事後現場には献花台があり、たくさんの花が供えられている。奥にあるのは、容疑者がトラックで突撃して折れ曲がった電柱

「息子がこんな、とんでもないことをしてしまって、本当に申し訳ありません。亡くなった子どもさんや、その親御さんに、どう言って謝ったらいいのか……」

 何度も頭を下げる80代の女性――。

私と主人の命を奪って…

 6月28日午後3時25分ごろ、千葉県八街市の市道で大型貨物トラックが下校中だった同市立朝陽小学校の児童の列に突っ込んだ。2人が死亡、1人が意識不明の重体、2人が重傷と凄惨な事故となった。冒頭の言葉は、そのトラックを運転していた梅澤洋容疑者(60)の母親のものだ。

 当初、過失運転致死傷の疑いで逮捕されていた容疑者。だが、昼食時に飲酒していたこと、さらには居眠り運転で市道脇の電柱に衝突した勢いのまま、その40mほど前にいた児童の列に減速せずに突っ込んでいたことが判明。より罪が重い危険運転致死傷容疑に切り替わって送検されている。

 容疑者の母親が続ける。

「私にも子どもがいますから、そのかわいい子どもを失ったらと考えると、もうたまらなくて……。世間のみなさんにも、顔向けができないですよ」

 事故直後は、容疑者である息子をなんとか助けたいという思いもあったが、

「時間が経って落ち着いてきたら“息子を死刑にでもなんでもしてくれ” “殺してください”という気持ちになっています。こんな酷い事故を起こしたんだから……」

被害者の児童らが通う八街市立朝陽小学校

 だが、こうも続けた。

「とはいえ、私にとってはかわいい息子ですから、できれば代わってあげたいという気持ちも……。代わりに老いた私と主人の命を奪ってもらったらとも思います」

息子はお酒が弱い

 今、自分にできることは何なのか――自問自答する毎日だという。

「私の家族には今、車を運転できる人間がいないんです。私は運転免許を返上してしまったし、主人は今回の事故を聞いて腰を抜かしてしまって、動けなくなってしまった。(息子の)嫁も体調が悪いし、孫は仕事が忙しいみたいだし。被害にあわれた子どもたちのお宅に行って謝ることも、息子の面会にも行けない状態。だからもう、何をどうしたらいいのか、まったくわからなくて……」

 悲痛な母親の叫びである。

 容疑者は昔から手がかからない子どもだったという。

「親バカでしょうけど、反抗期もなくて、親の言うことに絶対にNOは言わない、素直な子でした。息子は運動が得意ではなかったので、高校では吹奏楽部でトランペットをやっていました」

 容疑者は高校卒業後、1年間のアルバイト生活。貯めたお金で、自動車関係の専門学校に通ったという。

「うちは当時、雑貨店のほかガソリンスタンドを経営していて、息子はそこで働いていました。ですが、16年前に経営が悪化して借金を抱えることに……。困っているときに、ガソリンスタンドのお得意さんだったのが、息子の今の勤務先です。“じゃあ、うちへ来ないか”って助けてくれたんです」

 容疑者は運送会社『南武運送』に勤務。都内の建設現場に資材を運び、現場近くにある会社に戻る途中で事故を起こした。

容疑者が勤務する「南武運送」

 梅澤容疑者の飲酒について母親は、

「家ではほとんど飲まないんですけどねぇ……。息子はお酒に弱いし。勤務時間は朝6時から昼間の3時ぐらいまで。昼ご飯のときにはもう仕事終わりなので、ついつい飲んでしまったんでしょうか……」

 気のゆるみで取り返しのつかない事故を起こし、幼い命を奪った梅澤容疑者。その母親も加害者の家族となって、絶望の淵に立たされている。