『週刊女性PRIME』が5月18日に報じた通り、アニメ『鬼滅の刃』の第2期にあたる〈遊郭編〉をフジテレビ系列で放送することが発表された。2020年10月に公開、歴代興行収入1位となる400億円超えを記録した「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」の続編だけに、高視聴率が望める“キラーコンテンツ”はどの局も手にしたかったことだろう。
もともとアニメの第1期は、2019年4月から9月にかけて首都圏を放送地域とする「TOKYO MX」の深夜枠で放送されていた。第2期も「TOKYO MX」での放送は継続されるとのことだが、突然入ってきたキー局のフジが“横取り”してるようにも……。
「それは違いますね。近年のアニメは“製作委員会”を立ち上げて、そこにスポンサーが出資するという形がメインとなっていますが、『鬼滅』はアニメ会社のアニプレックス、原作の著作権を保有する集英社、そして制作会社のufotableの3社による合同製作です。よってMXさんが製作委員会に名を連ねたり、出資していたわけではありません。
今回の2期も同様にMXさんが、そしてキー局のなかでフジテレビさんがめでたく放映権を獲得した、という極めて正当な流れなんですよ」(アニメ専門誌編集者)
原作を改変してオリジナルに
『鬼滅』ブームが大きくなるにつれて、いち早く第1期の放映権を獲得して“再放送”をしていたフジだけに、そのツテから無事に2期もゲットできたというわけか。ところが、この“フジと人気アニメ”の組み合わせを不安視するファンもいるという。どういうことか。
「どうも同局で放送された『約束のネバーランド』での“やらかし”がいまだに引っかかっているようです」とはアニメ事情に詳しいライター。
フジの深夜アニメ枠『ノイタミナ』にて2021年1月、『鬼滅の刃』と同じ『週刊少年ジャンプ』で掲載されていた人気漫画『約束のネバーランド』の第2期アニメが放送された。しかし、フジはアニメファンにとって耐えがたい“タブー”を犯したのだ。
「思ったよりも視聴率が伸びなかったからか、それとも当初より第2期での終了が決まっていたのか。原作を大幅にカット、改変してオリジナルストーリーに仕立て上げて放送したのです。ファンにとって重要とされるエピソードもごっそり削がれていたことから、ネット上では不満の声があふれました。
そんな“前科”があるフジだけに、『鬼滅』ファンは“頼むから余計なことはしないで”と原作が忠実に再現されることを願っているんですよ」(アニメライター)
また、さらに危惧されているのが“過剰演出”だ。9月25日には放送に先駆けて『土曜プレミアム』にて、劇場版を地上波初放送することも決定しているのだが、思い出されるのが2017年3月4日に同枠で放送されたアニメーー、
「同じく“地上波初放送”を謳った『アナと雪の女王』です。社会現象にもなったキラーコンテンツを放送できるとあって力が入り過ぎたのでしょう(苦笑)。開始前から“いよいよ放送”などと過剰な煽りも見受けられたのですが、問題は本編終了後のエンドロールでした」(前出・アニメライター)
『アナ雪』といえば『レット・イット・ゴー~ありのままで~』が大きく知られ、映画館では観客全員で合唱する企画も生まれたほど。これに便乗したフジは、本来ならばMay J.が歌うエンディングテーマが流れるところを“改変”。
「ディズニー推しの芸能人や自局のアナウンサー、視聴者の投稿映像を織り交ぜたオリジナルのエンディング映像を流してしまった。映画の余韻を消したことに加えて、他の映画の番宣までブチ込んだことで“アナ雪が台無し”と炎上騒ぎに。
“尺”の関係でエンディングをカットするのは他局でもあれど、わざわざ作り直して、それが批判されるのは異例。その後の定例会見で当時の亀山千広社長が“唐突感はあった”と、行き過ぎた演出を反省するハメになった(苦笑)」(前出・アニメライター)
「楽しくなければ〜」の体質
この教訓を生かしてか、2019年1月3日にテレビ朝日に“鞍替え”して放送された『アナ雪』は無事に通常エンディングが流れた模様。視聴者はようやく地上波で“完全版”を見ることができたのだ。「う〜ん、フジテレビさんの“体質”ですね」とは広告代理店営業マン。
「“楽しくなければテレビじゃない”とは同局の標語のようなもので、そんなテレビマンの“性”か、よかれとの思いから一部で“悪ノリ”にも見える過剰演出の傾向があるのも事実。今回、『鬼滅』放映権をとったことで早速、花江夏樹ら出演声優陣の同局番組への番宣行脚や、特集企画なども練られ始めていると言います。でも、ファンが純粋に見たいのは丁寧に作られた作品そのもの。浮かれずに“ありのままの”『鬼滅の刃』を放送するだけで、自ずと視聴率は稼げると思いますよ」
原作ストーリー同様に、演出面でもハラハラドキドキさせられそうだ。