ジャニー喜多川さん(2003年)滝沢秀明氏(2017年)

 7月9日、ジャニーズ事務所の元社長・ジャニー喜多川(本名・喜多川擴)さんがこの世を去って2年がたった。昭和と平成の2つの時代を彩った希代のプロデューサーがいなくなり、ジャニーズ事務所は混乱に見舞われている。

「昨年6月に手越祐也さんが、10月に山下智久さんが退所。今年4月には、不倫疑惑を報じられていた近藤真彦さんも退所。さらに、昨年末で嵐が活動を休止し、今年3月には長瀬智也さんが退所し、TOKIOは“独立”しましたね」(スポーツ紙記者)

 タレントたちが新しい道に進む中、事務所内では大きな“変化”も起きていて─。

世界進出を目指す若手グループ

 ジャニーさんは、生前“ある夢”を抱いていた。

タレントたちをアメリカに進出させることです。彼のルーツは本場アメリカのショービジネスなので、1962年にジャニーズ事務所を創設して以来、自分を育ててくれたアメリカで活躍できるスターを輩出したいと思っていたんですよ」(レコード会社関係者)

 ジャニーズタレントは日本だけでなく、アジア圏でツアーを開催するなど、海外でも結果を残しているが、アメリカ進出は難しかった。

「2011年に元KAT-TUNの赤西仁さんが、全米でデビューシングルをリリースしましたが、思うような結果は出せませんでした。昨年、嵐が全編英語の曲をリリースし、アメリカで公演を行う計画もあったそうですが、新型コロナウイルスの影響で頓挫しています」(同・レコード会社関係者)

 だが、若手グループは恩師の“60年来の悲願”を果たすため、世界に目を向けていて─。

(上)“ポスト嵐”と称されるキンプリと(下)高いダンス力のSnowManは期待がかかる

「昨年10月に発売されたSnow Man(スノーマン)のセカンドシングル『KISSIN' MY LIPS』は、K-POPのアーティストに作曲・編曲を依頼。今年2月には、Sexy Zoneが全編英語の楽曲『RIGHT NEXT TO YOU』をリリースしました。

 King & Princeも、7月21日に発売するアルバムに収録されている全編英語の楽曲『Namae Oshiete』で世界的音楽プロデューサーであるベイビーフェイスとコラボしています」(同・レコード会社関係者)

『ジャニーズは努力が9割』(新潮社刊)の著書があり、ジャニーズ事情に詳しい霜田明寛氏に、若手グループが海外進出できるようになった背景を聞くと、

この10年間でグループの数が増えたことで、若手が挑戦しやすい環境になったと思います。

 また、ダンススキルが上がっていることも大きい。Snow Manは、海外の人が好むような集団で統一感のあるダンスができますし、King & Princeはメンバーの希望でデビュー後もダンスのレッスンを続けていて、海外でも受け入れられるようなダンス力の土壌がつくられています

滝沢が着手する“次なる改革”

 2019年から滝沢秀明がジャニーズ事務所の副社長を務め、ジャニーズJr.のプロデュースもしているが、ジャニーさんのやり方を受け継いでいる。

「ジャニーさんは社長でありながら、“現場主義”でJr.の舞台やイベントにもよく顔を出していました。滝沢さんも同様で、今年3月には『美 少年』が出演したミュージカル『魔女の宅急便』のゲネプロを見に来て、スタッフと“あそこはこんなふうに動いてもいいかもしれない”と、彼らの動きについて熱心に打ち合わせしていましたよ」(テレビ局関係者)

 一方で、厳しい姿を見せることも。

スタッフへの挨拶や言葉遣いなど、礼儀やマナーには厳しいですね。その点も、ジャニーさんと同じです。ジャニーさんは昔、あるタレントがアルバイトのスタッフに横柄な態度をとった際、“この人たちのおかげでジャニーズが成り立っているんだよ!”とものすごい剣幕で怒ったそうですから」(同・テレビ局関係者)

A.B.C-Zの河合郁人はジャニーズものまねでブレイク

 滝沢のプロデュースによって才能を開花させたのは若いメンバーだけではない。

「ふぉ~ゆ~やA.B.C-Zの河合郁人さんは、滝沢さんが副社長になってから露出が増えた印象です。彼らは、『滝沢歌舞伎』で非常に評価されていましたし、河合さんは、木村拓哉さんや松本潤さんらの“ジャニーズものまね”でいまやバラエティー番組で引っ張りだこですよ」(同・テレビ局関係者)

 “滝沢はJr.をジャニーさんのころにはなかった手法で売り出している”と指摘するのは、アイドル事情に詳しい、江戸川大学マス・コミュニケーション学科の西条昇教授。

「ジャニーさんは、Jr.やデビューしたばかりの若手グループを深夜番組や関西の番組に出演させて、バラエティー経験を積ませていました。一方、滝沢さんはさまざまなメディアに目配りしています。SNSやユーチューブが主流になっている時代の流れを見て、Jr.の公式エンタメサイト『ISLAND TV』やユーチューブの公式チャンネル『ジャニーズJr.チャンネル』を開設し、経験を積ませています。そこで培ったものを、テレビに出た際に生かせるようにしているのでしょう」

22歳で活動を終了させられる

 今年1月16日、ジャニーズ事務所がJr.に“定年”を設けることを発表した。

「2023年3月31日から、満22歳になって最初の3月末までにタレントと事務所が話し合い、活動継続について合意に至らない場合はJr.としての活動を終了する制度を始めます。現在、Jr.は東京と大阪合わせて200人以上おり、その中には30歳を越える人もいます。22歳という年齢は新卒の学生が一般企業に就職する年ですし、ほかの事務所に移籍してもやり直しがききます。自分の人生を見つめ直す機会をつくりたいのでしょう」(芸能プロ関係者)

美少年やHiHiJetsなど、2023年に22歳を迎えるJr.も多いが、それまでに結果を出せるか

 ただ、この制度が発表されて以降、進路に悩むJr.も。

大学進学を考えるJr.が増えているんです。これまで大学に行くのは、情報番組にも出演する機会を増やすなど、仕事の幅を広げることを目的にする人が多かった。しかし、最近は“22歳で活動終了となったときに備えて、一般企業で就職できるようにしたい”と、将来に不安を感じて志望しているよう」(同・芸能プロ関係者)

 アイドルとしての“消費期限”を考えているのかもしれない。ただ、前出の霜田氏は、“定年制度”によって本来のジャニーズアイドルに回帰できるのではないかと話す。

「光GENJIやSMAP、嵐、NEWSなどが10代で輝いていたころに比べると、ここ数年はよくも悪くもデビューする年齢が高くなりがちでした。ジャニーさんも10代で輝くことを重視していたので、そうした原点に戻ろうとしているのでしょう。また、滝沢さんは1990年代にリーダーとしてジャニーズJr.を率いて黄金期をつくり上げたので、自分が経験してきた“Jr.黄金期”を取り戻したいのではないでしょうか」

 一方で、一律に22歳で今後の可能性を見極める難しさもあるという。

「TOKIOの国分太一さんが個人で活躍し始めたのは、30代になってからでしたし、風間俊介さんや生田斗真さんのようにCDデビューはしなくても、俳優として可能性を広げていくなど、人の輝くタイミングは異なります。

 Jr.が22歳を迎えたときに、そうした可能性をどこまで見抜けるかがカギになるでしょう」(霜田氏)