コロナ流行に伴い、日々の体調管理に気をつけている人は多いはず。よかれと思ってやっている健康法には、実は意外な落とし穴が……。ホントは避けたい「NG習慣」を医療のプロがわかりやすく解説!
ブルーライトカット眼鏡は子どもにNG
スマホやタブレットなどデジタル機器の利用時間が増えるにつれ、液晶画面から出される『ブルーライト』をカットする眼鏡にも注目が。子どもにもかけさせるべき?
「子どもには不要でしょう。発育に悪影響を与えかねないとの見解を日本眼科学会などが出しています。ブルーライトをカットすることで心身の発達に必要な太陽光まで妨げてしまい、近視になりやすくなるおそれがあるからです」
そう話すのは医学博士・医学ジャーナリストの植田美津恵先生。ただ一方で、ブルーライトが睡眠障害を引き起こすおそれも指摘されている。
「ブルーライトには脳へ“今は昼”と認識させる作用があります。夜遅くまで浴びると体内時計に異常をきたし、身体が昼と誤解して睡眠障害につながる。つまりブルーライトカット眼鏡は、大人が夜間だけかけるのがベストです」
カルシウムのとりすぎは死亡率がUP
歯や骨を丈夫にして、骨粗鬆症も防いでくれて、いいことずくめのイメージなのに!? カルシウムのとりすぎは何が問題か、秋津医院院長の秋津壽男先生が解説してくれた。
「サプリメントでカルシウムを摂取すると、とりすぎてしまうことがあるんです。海外の複数の研究報告で、カルシウムの過剰摂取により心臓や血管の病気のリスクが高まると指摘されています。心臓に血液を運ぶ冠動脈が石灰化して、硬くもろく変質してしまったケースも。死亡率を引き上げるとの報告もあります」
食事で取り入れた場合、血液中のカルシウム濃度が一定の量になると、それ以上は腸から吸収されない。とりすぎの心配は無用だという。
「カルシウムは本来、食事でとるべき。骨のことを考えるならビタミンDも大事です」
ヘルシー和食で血管にダメージ
海外でも評価の高い和食。ヘルシーなイメージが定着しているけれど「塩分をとりすぎてしまう点が問題。血管の収縮が活発になり、高血圧を招きやすくなります。その状態が続くと血管へのダメージだけでなく、心筋梗塞や不整脈などのリスクを高めるおそれがある」と、植田先生。
興味深い研究報告がある。アメリカの国会で紹介されたレポートで、元禄時代(1688~1704年)のころに日本人が食べていた食事が「健康的で理想」と称賛されているのだ。
「当時の食生活は、玄米や野菜、大豆、きのこ、魚介類が中心。それを生かしながら、和食で問題となる塩分を抑えつつ、乳製品や肉類をプラスして、タンパク質やカルシウムを補う。これが現代の理想的な和食だと思います」
マッサージで疲労はぬぐえない
老若男女を悩ませる腰痛、肩こりは、日本の国民病。慢性的に疲れを感じて、マッサージに通う人も多いのでは?
「残念ながら、マッサージで外から力を加えても一時しのぎ。疲労感はぬぐえません。筋力低下や運動不足に根本的な原因があるからです。さらに年齢を重ねると関節の可動域が狭まり、柔軟性も低下して、ますます痛みやコリが生じやすくなってしまいます」
と、植田先生。まず自分の状態をチェックしてみよう。
「腕を背中に回し、右手は上から、左手は下から持ってきて、背中で両手を組むことはできますか? できなければ肩関節や背中の筋力が衰えているということ。そこへマッサージをしても、かえって逆効果。この“背中回し”を毎日続けて、関節や筋肉をほぐすことから始めましょう」
免疫力が上がりすぎると病気を招く
長引くコロナ禍で、以前にも増して免疫力UPが謳われるように。ところが「免疫が異常に強くなりすぎて、病気になってしまうこともあります」と、前出・秋津先生。
「免疫とは、身体に侵入してきた異物へ打ち勝つ能力のこと。正しい方向へ強くなればウイルスや細菌を体外へ排除して、病気になるのを防いでくれます。ところが、間違った方向へ免疫が強くなることがあるんです。花粉にさらされ続けることで、異常な免疫反応を起こす花粉症が典型例。ワクチンを打ったあと、重いアレルギー反応を起こすアナフィラキシーも同様です」
免疫が暴走すると、自分の身体を攻撃してしまう。
「膠原病やリウマチを引き起こします。免疫は高めようとするより、睡眠不足やストレスを解消して元からある力をキープすることが大事です」
オリーブオイル、赤ワインは片頭痛のモト
女性に多い片頭痛。なぜか特定の食べ物が痛みの引き金になることも少なくない。
「片頭痛は血管が急激に広がるときに、血管の表面を取り巻く知覚神経が刺激されて頭痛が起きます。オリーブオイルやワイン、チョコレート、ハムといった食べ物には、血流を促進して血管を拡張する作用があるので、片頭痛を引き起こすことがあるんです。血をサラサラにして、血管を通りやすく広げてくれるので本来、身体にいいものなんですけれどね」(秋津先生)
なんだかイタリア料理の食材が多いような……。食べちゃダメってこと?
「極端にとりすぎなければ大丈夫。それより、片頭痛の引き金となっている食べ物には個人差があるので、まずは自分でチェックしてみましょう」(植田先生)
早朝ウォーキングで脳卒中のリスクUP
すでに6月時点で猛暑日が発生、今年の夏も暑くなりそう……。運動するなら涼しい時間帯がよさそうだけど?
「息を切らさないで話しながら歩ける程度の、のんびりとしたウォーキングであればかまいませんが、早歩きやジョギングは避けるべき。起きて間もないときに運動を始めると、交感神経が過剰に反応してしまい、血圧が急激に上がりすぎてしまうおそれがあるんです。また、寝ている間は脱水状態に陥っているので、きちんと水分をとらずに運動をすると、脳卒中や脳梗塞を引き起こす危険性があります」(秋津先生)
リスクを少しでも減らすには、どうすればいい?
「朝起きて、顔を洗ったり歯を磨いたり、身支度に30分ぐらいかけて、身体がちゃんと目覚めてからウォーキングに出かけましょう」
空間除菌グッズで健康被害に
「空間除菌グッズに使われているのは次亜塩素酸水といい、塩酸や食塩水を電気分解して作られる塩素系の水溶液。塩素濃度が高いと確かにウイルスを殺せますが、人間も死に至ります。消毒剤でさえ塩素系は、今はほとんど使われていません」(秋津先生)
消費者庁は4月、空間中の除菌効果に根拠が認められなかったとして、メーカー2社に措置命令を出している。
「目や鼻は粘膜が非常に敏感なので、顔の周りで噴霧するのは危険。目が充血したり、鼻の粘膜が傷ついたりするおそれがある。コロナ対策はせっけんできちんと手を洗って換気をするのがいちばんです」(植田先生)