“スッキリポーズ”をとるNiziU(スッキリの公式ツイッターより)

 先日、『Nizi Project』のシーズン2が始動することが明らかになった。近年、増えるオーディション番組。ネット配信が普及する中で、テレビでも展開されるのはなぜか。その中でもなぜ、朝の情報番組で特集されることが多いのか。テレビ解説者でコラムニストの木村隆志さんが解説する。

今春スタート『THE FIRST』も好調

 13日、『Nizi Project Season2』の開催が発表された。今回は男性限定のオーディションで、2023年3月にNiziUの弟分に当たる新たなグループが誕生するという。

 昨年のSeason1は動画配信サービス・Huluで配信されたほか、地上波の『スッキリ』(日本テレビ系)でも頻繁に特集。ジワジワと人気を集めはじめたころ、YouTubeでの追いかけ配信もはじまり、深夜帯には『虹のかけ橋』(日本テレビ系)も放送された。

 ただ、それ以上にブームをけん引したのは、やはり『スッキリ』が放送頻度をグッと上げたことだろう。最初の3か月間は月3回程度だったが、ゴールデンウィークの集中放送を経て、週2回の放送にペースアップした。その後、メンバーとグループ名が決まってからも彼女たちとプロデューサーのJ.Y. Parkは現在まで『スッキリ』に出演し続けている。

 さらに今春、SKY-HI(AAA・日高光啓)が手がけるボーイズグループのオーディション番組『THE FIRST』がスタート。『Nizi Project』と同じように『スッキリ』、Hulu、YouTubeで放送・配信されている。

 また、スタートしたばかりの4~5月は週1放送だったが、6月から週2放送にペースアップしたところも同じ。さらに、6月28日に配信リリースされた課題曲『Be Free』がiTunesの総合1位を獲得し、YouTubeで公開されたパフォーマンス動画は240万回視聴を突破する快進撃を見せている。

 YOASOBI、ヨルシカ、Ado、yamaなどネット発の新星が次々に登場する中、なぜオーディションコンテンツにテレビ番組がフィットしているのか。なかでも、なぜ朝の情報番組である『スッキリ』がハマっているのか。

オーディションコンテンツの魅力

 まずふれておかなければいけないのは、オーディションコンテンツの特異性。

 基本的に「若手アーティストは情報や楽曲が少ないからこそ、新鮮な印象や衝撃を与えやすく、興味を引きながら愛着につなげる」という流れで売れていく。そのため、「少ない情報や楽曲でもシェアされることで、一気に広がっていく」という形でネット発の新星が増えるのは当然の流れだろう。

 一方、オーディションコンテンツは、「回を重ねるごとに情報が増え、愛着が増していく」という形でファンをつかめるのが強み。まるで連続ドラマの登場人物への思い入れが回を重ねるごとに増すように、視聴者は参加者への思いを募らせていく。もともとオーディションコンテンツには、合否で明暗が分かれる緊迫感と、それに全力で挑む若者たちの青春ドキュメントという2つの魅力があるだけに、思い入れが強くなりやすいのだ。

 また、その際、一緒に見守る人々がいることで、参加者への思いはさらに募っていくのだが、そこにこそテレビ番組の強みがある。テレビは「より多くの人々が同じコンテンツを同時に見て楽しめる」というライブ感では、いまだネットツールに負けていない。なかでも『スッキリ』は生放送ならではのライブ感があるだけに、収録した映像とは思えないほどの緊張感を醸し出せる。

 実際、『スッキリ』で『THE FIRST』が放送される日は、常に関連ツイートが飛び交い、多くの人々がリアルタイムで盛り上がっている。つまり、オーディションコンテンツは、テレビが“主”で、ネットが“従”として楽しむのが王道ということだろう。もしテレビでの放送がなくHuluやYouTubeの配信だけだったら、一部ファン向けのマニアックなコンテンツという位置づけだったのではないか。

 また、『スッキリ』で放送することで、若年層から中高年層まで、幅広い世代の人々に見てもらうことができる。事実、「自分の息子や孫を応援するように見る」という親世代の人も少なくないという。

昨年の成功体験とコロナ禍の好影響

『THEFIRSTBOYSGROUPAUDITION2021』ホームページより

  『スッキリ』の制作サイドから見ても、多くのスポンサーから若年層視聴者の獲得を求められる中、オーディションコンテンツの放送は渡りに船。

 SKY-HIが「ダメ元でオーディション企画への密着を『スッキリ』に打診したところ快諾してもらった」と明かしていることも、両者の相思相愛ぶりを裏付けている。

 もちろん『スッキリ』が快諾したのは昨年の『Nizi Project』という成功体験によるところが大きい。さらにその成功体験の中には、プロデューサー・J.Y. Parkの人気爆発も含まれている。

 J.Y. Parkが素晴らしかったのは間違いないが、現在のSKY-HIも決して負けていない。「クオリティファースト、クリエイティブファースト、アーティシズムファースト」というオーディションコンセプトはブレることなく、1か月の合宿を参加者と過ごすなど、真摯に向き合う姿勢が視聴者の胸を打ちはじめている。

 J.Y. ParkもSKY-HIも、その言動が、企業や家庭、社員や家族の発展や円満につながるものとしてサラリーマンや主婦に響いているのだ。とりわけ昨年から今年にかけて、コロナ禍によるテレワークやステイホームで、「朝の情報番組を家で見られる人が増えた」ことも追い風の1つと言えるかもしれない。

 『THE FIRST』は、まもなく最終審査に突入するが、クライマックスに向けてますます盛り上がりを見せるだろう。そして来年には、『Nizi Project Season2』が『スッキリ』で放送されるのではないか。

 もしかしたら『THE FIRST』で惜しくも脱落した人が、来年の『Nizi Project Season2』にエントリーし、再び『スッキリ』に登場するかもしれない。もしそうなったらネット上の熱狂は確実であり、応援のボルテージはさらに上がっていくはずだ。

木村隆志(コラムニスト、テレビ解説者)
ウェブを中心に月30本超のコラムを提供し、年間約1億PVを記録するほか、『週刊フジテレビ批評』などの番組にも出演。各番組に情報提供を行うほか、取材歴2000人超の著名人専門インタビュアーでもある。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』など。