7月1日からフィギュアスケートの新シーズンが幕を開けた。羽生結弦(26)は、9日から3日間にわたって行われた、アイスショー『ドリーム・オン・アイス2021』に出演。
「必ず今季は4回転半を」
「羽生選手は6年ぶりですね。ほかにも、鍵山優真選手や紀平梨花選手などのトップ選手が勢ぞろい。ほとんどの選手が新プログラムでしたが、羽生選手は'19年のアイスショーでToshIさんの生歌にのせて滑った『マスカレイド』を2年ぶりに披露しました」(スポーツ紙記者)
新プログラムについて“曲は決まっているが、音源はまだできていない”と語っていた羽生。今回披露しなかった事情を、スポーツライターの折山淑美さんに聞いてみると、
「“ピッタリくるもの”を選ぶのに時間がかかったのでしょう。4回転半の練習をしていた昨シーズンの疲れもありながらの、アイスショーへの出演となりました。昨シーズンの国際大会はコロナ禍でバブル形式になり、精神的な疲労も大きかった。休養をとる時間が必要だったのに『ドリーム・オン・アイス』 に向けても集中して練習をしていたようなので、プログラムの曲を選ぶのが一朝一夕にはいかなかったんだと思います」
では、すでに決まっているという曲目はどんなものになりそうか。
「フリープログラムで決まっている『天と地と』の対極にあるような、静かなバラード曲を考えているのではないでしょうか。これまでもフリーとショートの対比を意識して選曲をしている傾向がありました」(折山さん)
コロナ禍でカナダに渡るのは難しく、引き続き今季も国内で練習することになりそうだ。'22年2月からの北京オリンピックに向け、念願の4回転半を磨き上げていく。
「今シーズンに4回転半を成功させることができれば、まだ誰も降りたことのない新しい4回転ジャンプとなります。フリーの『天と地と』に4回転半を組み込むことで、羽生選手にとってこのプログラムが“完成”するんです」(前出・スポーツ紙記者)
『ドリーム・オン・アイス』のインタビューでは、
「必ず今季は4回転半を決めるんだという強い意志はあります」
と話した羽生。頼もしい決意だが、そのときのもうひとつの発言がファンをざわつかせている。
羽生が残した“引退におわせ”
「“競技スケーターとしての人生をかけた最後の夢だと思っているので、すべてをかけてそこにたどり着きたいなと思っています”と言ったのが、“引退を示唆しているのでは?”と感じさせたんです。強い気持ちの表れでしょうが、“最後の夢”というのが気になりますよね」(前出・スポーツ紙記者)
4回転半ジャンプは羽生にとって悲願。ファンも応援しているが、その先に起きることが心配なのだ。
「もちろん、夢を叶えてほしい、と願っています。でも、その夢が叶ったら、競技スケーターとしての羽生結弦は、もう見られなくなってしまうのかも……。全力で応援はしつつも、引退“におわせ”の言葉も聞くと、正直、複雑な気持ちになってしまいます」(羽生ファンの女性)
とはいえ、まずは北京五輪での活躍を見たい。ライバルのネイサン・チェンも北京五輪に向けて始動している。
「新しいプログラムを準備していますね。ネイサン選手は母親が北京生まれ。そのため、北京五輪には特別な思いを抱いているようで、優勝への思いは強いでしょう。オリンピックが終わったら、現在休学しているアメリカの名門・イェール大学に復学して、医学の道へ進むことを発表しています」(前出・スポーツ紙記者)
羽生もネイサンに勝ちたいと考えているはずだ。しかし、今は勝利よりも4回転半ジャンプに目が向いているように見える。
羽生がこれほどまでに、4回転半ジャンプに執着するのはなぜなのか。
「アクセルは彼がいちばん好きなジャンプですし、まだ誰もやっていないジャンプだからこそ、4回転半を跳びたいのでしょう。ここ数年での目標というわけではなく、小さいころからの夢なんだと思います。オリンピック2連覇もそうですが、“歴史に名前を刻むことをやりたい”という羽生選手なりのアスリート意識があるんですね」(折山さん)
7月15日に発売された雑誌『Number』では、水泳の池江璃花子選手との対談で、現在の野望について語っていた。
《例えば勝つだけだったら、4回転半という今自分が挑戦しているジャンプは要らないと思います。だったら4回転の種類をしっかり増やして、いい演技をコンスタントにできるほうが絶対勝てるんです。でも、それじゃあ僕は競技者としてもつまらなくなってしまったというか、そこのモチベーションを感じなくなってしまったというのが正直なところです》
4回転半ジャンプを成功させて、今季を“有終の美”にするという思いもあるのだろうか。
「そういう気持ちよりは、“4回転半を試合でやりたい”というのがいちばんだと思います。それ以外のことはいっさい考えていないのではないでしょうか。ただただ“今季中に試合で4回転半を跳びたい”という思いだけ。達成した後のことは、まだ彼の頭の中にはないはずです」(折山さん、以下同)
とはいえ、“最後の夢”を叶えた後はどうなるのか、やっぱり気になるところ。
「もしかしたら、違う目標を見つけるかもしれません。羽生選手は“競技者”なので、4回転半を跳んだからといって引退するとは限らない。“競技者魂”が燃え尽きれば引退もあるかもしれませんが、“別の何か”を見つけたら現役を継続するはずです」
今後について仙台の父親に聞くと
そこで、羽生のことを今、最も近くで見ている地元・仙台の父親に、今後のことについて電話で話を聞いてみたが、
「そういったお話は、スケート連盟を通していただくことになっておりますので」
と、柔らかい口調の言葉が返ってきただけだった……。
羽生は、4回転半ジャンプを超える目標を見つけることができるだろうか。
「誰も成し得ていないことに挑戦したいという思いがあるのでしょう。例えば、オリンピックの4連覇。今まで、フィギュアスケートで3連覇を達成している選手は数人いますが、4連覇は1人もいません。北京五輪で4回転半を成功させて3連覇を果たしたら、4年後のミラノ五輪を目指すかもしれませんよ」(フィギュアスケート関係者)
羽生は前出の『Number』で、自分のモチベーションについても話していた。
《スケートの場合は、何かを達成した時に、「よっしゃ、じゃあ次これやろう」と続いていくんですよね。達成感が他とは全然違う。それのために生きているみたいなところもあって》
4回転半で4年後に4連覇。北京五輪の後は“4・4・4”を目指す新しい羽生が見られるはずだ。