例えば親権や、もらえるお金。知らずに別れて「手遅れ」にならないよう、知っておきたい最新の離婚マニュアル。離婚は幸せへの第一歩となるように、先取り学習が勝ち!
DV、モラハラ、不貞行為離婚準備は早めが正解
性格の不一致、モラハラ、浮気など、さまざまな理由での離婚劇が繰り広げられたドラマ『リコカツ』。最終回では大団円を迎えたものの、実際の離婚はもっとシビアだ。
「離婚のスタイルは、大きく分けてお互いの話し合いで離婚を決める協議離婚と、裁判所で話し合う調停離婚、家庭裁判所に訴えを提起する裁判離婚の3種類があります」
と、離婚問題に詳しい弁護士の吉成安友先生。3組に1組の夫婦が離婚する時代だが
「私は2回離婚をしています。5年前に3回目の結婚をして、今はとてもハッピーです。離婚は不幸になるためではなく、幸せになるためにするもの。決めたら最速で最善の離婚にしましょう」
とは、夫婦仲アドバイザーの三松真由美先生。とはいえ、離婚で不幸になるケースも多い。そうならないためには……
「離婚問題は、時間がたつほどこじれることが多い。最近は初回の相談料が無料の弁護士事務所も多いので、まずは相談してみて」(吉成先生)
【不貞】東出養育費、子1人あたり1万円は稼ぎ次第で変えられる!
朝ドラの夫婦役をきっかけに結婚した杏&東出昌大。3人の子どもに恵まれたが、東出と女優・唐田えりかとの不倫が発覚し昨夏、離婚。
「たとえ一時的な関係だったとしても不貞行為は離婚の原因となりえます」(吉成先生)
夫の不貞行為が発覚した場合も感情にまかせて問い詰めないように!
「離婚を考えているなら、まず夫を泳がせて証拠を取る。信頼できる探偵に依頼してもいいですね」(三松先生)
離婚には財産分与が生じるので“財産の詳細”を集めておくことも必要だ。
「分与対象となる共有財産は、婚姻生活中に夫婦の協力によって築いた財産全般。自宅、現金や預貯金、自動車、有価証券、家具、電化製品などあらゆるものが該当します。夫の財産を把握しないまま別居すると、隠されてしまう可能性があるため、あらかじめ知っておくことが必要です」(吉成先生)
「例えば、有価証券やゴルフ会員権、別荘の権利書などは写真に撮る。金庫に金塊を見つけた場合はグラム数を量るなど詳細に記録して。最近は証券口座や銀行口座をパソコンで管理しているケースが多い。夫のパソコンにはログインできるようにしておきたいものです」(三松先生)
不貞行為の時効は発覚してから3年
また、夫の浮気が原因で離婚する場合、夫と浮気相手に慰謝料を請求できる権利が生じるが、
「最初に夫から慰謝料を取ってしまうと、その後、浮気相手への請求が認められない場合が多い。もし、浮気相手にも慰謝料を請求したいなら、まずは浮気相手から請求するのが得策です」(吉成先生)
最近では、東出昌大の養育費が子ども1人につき1万円という報道があった。
「東出さんの収入が年収200万円以下で杏さんが年収300万円以上という条件の場合、子ども1人あたり1万円の養育費でもおかしくない。ただし、今後、東出さんの収入が上がった場合は金額を変更することもできます」(吉成先生、以下同)
養育費の金額は変動できる。だが一方で
「夫の不貞が原因でも、財産分与は請求が可能。つまり、東出さんが婚姻中に夫婦の収入で築いた財産の分与も請求することができるのです」
さすがにそんなことをすれば、さらに評判を落として二度と芸能界に復帰できないだろう。ちなみに、杏も
「不貞行為の時効は発覚してから3年。それまでの間なら浮気相手に対して慰謝料を請求することも可能です」
唐田に制裁も可能だ。
【離婚Q&A】不貞の親権
Q .自分の不貞で夫と話し合い、子どもの親権を取られた。あとから取り戻すことは可能ですか?(40代・Aさん)
A .「一般に妻の不貞や収入の低さは親権者の決定にそこまで響きません。重要なのはどちらが同居して育てているか。絶対不可能ではないですが、親権は1度決まってしまうと変更が困難です」(吉成先生)
◆不貞の場合、知っておきたいPOINT!
□ 怪しい行動に気づいたら泳がせて証拠を集める
有利に離婚をすすめるなら不貞の証拠は不可欠。時には探偵を使っても!
□ 慰謝料はまず浮気相手に請求
夫に先に請求すると浮気相手に請求できない場合も。順番に気をつけて!
□ 養育費の金額は後から変更が可能
いったん決まった金額も、それぞれの収入の変動で変更可能!
DV夫からはとにかく逃げることが先決
【DV】診断書や音声録音が鍵に警察への通報は1年間有効
世間の話題をさらった熊田曜子の離婚騒動。熊田は以前から夫にDVを受けていたと主張、5月には110番通報がなされた。その後、DVの音声データ、診断書などが公開された。
「DVは状況や回数などによりますが、その存在が認定されれば離婚が認められる可能性は高いです」(吉成先生、以下同)
DVは身体に対する直接的な攻撃はもちろん、大声を出す、物に当たるというような威嚇行為も含まれる。
「いずれの場合も、証拠がないと自作自演などと反論されてしまう。DVの証拠はなんらかの形で必ず残しておくようにしてください」
「例えば殴られた患部や割られた窓ガラスなどを写真に撮ること、病院の診断書を取っておくことがDVの証拠となります」(三松先生)
証拠を提出すれば裁判所によってDVと認定される。音声の録音は単なる夫婦ゲンカととられる場合もあり、一方的に暴言を吐く場面などが望ましいという。
110番通報をして警察を呼ぶこともDVの証拠に。
「警察に通報をすると記録が残るため、DVの証拠に使えます。ただし、通報記録は永久に保存されるわけではありません。都道府県によって保存期間は異なり、例えば千葉県の場合は1年間。保存期間が過ぎると証拠として使えなくなるので、気をつけてください」(吉成先生)
DVで身の危険を感じた際には逃げる勇気も必要だ。
「命を危険にさらしてまで、相手と一緒にいる必要はない。逃げる先がない場合は、シェルター(一時保護施設)に入所するという手段もあります」(吉成先生)
「お金がなくても、子ども連れでも、福祉面でのサポートを受けることができます。DV夫からはとにかく逃げることが先決です」(三松先生)
熊田のケースでは、もし夫が子どもの前でのDVを行っていたなら、親権は熊田に、また慰謝料の支払いも命じられることになるそうだ。
◆DVの場合、知っておきたいPOINT!
□ 傷の写真や診断書を取っておく
DVと認定される証拠が必要。写真、診断書を取るなど証拠を集める。
□ 110番通報も証拠になる
通報の記録はDVの証拠。ただし、保存期間があるため、自分が住む都道府県の警察の保存期間を確認して。
□ 命を危険にさらす前に逃げる
過剰なDVは命に危険が及ぶ。我慢せずシェルターなどに入所し、福祉的ケアを受けて。
モラハラ夫から逃げるためのアドバイス
【モラハラ】コロナ禍で急増中!年表や手書きの日記も証拠に
芸能界でいえば高橋ジョージ、三船美佳元夫妻はモラハラ離婚の草分け的存在!
「コロナ禍以降、モラハラが増えた。モラハラ夫のほとんどは“している”意識がないのも特徴」(吉成先生)
「モラハラを訴える妻は、決しておとなしいタイプばかりでもない。長年にわたって反論しても聞き入れられず、離婚に踏み切るケースも多いですね」(三松先生)
モラハラ離婚を、スムーズにするには計画性が必要。
「離婚を考えている女性には、レポート用紙に年表を書くようにとアドバイスします。“〇年〇月、夫が大きな音を立ててドアを閉めて怖かった”など、起きた事実とそのときの感情を書くようにとすすめています」(三松先生)
日々、パソコンではなく手書きで、できればその年の日記帳に記録しておく。一定期間、詳細な記録をつけていればモラハラの証拠となる可能性が高くなる。
「“夫のせいで眠れない”、“夫に言われたことを思い出すとイライラする”など心身に不調をきたした女性には、メンタルクリニックなどを受診して診断書をもらうようにと提言します」(三松先生)
ある程度の決定的な証拠があれば、調停離婚や裁判離婚としてすすめることができる。証拠が弱い場合は、別居をするのが得策だ。
「別居期間が3年程度あれば、強力な離婚原因の証拠がなくても離婚が認められる傾向がある。衣食住や教育費など、婚姻から生じる費用を“婚姻費用”といいますが、別居中でもこれを請求することが可能です」(吉成先生、以下同)
調停離婚や裁判離婚にはそれなりの時間と労力がかかるが、挑む価値はある。
「調停や裁判まで進むうちに相手があきらめて離婚に応じる可能性もあります」
また、モラハラの中には、妻に生活費を渡さない「経済DV」も含まれる。
「同居中の生活費が足りない場合は、裁判所に婚姻費用の調停を申し立てて調整してもらうことができます」
【離婚Q&A】熟年離婚の年金
Q .モラハラ夫に苦しめられており離婚を考えています。ずっと専業主婦なのですが、年金はもうあきらめて別れるべきでしょうか(50代・Aさん)
A .「婚姻中の年金納付額については、離婚の理由を問わず、分割できます。つまり、妻は夫の半分を払っていた扱いになるので、あきらめずにしっかりもらいましょう」(吉成先生)
◆モラハラの場合、知っておきたいPOINT!
□ 手書きの日記をつける
パソコンで作成したものは後から編集が可能なため、手書きで日記のように記録しておくのがベスト!
□ 3年ほど別居する
明確な証拠がない場合でも、3年ほど別居すると離婚が認められる傾向がある。
□ 経済DVは裁判所に申し立て
衣食住費や教育費などの婚姻費用は別居中でも裁判所に申し立てて調整してもらえる。
夫婦仲、恋仲に悩む会員と「結婚・再婚」を真剣に考えるコミュニティーを展開。セックスレス、ED、女性性機能に詳しい。恋愛・夫婦仲コメンテーターとしても活躍しており、講演、メディア取材、連載多数。『堂々再婚』(二松まゆみ名義)など著書多数。
お話を聞いたのは……弁護士「MYパートナーズ法律事務所」代表●吉成安友先生
1973年愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒業後、2007年弁護士登録。都内弁護士法人を経て2010年に現事務所を開設。離婚問題をはじめ企業法務、医療過誤、刑事告訴など、依頼者からの依頼があればほぼなんでも取り扱っている。著書に『くたびれない離婚』。
〈取材・文/熊谷あづさ〉