家事に仕事に、子育てに日々忙しくて、つい自分の健康はおろそかにしがち。そんな週女の読者世代こそ気をつけたいのが、ちょっとした身体の不調。実は深刻なリスクがある、知られざる病気の「前兆」を医療のプロが徹底解説!
シミが急に増えた→「胃がん」
年を重ねるごとに増えてきたシミ。紫外線ケアに気を使っているのに、急にどんどん増えてきたような……。『放っておくとこわい症状大全』(ダイヤモンド社)の著書がある、秋津医院院長の秋津壽男先生が指摘する。
「そのシミは色が黒っぽく、イボのように少し盛り上がったりしていませんか? もしそうなら『脂漏性角化症』という皮膚の病気で、それ自体は良性腫瘍です。ところが、1~2か月のうちに急激に増えた場合やかゆみを伴うケースでは、胃がんや大腸がんなど消化器の腫瘍が隠れていることがまれにあるんです」
脂漏性角化症ができるのは顔だけではない。背中や首、足などにもおよぶ。それにしても、なぜがんの兆候が肌に現れるのだろうか?
「がんになると身体の免疫機能などが衰えていきます。すると、体内で異物や老廃物が処理しきれなくなり、皮膚症状として現れやすくなるのだといわれています」
皮膚のかゆみ・発疹→「悪性リンパ腫」
じんましんでも虫刺されでもない謎のかゆみ。1週間以上、かゆみ止めを塗っても治らなければ、こんな疑いが。
「白血球の中のリンパ球という物質ががん化して起こる病気に『悪性リンパ腫』というものがあります。日本では毎年、1万人に1人の割合で発症している“血液のがん”の一種です。その中に、かゆみや発疹といった皮膚症状を起こすタイプがあるんです」
そう話すのは、医学博士で医学ジャーナリストの植田美津恵先生。がん細胞から特異な物質が生み出されることでかゆみや発疹が引き起こされるという説もあるが、詳しい原因はよくわかっていない。
「ほかにも、貧血やアザができやすいなどの症状が多いと言われていますが、初期だと無症状というケースも珍しくない。しつこいかゆみで皮膚科にかかったけれど原因がわからず、内科の血液検査で悪性リンパ腫と発覚する人もいます。いずれにせよ思い当たる人、不安な人は、まずはかかりつけ医へ相談を」
2週間たっても口内炎が治らない→「口腔がん」
寝不足だったり、舌を噛んだり、熱いものを食べてヤケドをしたり……。口内炎の原因はさまざまだけど、見た目がそっくりでまぎらわしい、実は怖い病気があるんです!
「いつまでたっても口内炎が治らず、見た目にもくぼんだ部分が残っている場合は要注意。口の中の粘膜にできるがん、『口腔がん』を疑ったほうがいいでしょう。それがもし舌にできていたら、『舌がん』のおそれがあります」
とは前出・秋津先生。目安として、2週間たっても治らなければ、がんの可能性を考えたほうがいいという。
「普通の口内炎なら、健康な人であれば1日~2日で治ります。口内炎ができやすい人でも1週間ぐらいで治っていくのが自然です」
悩ましいのは、口内炎なのか口腔がんなのか、医師の目で見ても判別が難しいこと。
「口腔外科の専門医でなけ れば、見た目から判断するのは難しいでしょうね。治らない口内炎はリスクありと頭に入れておきましょう」
妊婦でもないのに乳汁が出る→「脳腫瘍」
妊娠しているわけでもないのに乳首から乳汁が! 私の身体に何が起きているの!?
「乳汁は本来、妊娠・分娩で乳房が張り、プロラクチンという乳汁分泌ホルモンが出されることで作られます。プロラクチンは脳内の下垂体という部分から分泌されていますが、ここに腫瘍ができると、妊娠とは無関係に乳汁を作り始めることがあるんです」
と植田先生。下垂体腺腫と呼ばれる脳腫瘍の一種で、ほとんどが良性腫瘍だとか。
「女性だけでなく、男性でもかかります。いきなり胸が大きくなり、乳汁が出るようになって検査したら、下垂体腺腫だったというわけです」
治療は婦人科ではなく脳外科で行う。腫瘍が大きくなれば鼻からメスを入れる手術で除去しなければならないが、時間をかけて大きくなることも多いため、薬で症状を抑えつつ経過を見る方法もある。
「もし乳汁に血や膿が混じっている場合は要注意。乳がんのおそれがあります」
いくら寝ても眠い、寝不足じゃないのに目の下にクマ→「甲状腺疾患」
寝ても寝ても眠い。疲れが抜けない。無気力。一見、うつ病みたいな症状だけど? 秋津先生が解説してくれた。
「うつと似ていますが、原因は異なります。“アクセルのホルモン”と呼ばれ、やる気につながる甲状腺ホルモンが不足すると、充電切れのような状態になります。こうして発症するのが『橋本病』。異物をやっつけるべき免疫が自分の甲状腺を攻撃するなど暴走して、調整機能に異常をきたし、甲状腺ホルモンが足りなくなってしまうのです」
また、甲状腺ホルモンは多すぎても病気リスクになる。
「橋本病とは逆で、甲状腺ホルモンが過剰分泌され発症するのが『バセドー病』。やたら元気になったり、汗っかきになったりします。原因はわかっていませんが、眼球が前方へ押し出される“眼球突出”を起こして、目が大きくなることも。そのため目の下のクマが強調され、寝不足でもないのに常時クマができているように見える人もいます」
どちらの病気も30代~40代の女性に多いのが特徴だ。
「遺伝的要因も一部にあるので、母親が甲状腺疾患だったという人は注意しましょう」
食べてもやせていく→「糖尿病」
「例えば、ポテトチップスとコーラだけで夏中過ごしていたら、秋口から突然やせ始める。食べているのに、どんどんやせていく。これは『急性糖尿病』の症状なんです」
と秋津先生。食事でとった糖質は体内で吸収され血糖に変わる。血糖は筋肉などを動かすためのエネルギー源だ。
「ところが急性糖尿病になると、血糖がすべて尿に出てしまう。その結果、栄養失調のような状態になり、やせていくわけです」(秋津先生)
血糖値の高い状態が長年続く『慢性糖尿病』の場合も同様に、「食べても食べてもやせていく」ことがある。
「慢性糖尿病が悪化すると全身へ適切な栄養の供給ができなくなり、やせていきます。また血糖に変わるエネルギー源として脂肪が分解され、ケトン体という物質が分泌されます。これが増えると脱水症状を起こしたり、放置すれば昏睡状態になったりするなど、命にかかわるおそれもあります」(植田先生)
夜中だけトイレに行く回数が増える→「心不全」
夜中に何度もトイレに起きてしまう……。読者世代には思い当たる人も多いのでは?
「夜中だけトイレに何度も起きて、しかも足のむくみを伴う人は要注意。心不全のおそれがあります」(秋津先生)
血管が詰まる病気などで心臓の力が弱まると、足にたまった水分を心臓まで引き戻す力も弱くなり、夕方になると足にむくみが生じるように。これが心不全の症状のひとつ。こうなると、たまった水分を腎臓まで運ぶことも難しい。
「寝るときに身体を横にすると、たまっていた水分が腎臓に運ばれ尿が作られます。そうして夜間に不要な水分を排出しようとするため、尿量が増えるのではないかと考えられています」(秋津先生)
ここで気をつけたいのは、あくまで“多尿”であって“頻尿”ではないこと。
「頻尿の場合、トイレの回数が多くても、尿はあまり出ないことが多い。用を足すたびにまとまった量の尿が出るならリスク大です」(植田先生)
原因不明の腰痛→「うつ病」
全国2800万人が悩んでいる国民病の腰痛。温めたり、マッサージをしたり、いろいろ試しているのに治らなかったら、こんな可能性が。
「慢性腰痛の場合、身体より心の問題が痛みにつながっていることが最近の研究でわかってきました」
と、植田先生。『ドーパミン』や『セロトニン』といった脳内の神経伝達物質には、痛みを抑制し、軽減させる働きがあるといわれている。これらは日常的にストレスを受けると分泌機能が低下し、痛みを抑えられなくなるという。
「そもそもドーパミンやセロトニンは、不足すれば、うつ病を引き起こすといわれているもの。うつ病になると痛みをより感じやすくなり、悪循環に陥ってしまいます」
適切な量の向精神薬や抗不安薬を服用することで、うつ病だけでなく、腰痛が軽減される効果も期待できる。
「整形外科で治らなければ、1度、心療内科へ相談に行くことをおすすめします」