第62回 篠原涼子
大物芸能人の離婚が相次いでいます。とんねるず・石橋貴明と女優・鈴木保奈美に続き、俳優・市村正親と女優・篠原涼子が離婚を発表しました。
石橋&保奈美の場合、3人のお子さんの子育てがあらかた終わっていることもあり、ネットでは「子どもが育ったなら、それもアリ」「お金があるからこそできる決断」とそれなりに好意的な意見もありましたが、まだお子さんが13歳と9歳と小さい市村&篠原の場合、そうはいかなそうです。
2016年5月12・19日号『女性セブン』は篠原と俳優・江口洋介の“焼肉デート”を、2016年6月10日号『週刊ポスト』は、篠原がママ友と早朝まで飲んで不倫願望を口にしていたと報じています。コロナ禍の2020年には、篠原が家族と別居していることを『女性自身』が報じ、篠原側も「ドラマの撮影で大勢の人と接することもあり、家族へ感染させないため」と認めています。
若く美しい女性を妻にすることの難しさ
報道から推測するのなら、なんとなーく「篠原がイヤになって逃げちゃった」感がしないでもないですが、この夫婦の場合、25歳の年齢差があるという特徴があります。
日本には「女房と畳は新しいほうがよい」ということわざがありますし、西洋では高い社会的地位を得た男性が糟糠の妻を捨て、晩年近くなったころに若く美しい女性を妻にすることを、若干の揶揄をこめて「トロフィーワイフ」と呼ぶこともあります。洋の東西を問わず、若い女性を妻にすることは男性の“夢”なのかもしれませんし、経済力のある年上の男性と結婚すると甘やかしてもらえると思う女性もいるかもしれません。
しかし、年の差婚は、実は特に男性にとってリスクの高い、ヤバい結婚ではないかと思うのです。石橋&保奈美を取り上げた前回の記事で「カップルが長続きするかどうかは、結婚当初のパワーバランスが保てるかどうか」だと書きましたが、年上夫とトロフィーワイフの関係を維持するのは結構難しいように感じるからです。
まず、大前提として男性側は「トロフィーを得られた自分」を維持しなくてはならないでしょう。たとえば、夫の事業が傾いたり人気が凋落したりして経済力に影響が出たら、「こんなはずではなかった」とトロフィーワイフに去られてしまうかもしれません。
それでは、財力があればいいかというと、そうでもない。「オトコの魅力」をキープすることも大事な要素になるでしょう。
トロフィーワイフの“急成長”がマイナスに
『ひるおび!』(TBS系)のコメンテーターを務める落語家・立川志らくは今ではバラエティー番組に欠かせない存在となりましたが、「うちのカミさんは18歳年下なんだけれども」が口癖の1つです。いろいろな番組で、妻の勧めに従って洋服は若者向けブランド・ヒステリックグラマーで統一していると明かしています。夫は売れっ子で経済力があり、妻の意見も聞き入れてくれる。愛妻家で絵に描いたような幸せに見えますが、自慢の愛妻は20代の弟子と自宅前でわいせつ行為に及んでいたことを『週刊文春』で報じられています。
若々しく装っても、本物の若い男性にはかなわない。だからといって、妻の不倫が許されるとは思いませんが、加齢は努力ではどうにもならないことだけに、二人の関係性をヤバいものにしてしまうのではないでしょうか。
市村&篠原の場合、篠原が単なるアイドルから人気女優としてのポジションを固めたことが、夫婦関係にとってはマイナスだったと思います。小室哲哉氏プロデュースの『愛しさと せつなさと 心強さと』で歌手として大ブレイクを果たした篠原ですが、小室ファミリーから離れてからは、以前ほどのヒットは出せないでいました。そのまま消えてしまう芸能人も多い中、篠原にはツキがありました。舞台に挑戦することになり、相手役の市村によって才能を引き出され、女優として開眼していきます。28歳の篠原にとって、舞台経験の多い市村は俳優としても男性としても魅力的だったでしょうし、当時50代の市村もバリバリ壮年でした。
主役を張れるまでの女優と成長した篠原と市村は結婚し、お子さんが生まれます。主役というポジションを得ると自分に対する自信がついて、仕事や周囲に対して要求することが増えるでしょう。また、お母さんとなることで精神的にたくましくなり、夫がなんだか頼りなく見えてくるかもしれません。このようにトロフィーワイフが経済的・精神的に“急成長”を遂げてしまうと、結婚当初のバランスが崩れていきます。
カップルのバランスを崩すものは、妻の急成長だけではありません。夫側の加齢や老化もきっかけとなりえます。見た目や精力の衰えはもちろん、人はメンタルも老いるのです。頑固になって人の意見を聞き入れなくなったり、怒りっぽくなったり、同じ話を何度もするようになったりします。
トロフィーワイフとしての本分を全うできる妻であれば、何回同じ話を聞かされても初めて聞いたかのように「そうなんだ!」と驚いてあげられるでしょうが、子育てのことなど、妥協せずに話し合っておきたいことはそうもいかないでしょう。こうなると、夫は「昔はあんなにかわいかったのに、口うるさくなった」と感じるでしょうし、妻は「話の通じないヤバいジジイ」と思ってしまうのではないでしょうか。仕事があって魅力的な妻の場合、「もう一度、人生をやりなおしたい」と夫から逃げたくなるかもしれません。
一方の夫はひとりで老いていく孤独や、トロフィーワイフに逃げられるのがみっともないという世間体から、離婚したがらない。こうなると、夫がトロフィーワイフにすがってしまう形になるのではないでしょうか。
年の差婚であってもうまくいくポイント
芸能界の「年の差婚」と言えば、ザ・ドリフターズの加藤茶と妻であるタレント・加藤綾菜夫妻が有名でしょう。45歳という年の差から、結婚当初は「金目当て」とバッシングされましたが、今ではおしどり夫婦としてのイメージを固めています。
しかし、2016年11月23日放送の『モシモノふたり』(フジテレビ系)を見る限り、結構な苦労があったのではないかと思えるのです。同番組で二人は熱海の貸別荘に出かけます。別荘で料理をするので買い物をしますが、加藤茶は荷物を持たない。料理も手伝わない。「おいしい」とは言うものの、積極的に会話をすることもなく、テレビを見ているだけ。お風呂嫌いの茶は、天然温泉なのに髪もカラダも洗わず、お尻だけ洗って出てきてしまう。綾菜に向かって、彼女のルックスを「下の中くらい」と言ったりもしたそうです。
買い物や料理の手伝いをしない、会話も適当、妻の外見をほめないというあたり、典型的な「昭和のおじいさん」ですが、そもそもスターというのは自分以外に興味がない生き物ものなのかもしれません。番組内で綾菜は「ちーたん(※筆者注:加藤茶のこと)おらんかったら、生きてけん」と話していましたが、社会人経験のないまま専業主婦となった綾菜にとって、加藤茶の死は愛する夫だけでなく、経済的な基盤を失うことを意味しています。
しかし、加藤茶がパーキンソン病を患い、綾菜が献身的に介護したことで関係性が変わってきたようです。7月23日放送の『徹子の部屋』(テレビ朝日系)に出演した夫妻によると、綾菜は介護の資格を取り、タレント業と並行して介護の仕事を始めます。綾菜が健康に気を使った食事を出してくれるおかげで茶の血圧も安定し、茶は「(綾菜が)こんなにかゆいところに手が届くことをしてくれるなんて、想像もつかなかった。こんなに元気になりました」と話しています。妻側がほどよく仕事をし、加齢や老化を夫婦の味方につけられれば、年の差婚であってもうまくいくのでしょう。
最後に、カップルの寿命に影響があるものとして、倫理観の一致を上げたいと思います。倫理観が強ければいいというわけではなく、二人がだいたい同じ倫理観を持っていることがポイントではないでしょうか。
石橋&保奈美もそうですが、市村&篠原も不倫略奪婚の可能性が指摘されています。仮に略奪であったとしても、当事者全員が納得する形で折り合いをつけられるのなら、他人がとやかく言う必要はないでしょう。しかし、ひとつ言えることは、不倫略奪婚することに躊躇がない人は、自分中心にものを考える傾向があるので、自分にとってメリットがなくなったら、迷うことなく好きに飛び立ってしまうということ。
若い妻をもらったからといって浮かれていると、しっぺ返しを食らうこともある。世の男性は、少し覚悟しておいたほうがいいのかもしれません。
<プロフィール>
仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ。会社員を経てフリーライターに。『サイゾーウーマン』『週刊SPA!』『GINGER』『steady.』などにタレント論、女子アナ批評を寄稿。また、自身のブログ、ツイッターで婚活に悩む男女の相談に応えている。2015年に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)を発表し、異例の女性向け婚活本として話題に。好きな言葉は「勝てば官軍、負ければ賊軍」