ウォーキングやジョギングが趣味の人も、足の健康オタクの人も、つい見逃しがちな存在感の薄い「小指」。でも、この小さな指こそ全身の痛みをとって健康に導くパワーが宿っているんです!
足指を鍛えれば一生自分で歩ける
「一生、自分の足で歩きたい」「介護で家族を煩わせたくない」と思う人は多いもの。しかし、平成30年の厚生労働省資料によると、65歳以上の約5人に1人が、支援や介護が必要な状態。一方、寝たきりや認知症を防ぐには、歩くことが有効という研究結果が。例えば、1年間の1日あたりの平均歩数が2000歩の人は、寝たきりが予防できることがわかっている(健康長寿研究所)。
とはいえ、コロナ禍で運動不足になりがち……。
「一生自力で歩くには、家でできる簡単な運動で足の小指を鍛えることが大切です」
と力強く答えるのが、幹整体院・鍼灸院代表の倉幹男さん。倉さんは豊富な施術経験から、足の指、特に小指には全身を整える力があると発見した。
「腰痛やひざ痛、下半身のしびれなどがある人は、足指の力が弱く、器用に動かせないことが多いんです」
なぜ、足指が大切なのか?
「足指は歩くとき、地面と必ず接する場所。足指が弱ってふらついた状態のまま毎日6000歩歩き続けると、1年で200万歩分の負荷が積み重なり、不調を招きます」
足の指は身体の“地盤”
どれだけ基礎(骨盤)や杭(脚)がしっかりしていても、地盤(足指)が不安定だと家はグラグラに…。
身体をしっかり支えられる足の小指はここが違う!
●小指がしっかりと外側に開く
●小指を器用に動かせる
●小指に力を入れて握ることができる
健康な足指は「開く」「握る」「動く」
では、どのような足指が健康なのか。倉さんが挙げるのは、「足の小指がしっかりと外側へ開く」「小指に力を入れて固く握ることができる」「足の小指を思いどおりに動かせる」。小指はいちばん外側にあるからこそ、すべての鍵になる。
まず、足の小指が外側へ開くメリットは、足裏の面積が広がること。
「身体を家に例えると、頭から骨盤までは地上の『家』。脚(左図)は地中に埋まっている『杭』、足の指は杭や家を支える『地盤』といえます」
小指をしっかりと外に開くことで「地盤」が広くなり、「家」は安定する。これは、揺れる電車で、足を広げたほうがふらつかないのと同じ。
「外出中、靴の中で1ミリずつでもよいので小指を広げることを意識するだけで、開く範囲が変わってきますよ」
また、包丁やゴルフのクラブなど、手で強く上手に握るためには、小指に力が入ることが必須だ。
「それは足も同じ。『地盤』を固め、『家』を支えるためには、足指、特に小指のグリップ力がものをいうのです」
私たちの身体は、足の小指も含め、全身の筋肉が「筋膜」という一枚の膜で覆われている。そのため、小指を動かすと、筋膜や筋肉に引っ張られ、ほかの指や、足首なども自然と動くようになる。
「つまり、小指を器用に動かせれば、全身の動きがよくなります。すると寝たきりの原因になる転倒やケガを予防できますし、歩行が安定すると、ひざや腰への衝撃がやわらぎ、痛み、しびれなどの不調改善へとつながるのです」
身体の安定の鍵は足指の“開き”
足の外側にある親指と小指を開くと身体は安定。特に身体の外側にあたる小指を開くことは重要。
足の小指が“第二の心臓”を動かす
「筋膜」を通じた足の小指と足全体の連動は、もうひとつ大きな力を秘めている。
「それは、足の小指を力強く、思いどおりに動かせれば、“第二の心臓”と呼ばれるふくらはぎも動くこと」
腕まくりをして、手の指をしっかりと「グー」「パー」をすると、手首とひじの間の前腕の筋肉が動く。足の場合は、小指を固く握り、開くと、ふくらはぎが同様に動く。ふくらはぎは、血液を心臓に戻し、リンパ液など体液を身体中に送るため、“第二の心臓”と呼ばれる。
「ふくらはぎが動けば、そのポンプ機能により、足の先までスムーズに血液が流れます。冷えやむくみが改善し、足の重さ、だるさが回復しやすくなります。ただし、順番はあくまで足指の運動が先です」
足の小指を目覚めさせる方法は、簡単なやり方でOK! まずは家事や仕事をしながらできる運動を続けてみよう。
今からでも遅くない!小指を育てる! “ながらエクササイズ”
「足の指は、もっと自由に動かせる」と話す倉さん。手の指にお箸や鉛筆の持ち方を教えたように、簡単なエクササイズを毎日続けて足指、なかでも小指が思いどおりに動くようになれば、足のトラブルを遠ざけ、一生自力で歩ける身体に!
足を「グー」の形に
料理や歯磨きなどで立っているとき、足の指をグーの形にして床に押しつける。このとき、小指までしっかり曲げることを意識する。足指に「グー」の形を教えることが、思いどおりに足指を動かす第一歩。
足をごそごそ動かす
仕事中の机の下で、靴の中で、どんな動きでもかまわないので、こまめに足指を動かしてみる。そのとき、特に小指を動かすことを意識して。血液の循環がよくなり、冷えやむくみの改善も期待できる。
家族と“足じゃんけん”
家族と足でじゃんけんをするのは、足指のよいトレーニングに。お互いの足指の動きのほか、足の形もチェックできるので、外反母趾などの不調も早めに見つけられる。
手と足でじゃんけんをする
「足が勝つ」「足が負ける」と勝敗を決め、自分の手と足でじゃんけんをする。「グー」は足の小指から中指のつけ根の骨が出るぐらい握り、「パー」はしっかり親指と小指を外側へ開くのがポイント。「チョキ」は足の親指だけ上げる、または下げてつくる。
(構成/仲川僚子)