ったかぶりが鼻につくときがある」と発言したことがありますが、むしろ、他人をイラっとさせることが、こじるりの最大の魅力ではないでしょうか。なぜなら、恋愛ドラマやバラエティーなどのエンタメを盛り上げるのは、悪役だと思うからです。主人公の恋を邪魔する人がいるから恋愛ドラマは盛り上がるわけですし、バラエティーも予定調和ばかりではつまりません。
こじるりのようにヤバ級にメンタルの強い人は、破局くらいなんでもありません。『あちこちオードリー』で、素敵な男性に出会ったら「めっちゃ話しかける」「気になる人には、自分から連絡先を聞いちゃうかも」と“肉食”であることを明かしていたこじるり。けろっと立ち直って、次の恋に向かうでしょう。
自分に自信がない、傷つきやすい若者が増えていると言われますが、自分はそちら側だと思う人は、「相手の立場を徹底的に読んだ上で、自分のことは決して責めない」こじるり方式を真似してみるといいかもしれません。
<プロフィール>
仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ。会社員を経てフリーライターに。『サイゾーウーマン』『週刊SPA!』『GINGER』『steady.』などにタレント論、女子アナ批評を寄稿。また、自身のブログ、ツイッターで婚活に悩む男女の相談に応えている。2015年に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)を発表し、異例の女性向け婚活本として話題に。好きな言葉は「勝てば官軍、負ければ賊軍」