新型コロナウイルスのワクチン接種が本格化してきたが、心配なニュースも耳にするようになってきた。
ワクチン2回接種後も、100人中8〜9人は発症
東京オリンピック出場のために来日したウガンダ代表選手団のうちの2人が、ワクチンを2回接種していたにもかかわらず、入国後のPCR検査で陽性だったことが判明。また、世界でもっともワクチン接種のスピードが速いとされるイスラエルでは、変異株の感染が広がったため、一度撤廃した「マスク着用義務」を1週間で再び戻す事態になっている。
新型コロナのパンデミック収束の切り札になると思われていたワクチンだが、2回接種しても安心できないということなのだろうか。
ワクチンを開発したアメリカのファイザーとドイツのバイオ企業が今年の4月に発表したデータによると、4万6307人を調べた結果、ワクチン2回接種から6か月後までの発症を防ぐ効果は91・3%だったという。
「91・3%」。一見するととても高い数字に思えるが、言い換えると、ワクチンを2回接種しても、100人中8人か9人は新型コロナに感染して発症してしまうことを意味している。決して少なくない人数だ。では、自分がその8人か9人にならないためにはどうしたらいいのか。
ワクチンを打つ最大の目的は、ウイルスに対する「抗体」をしっかり作ること。実はいま、抗体とある栄養素の関係が注目されている。
ビタミンB1が抗体に関係している
「ビタミンB1が不足すると抗体が作られにくくなることがわかっています」と話すのは、国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所のワクチン・アジュバント研究センターのセンター長を務めている國澤純さんだ。
ワクチンの効果を左右する抗体は免疫細胞が作るのだが、そのためには免疫細胞がリンパ節という組織で、抗体を作れるように“変身”する必要がある。ところが、ビタミンB1が不足するとリンパ節が小さくなり、抗体が作られにくくなってしまう。抗体の量が減るということはワクチンの効果が弱まるということだ。
「新型コロナウイルスのワクチンの詳しいことはまだわかっていないですが、抗体を作ることで威力を発揮する点は従来のワクチンと同じですので、おそらく、ビタミンB1と関連していると考えられます」(國澤さん、以下同)
ビタミンB1は豚肉などで手軽に摂取可能なので、ワクチン接種から抗体ができるまでの1~2週間は意識してとりたいものだ。
ビタミンB1は感染防御にも関係
また、ビタミンB1は、ワクチンだけでなく、新型コロナウイルスの感染防御に関係している重要な抗体を作る際にも必要だという。
新型コロナウイルスは主に鼻やのどの粘膜から私たちの体内に侵入してこようとするが、そのときに働くのが粘膜免疫という免疫システム。「IgA抗体」という抗体が唾液などに分泌され、新型コロナウイルスに強く反応して、私たちの鼻やのどの粘膜から体内に侵入するのをブロックしていることが最新研究でわかってきた。
「新型コロナ患者を対象にした研究から、初期の感染防御にIgA抗体が重要だという論文が、世界でもっとも権威ある学術雑誌のひとつである『サイエンス』の姉妹誌に載り、いま注目されています」
頼りになるそのIgA抗体も、ほかの抗体と同じように、ビタミンB1が不足していると減ってしまうという。
「IgA抗体は新型コロナだけでなく、インフルエンザや風邪のウイルスからも身体を守ってくれています。感染症予防のためにも、ビタミンB1を積極的にとるのがおすすめです」
ビタミンB1は豚肉に特に多い
ビタミンB1は体内にためておけない栄養素なので、継続して食べるようにしたい。
うなぎやたらこにも多く含まれているが、うなぎは高価で、たらこは塩分が気になる。日常的に食べるなら豚肉が手ごろだ。脂身の少ないヒレ肉などの赤身肉やハムに多く含まれている。ちなみに、食卓によく登場する豚ばら肉は100g中0・51mg。脂身が多いのでビタミンB1はヒレ肉の半分以下だ。
また、豚肉と一緒に、にんにくやニラ、玉ねぎを食べるのもおすすめ。それらに含まれるアリシンという成分のおかげで、ビタミンB1の吸収が約10倍もアップするのだ。
「豚の赤身肉とニラで炒めものを作ったり、ボンレスハムと玉ねぎでちょっとしたサラダを作ったりするのもいいですね。ちなみに、ビタミンB1は玄米にも多く含まれているので、玄米食の人は日常的にビタミンB1をとっていることになります」
厚生労働省による食事摂取基準では、成人女性は1日に約1・1mg、成人男性は約1・4mgのビタミンB1をとるよう推奨されている。豚ヒレ肉なら100gでほぼ足りる計算だが、実際の摂取量は平均0・95mgといわれている。足りていない人が多くいるのだ。
いまこそ意識してとりたい栄養素がビタミンB1といえるだろう。
国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所ワクチン・アジュバント研究センター センター長。著書に『善玉酵素で腸内革命』(主婦と生活社)がある。