7月7日に放送が始まったドラマ『ただ離婚してないだけ』(テレビ東京系、水曜0時~)。結婚7年目を迎え、すっかり関係が冷え切ってしまった夫婦。そんな2人の日常が、夫の不倫によって最悪の結末に向かっていく──。
ドラマはサスペンス調だが、相手への愛情などが薄れているものの、離婚せずにいる夫婦はこの世の中にゴマンといる。経済的な理由、子どものため、諦め……。そんな“ただ離婚してないだけ”夫婦のリアルを追ってみた。
【実例 1】引きこもる夫
〜授かり婚で2人の子どもに恵まれるも、ふとしたひと言で夫は自室引きこもり〜
「結婚4年目、夫が仕事以外は自室で引きこもりになってしまって」
そう語るのは、フリーで企業のPRを務める三田紗香さん(仮名・49歳)。40歳のときに10歳年下のカメラマンと授かり婚。長男に続き、2年後に長女も出産した。長男を妊娠したとき紗香さんは、
「年下の彼に結婚を迫るつもりはありませんでした。でもいざ彼に話すと涙が出てきて……。すると彼が“僕も子どもの親になりたい”とプロポーズをしてくれたんです」
出産後、子育てと仕事に精力的だった紗香さんだったが、夫婦関係はすぐに危機を迎えることになる。
「夫の稼ぎがいまひとつだったので、私のクライアントを紹介したり、マスコミの友人に売り込み、夫の仕事は増えました。そんな中で夫は子育てに協力してくれましたが、家事は一切やりませんでした」
長女を出産したとき紗香さんは、夫が育児をサポートしてくれるだけでもマシと思っていた。だが疲弊していた紗香さんは、彼につい、不満をぶつけてしまった。
「長女をようやく寝かしつけ、泣きだした長男をおぶってキッチンで皿を洗っていたら、夫がリビングのソファで雑誌を読んでいたんです。
手伝ってくれない夫に腹が立って“たまには自分が食べた皿を洗ってよ”と文句を言ったら、夫は“明日の仕事の準備をしているんだ”と主張。そこで“私の紹介で決まった仕事でしょ。少しは手伝ってよ。私のほうが稼いでいるんだから”と、長年にわたる不満をついに爆発させてしまいました」
すると夫は黙ってリビングから出ていき、自室にこもってしまった。それからふたりの関係がギクシャクするようになった。
「夫は帰宅すると、部屋にこもります。LINEで食事を催促するんです。私は子どもたちとの食事の写真を送り食卓にくるように促しますが、夫は出てきません。仕方ないので焼きそばや焼きうどんなどを作り、部屋の前に置くようになりました」
夫とのコミュニケーションは絶たれてしまった。むろんセックスレスだ。だが紗香さんはそんな夫婦関係でも「耐えられる」という。
「私が仕事で外出するときに夫が在宅の場合は、子どもの面倒を見てくれます。なので、まあいいかなって」と、今の関係を許容している。
だが夫のズボンのポケットから、風俗店のマッチが出てきたときはショックだった。
「気持ちと裏腹に“可愛い子がいるの?”と年上ぶって尋ねても、夫は無言でした」
夫の“浮気”疑惑を拭えないまま、2年が経過した。
「最近、友達たちに冗談半分で“あんな夫と生活しているのだから、私は誰とでも結婚できる”と言っていますが……。夜中に突然目が覚め、自分でもよくわからない焦燥感にかられて、キッチンにたまっている食器を洗うこともあります」
紗香さんは時々情緒不安定になる。しかし離婚する気は、ない。
【実例 2】夫はパパ活、妻は出会い系
〜パパ活に励む夫とはセックスレス夫婦。妻は年下男性とのスマホ不倫に夢中〜
「夫と正反対の穏やかで優しい男性と交際しています。子どもたちには罪悪感がありますが……」とため息まじりに語るのは、坂上真由美さん(仮名・45歳)。
5歳年上の夫は製造業を営む会社の役員。若いころから営業成績はいつも上位で、結婚当初から接待をはじめとする夜の付き合いが多く、真由美さんは2人の子どもをワンオペで育てた。
「やっと子育てから解放されたときには、すでに夫婦間にすきま風が吹いていました」
夫は夜の接待や飲み会を“サークル活動”と呼び、クラブやスナックで働く女性たちと浮気していたという。
「私は子育てに専念しようと自分に言い聞かせました。見て見ぬふりをしていたんです」
子どもたちが中学に進学すると、真由美さんは友達の紹介でデザイン会社に再就職する。そこでのアシスタントの仕事は充実感があった。
「2年前、いつものように遅く帰宅した夫が入浴していました。私が歯磨き粉を新しいものに替えようとバスに隣接している洗面所に入ったんです」
そのとき、夫が脱いだジャケットのポケットからスマホが落ちたという。
「拾ってポケットに戻そうとすると着信がありました。夫の代わりに電話に出ると、若い女性の声で“明日振り込みお願いね”。思わず絶句しましたが、気を取り直して“もしもし”と返すと、プツッと電話が切れました。
もしやという疑惑が渦巻き、夢中で夫のLINEをチェックすると、複数の若い女性たちと絵文字満載のやりとりがあって……。パパ活をしていたんです」
複数のパパ活アプリで、不特定多数の若い女性と浮気を繰り返していた夫。嫌悪感が募り、その夜は眠れなかった真由美さん。夫の顔は見たくもなかったが、子どもたちのために別れないと決めていた。
「それから1か月ぐらい後、同年代のママ友同士の会で、参加者のうち3人から、出会い系アプリを使用していると打ち明けられたんです」
3人とも男と女の関係という点では口を閉ざしたが、「食事をするだけで楽しい」という発言が耳に残った。
「その夜も夫の帰宅が遅かったので先に寝ました。朝起きて、家族の朝食を作りながら、普段と変わらない日常が今日も始まると思ったときに、ふと魔が差したように、出会い系に登録してみようと思ったんです」
出会い系アプリに実年齢で登録すると、10人以上の若い男性からオファーがあった。「熟女好きが多いのに驚きました」
その中から選んだ15歳年下のアパレル業界の優しい男性と、現在不倫中だ。
「浮気を繰り返す夫と対等になっただけ、と自分に言い訳しています。この関係は長続きしないでしょう。だから今が幸せならいいと、割り切っています」
【実例 3】不倫相手には渡さない!
離婚は絶対にしてやらない──。妻の嫉妬が渦巻く家庭内別居夫婦
2人の子どもの子育てが一段落した川村裕子さん(仮名・47歳)は、7歳年上の代理店勤務の夫の同窓会恋愛を知って、ショックを受けた。
「出会ったころからずっと優しい人でした。育児にも家事にも協力的で、満点パパだったのに……」
結婚前は負けず嫌いでバリキャリだった裕子さん。穏やかな性格の夫のおかげで、勝ち気さがあまり出なくなったという。
「子育てが楽しくて、ママ友との人間関係もうまくいっていました。パン屋さんのパートの仕事にもそれなりに居場所を感じていて。子どもたちが独立したら、パパ(夫)とゆっくり温泉巡りができるかなと老後の生活も楽しみにしていたんです」
ところが2年前から、夫は土日も「休日出勤」と朝から出かけることが増えた。
「思い返すと、そのタイミングで彼の高校の同窓会があったんです。そのとき、帰ってきた夫がものすごくご機嫌だったことを思い出して、もしかしたらとスマホを覗くと、同窓会で再会した女性と不倫をしていることがわかったんです」
夫と交際している女性の存在を知った裕子さんは頭に血が上り、夫に女性との関係を問いただした。最初は否定していた夫だったが、裕子さんが女性とのLINEのやりとりを覗いたことを伝えると、あっさりと関係を認めた。
「しかも夫は、“定年になったら退職金を全部差し出すから、離婚してくれ”と懇願するんです。頭が真っ白になりました」
相手の女性が小規模だが会社の経営者だったことも、裕子さんの逆鱗に触れた。
「私はキャリアを捨てて、妻として、母として、家族のために尽くしてきたのに。つらいし、やるせないです」
裕子さんは愛する夫が自分を捨て、不倫相手との将来を選ぶのが許せないのだろう。
「夫は話し合いを望んでいますが、離婚に応じる気はありません」
たとえこれまでの生活が戻ってこなくても、家族として過ごした時間を大切にしたいと、裕子さんは繰り返し口にする。その姿はどこか物悲しい。