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 近年、一般社会から見れば学校独自のおかしなルールを生徒に強要する「ブラック校則」が社会問題となっている。

 黒髪以外を認めず、地毛が明るい場合は黒く染めるよう指導。体操着の下に下着を着用することを、男女とも禁止。授業中にトイレに行くとなぜか遅刻扱いとなってしまうなど……。 

下着の色・柄を定める都立高校に取材

 実在するおかしな校則は、枚挙にいとまがない。

 なかでも、「ワイシャツの下の肌着は白色無地を着用すること」などと、生徒の下着の色まで厳しく規定している中学・高校が今でも存在する。

 今回、週刊女性は「生徒の下着の色・柄」を規定する都立高校の存在について調査を行った。調査の結果、全191校中、少なくとも10校でこうした規定が存在することがわかった。

 これらの学校に取材を申し込んだが、「教育委員会に聞いてくれ」と返答する学校がほとんど。そこで教育委員会に問い合わせても、「学校に直接聞いてください」とたらい回しにされるばかり。期限内に明確な回答を得られた学校はごくわずかだった。

 規定のある都立高校に通っていたある元女子生徒は、

「ワイシャツの下に着ている肌着の色を男性教師に目視でチェックされて、嫌な思いをしました。肌着の胸にあるワンポイントの刺しゅうも禁止で、理由がわからなかった」

 と苦々しい経験談を語る。

ある高校の校則の服装規定

 江戸川区にある、とある都立高校の校則には、

《常識的な着こなしを身につけるため》

《外見(服装)が原因で事件や事故の被害に遭うケースが報告されているから》

 などと記されている。

 はたしてこれは正当な理由なのだろうか。

男性教師が女子生徒の下着を確認するケースも

『ブラック校則』(共著)などの著書がある名古屋大学准教授の内田良さんによると、

「学校側には、みんなが多彩な色の服を着用することを認めると、だんだんと生徒の服装が派手になり、しまいには学校の風紀が乱れてしまいかねないという発想がある」

 要するに、トラブルの芽は早めに摘んでしまおうというわけである。

「教師が違反に気づいたときだけ指導する学校もある一方、定期的に(シャツの)チェックを行う厳しい学校も中にはあります。ひどいケースだと、男性教師が女子生徒の下着を確認するなんて話も。

 生徒のきわめてプライベートな部分に平然と介入し、管理しようとする。人権侵害といえるでしょう」(内田さん)

ある高校の校則の服装規定。「白色無地」を規定している

 また今回調査した10校のうち、半分は商業高校や工業高校など専門技術を学ぶ学校が占めた。その中には、こんな意見も……。

 下着の色指定を行う工業高校に事情を尋ねると、

「生徒が就活面接に行く際、(赤などの)色のついたシャツを下に着ませんよね。

 社会に出て通用する着こなしを身につけるという意味で白シャツを規定していますが、いちいち確認はしませんし、色がついているからといって着替えさせることもしません」

 これらの学校は、高校卒業後に進学せず就職する生徒が比較的多いという特徴がある。

 だがそもそも、面接に色つきの肌着で臨む非常識な生徒がそんなにいるとは考えにくく、わざわざ校則で縛る意味があるのかは疑問だが……。

マスクの色まで白に限定された

 こうした行きすぎた規則は、コロナ禍でも横行した。前出の内田さんによると、

「コロナが流行りだした当初、全国的にはマスクも白に限定する学校が多かった。下着と同じ発想で、例えば薄いピンク色のマスクを着けているだけで指導の対象でした。

 マスク不足もあって色つきマスクの着用が広く認められるようになりましたが、それによって風紀が乱れたなんて話は聞いたことがありません」

 しかし、近年の都立高校では制服着用を義務づける学校が増えるなど、校則の厳格化は広がる傾向があるという。

 10年ほど前に練馬区の都立高校を卒業した元生徒は、

「入学当時、うちの高校は“生徒の自主性と自由”が伝統でした。私服が認められ、髪を染めるのも自由だった」

 しかしあまりに自由すぎて、学校は荒れていたという。

「生徒の髪の色はピンクや緑などバラエティー豊か。

 全校朝礼のときには不良生徒が壇上に上がって校長を追放し、乗っ取るなんてことが平然と起きていた」(元生徒、以下同)

 生徒になめられ続ける教師の側にも責任があるが、教師からは“自由の意味をはき違えている”という意見が噴出。

「結局、3年生のときに校則が厳しくなり、制服着用が義務に。髪染め禁止なども徹底されました」

生徒を過剰に縛りつける前時代的な考え方

 ここまでひどい高校はまれかもしれないが、問題のある生徒と個別に向き合わず、一律に取り締まるやり方が正しいといえるのだろうか……。

 この「ブラック校則」が問題化する中で、文部科学省は6月8日、全国の教育委員会に対し、校則の見直しに関する文書を出した。

 文書では社会の常識などを踏まえて「(校則は)絶えず積極的に見直さなければなりません」と呼びかけたのだ。

「教育現場では今も、校則で生徒を縛るべきだという声のほうが大きいのが現状です。しかし中には時代に合わせて変えていこうという教師もいるので、声を上げやすくするような世論をつくっていくことが重要だと思います」(前出・内田さん)

 生徒を過剰に縛りつける前時代的な考え方が、下着の色柄規定のようなハラスメントにもなりかねない校則を今も許してしまっている。

 なぜその校則が必要なのか、学校側は向き合って、改善していく努力が必要だろう。