新型コロナウイルス感染拡大の影響で、私の周りにも、月の収入が一気にゼロになってしまった人や、予定していた100本を超える講演がすべて中止になった人などがいます。
企業のトップや飲食店の経営者にとって、収入減は、それこそ死活問題。実質的なお金の面だけでなく、将来への不安から、メンタル面でも厳しい日々が続いています。
そんな「お金の心配が頭から離れなくってしまったとき」、せめて心の持ちようだけでも楽にするには、いったいどうすればよいのでしょうか?
お金の苦しみを救った、意外な人の言葉
自分の内面に潜む問題を根本的に解決する方法である「感情コンサル(R)メソッド」を開発され、これまで500人以上の経営者・社長に、のべ1000件以上の感情コンサルを行ってきた押野満里子さんは、ご自身が資金繰りで苦しんだ過去をお持ちです。
家族で経営されていた中小企業の経理担当役員として、「運転資金が苦しくなると、自腹を切ってお金を出して、足りない分を補填(ほてん)する」ことから、お金の不安が頭を離れない日々だったそうです。
そんなある日、押野さんは、テレビに映ったホームレス経験者の言葉を聞いて衝撃を受けます。その方は、こう言っていたのです。
「お金が一銭もなくなっても、なんとか生きていけるもんですよ」
聞いた瞬間、押野さんは思いました。
「あっ、お金がなくても死なないんだ」
そして、資金繰りに悩むより、いっそのこと開き直って、「損しても構わない」と本気で考えてみることにしたのです。
すると、不思議なことが。
気持ちが楽になっただけでなく、「お金に執着せず、楽しいことをしよう」と考えるようにしたら、いろいろなことが、うまくいくようになったのです。
会社の運用でも、「損してもいいんだから」と余計な節約は考えず、直感的にいろいろなことを決めるようにしたら、ストレスはないし、時間短縮にもなったとか。
図らずも、「お金に支配される生活」から脱することができたというわけです。
お金の悩みで苦しいときの脱出法4つ
感情コンサルとなり、経営者からの「お悩み相談」を受けるようになった押野さんは、ご自身の体験も含めて「お金の悩みが頭から離れなくなってしまったときに、やっていただきたい解消法」として、次の4つを提唱しています。
〇お金の悩み解消法1:そもそも、自分は何のためにこの事業をやっているのかに立ち返る
押野さんいわく、資金繰りで、頭のなかがお金に支配されてしまったら、会社のビジョンや理念に立ち返って「自分が事業を始めた理由」という原点を見直すと、「残すべきもの、捨てるべきものが見えてくる」とのこと。
〇お金の悩み解消法2:「お金がなくなると何が不安なのか」を正しく認識する
お金がなくなることに対して、漠然と不安に思うのではなく、例えば「住む家がなくなって、家族が路頭に迷うのが怖い」などのように、いったい何が困るのかを突きつめて考えてみる。すると、かつての押野さんのように「お金に困っても、命までは取られない」と開き直って精神的に楽になり、大胆な行動がとれるようになって、事態の好転につながるかもしれません。
〇お金の悩み解消法3:お金の悩みであっても、人に相談する
責任感の強い人ほど、お金の悩みを1人で背負ってしまいがち。資金繰りについてなどのシビアな話題でも、家族など、信頼できる相手に相談する。たとえアドバイスをもらえなくても、相談するだけで心が軽くなるし、背中を押してもらえたり、何が問題なのかが整理できたりします。
〇お金の悩み解消法4:「お金では悩まない」と、自分で決める
押野さんは、自分自身に感情セラピーをして、ある日「私は、資金繰りに困らない女になる!」と、自分で自分に宣言したそうです。自分で決めるだけなら、なんの根拠も要りません。彼女は「不思議なもので、こう思い込むことで少し気が楽になり、気のせいか資金繰りも少し落ち着いたように感じました」とおっしゃっています。
いかがですか? 押野さんのアドバイスは、経営者向けのものですが、どれもお金について悩んだときのヒントになる考え方だと思います。
ちなみに私は、解消法の1と4を実践しています。
(文/西沢 泰生)
《参考:『社長はメンタルが9割』押野満里子著 かんき出版》
【著者PROFILE】
にしざわ・やすお ◎作家・ライター・出版プロデューサー。子どものころからの読書好き。『アタック25』『クイズタイムショック』などのクイズ番組に出演し優勝。『第10回アメリカ横断ウルトラクイズ』ではニューヨークまで進み準優勝を果たす。就職後は約20年間、社内報の編集を担当。その間、社長秘書も兼任。現在は作家として独立。主な著書:『壁を越えられないときに教えてくれる一流の人のすごい考え方』(アスコム)/『伝説のクイズ王も驚いた予想を超えてくる雑学の本』(三笠書房)/『コーヒーと楽しむ 心が「ホッと」温まる50の物語』(PHP文庫)ほか。