対談した原田龍二(左)と中村玉緒(右) 撮影/伊藤和幸

 お茶の間の人気者から、一転。文春砲が見事に当たり、急降下の展開になってしまった原田龍二(50)。ただひたすら反省をし続ける彼が、同じく世間を騒がせた有名人と語り合う! 最終回は、あの勝新太郎と添い遂げた女優の中村玉緒(82)。人生の酸いも甘いもかみ分けてきた中村の生きざまに、原田は新たな決意を胸にする―。

『週刊文春』に「水戸黄門・助さん俳優原田龍二 4WD諸国漫遊不倫」の見出しが躍ってからはや2年。渦中の人となった原田は自らの限界に挑戦するかのごとく、さまざまな場所で全力の反省を見せてくれた。

 彼の人生はこれからも反省とともにあるが、本連載は第30回でひとつの区切りを迎えることに。原田はこの対談に登場してくれた人生の先輩・後輩たちの言葉を胸に、これからも前に進み続けるだろう。

 そして、最終回のゲストは希代の大スター勝新太郎さんを支えた中村玉緒。新たな航海に出る原田に女優・中村玉緒がエールを送る。

   ◆  ◆  ◆

原田 玉緒さんに初めてお会いしたのは、24年前。僕が主演を務めた『怒れ!求馬』(TBS系)に、玉緒さんがゲストで来られたときでした。その後も何度か京都でばったりお会いしたんですけど、お話しするのは本当に久しぶりですね。

中村 24年前ですか! 私は82歳になったんですよ。

原田 おめでとうございます! 全然お変わりない。実は『求馬』の撮影中、大先輩の玉緒さんの様子をずっと観察していたんです。新人の僕にもとても気さくに接していただき、寡黙な監督の意図を読み取って応えていたのが印象的でした。

中村 私はわりとまじめな性格なので、台本どおりに演じるんですよ。昔『黒い十人の女』の撮影中に市川崑監督から「玉緒ちゃんはさっき『◯◯は』って言ったけど、台本は『◯◯を』やからね」と怒られてしまったんです。それ以来、ずっとセリフは台本どおり。でも、主人の勝新太郎は「台本は捨てろ!」って言うてはりましたね。

原田 仕事のスタイルは正反対だったんですね。僕は、勝さんと一度も現場でご一緒したことがないんですけど、僕のような役者の端くれでも至るところでご主人のお話を耳にします。

中村 あら〜、一度もないんですか。

原田 そうなんです。直接勝さんとお話しできないので玉緒さんにお聞きするしかないんですけど、ご主人は家でどう過ごされていたんですか?

中村「台本を捨てろ」と言うくらいなので、家でも台本は開かず、仕事の話は一切しなかったですね。子どものおむつは替えられなかったけど、子どもたちの学校行事は全部参加してました。

勝新太郎の妻でよかった

原田 授業参観や運動会に勝さんと玉緒さんがいるってことですか! すごい状況。

中村 はい。私も家では“妻”になりたかったので、自宅に私のお弟子さんは入れませんでした。でもね、主人は毎晩のように誰か連れて帰ってくるんですよ。電話で「パパ、今日はひとりで帰ってくるんですか?」と確認すると「ああ、ひとりだよ」って答えるんですけど、ひとりだったためしがない。あるときは10人の舞妓さんを連れてきました……。

原田 すごい! それで玉緒さんはどうしたんですか?

中村 怒って追い返しましたよ! たとえ電話で舞妓さんが10人いるって言われても入れません。私はヤキモチ焼きなので(笑)。

原田 10人も連れて一体どこに行ったんでしょうね(笑)。

原田龍二と中村玉緒 撮影/伊藤和幸

中村 どうしたんでしょうね。それに、私が怒っても伝わらないんですよ。私は主人のマッサージをする係でベッドの上で寝ているパパの背中をもんでいたんですね。あるとき、いつまでも終わらせてくれないから腹が立って、足で思いっきり踏みつけていたら「今日はうまいね〜」なんて言われました。

原田 あはは! イライラするほどマッサージが上達していったんですね。

中村 だから私、マッサージがうまいんですよ。(立ち上がり、原田の背中をもむ)

原田(もまれながら)本当だ! すべての指がツボに入ってます! 

中村 そうなの。上手でしょう? そんな塩梅なので、私生活の主人は憎めない人でしたね。この前タクシーに乗ったら運転手さんに「お代はいりません。昔、運賃2000円のところを勝さんから1万円いただいたので、玉緒さんは結構です」って言われたんです。

 タクシーでは多めに払って、他人の借金も背負う、そんな人だから14億円も借金したんでしょうね。そしてその借金をぜーんぶ返したのは私(笑)。

原田 すごいですね。普通の人は14億も借金できないと思うので、ある意味ではそれだけのパワーを持つ人でもあったと思います。

中村 そうですね。でも、当時は本当にお金がなくてね。子どもに欲しがるものを買ってやれないから買い物に行けない。それだけじゃなくて、大変なことがたーくさんありましたけど、私は「勝新太郎の妻でよかった」と思ってるんですよ。

反省しても明日に目を向ける

原田 カッコいいですね。玉緒さんが勝さんと出会ったとき「この人と結婚する」という直感はあったんですか?

中村 まったくないです! 私は幼いころから仲がよかった市川雷蔵さんと結婚すると思っていたんですよ。

原田 えっ、そうなんですか!? 

中村 正式にお付き合いをしていたわけではないけど、周りからもそう思われていました。でも『悪名』で勝さんと共演したときにマネージャーさんを介して口説かれて、いつの間にかこんなことに……。

原田 え! 結婚相手を間違えたわけではないですよね!?

中村 ぐふふふ、間違っちゃったのかもしれないです。

中村玉緒 撮影/伊藤和幸

原田 とはいえ、それも不思議な“ご縁”ですよね。

原田 勝さんの話に夢中で本題を忘れてました! この対談は、2年前に女性スキャンダルを起こした僕が、人生の先輩にお話を伺って学んでいく企画なんです。

中村 そんなことがあったの? 知らんかったわ。それじゃあ、私はどうしたらええんやろか?……

原田 今のままで大丈夫です! ちなみに玉緒さんは「反省」と聞いて何を思い浮かべますか?

中村 私はね、反省もするけど“今日のことは今日で忘れる”ようにしてるんです。例えば今日眠る前に「原田さんにおしゃべりしすぎたかな」と反省しても「自分の思うとおりにしゃべったんだからいいか」と切り替えて寝ます。反省しても明日に目を向けるのが、長生きの秘訣かもしれません。

原田 お〜! どんなこともその日のうちに整理するんですか?

中村 そうです。いいことも悪いことも引きずらない。たとえいいことがあっても、明日何があるかわからないでしょ。過去よりも現在と未来のほうが大切。私は明日、明後日、明々後日くらいまではこれをやると決めています。

なんでも自分で決めたほうが寝心地がいい

原田 すごい! マネージャーさんは玉緒さんのスケジュールを把握してるんですか?

中村 言わないです。自分で決めた予定のとおりに動くだけ。

原田 玉緒さんしか知らないんですね! マネージャーさんはちょっと大変そうですね(笑)。

中村 でもそのかわり、失敗しても私の責任なんです。なんでも自分で決めたほうが寝心地がいいんですよ。私は大好きなスロットに行って、今日のことを振り返るのが“睡眠薬”。主人みたいにお酒が飲めたらよかったんだけど。

原田 でも、お酒を飲めてしまったらもっとツラくなっていた可能性もありますね。

中村 そうですね。私は飲めなくていいのかも。

原田 ちなみに、この対談のあとのご予定は?

中村 スロットに行きます。

一同 (爆笑)

中村 もうポケットにお金も入れてるんです。勝負事だから勝ちたいですけど、負けても勝ってもスケジュールどおりにいけば万々歳。夜にパパの遺影の前で一日の出来事をお話しするのも楽しい時間です。

対談中の原田龍二(左)と中村玉緒(右) 撮影/伊藤和幸

原田 大切な夫婦の時間なんですね。少しお話を伺っただけでも玉緒さんの内にある強いエネルギーを感じました。やっぱり、勝新太郎さんの奥様はただ者じゃない!……僕もまた現場で玉緒さんとご一緒できるように精進します!

中村 こちらこそ、またどうぞよろしくお願いします。それでは、スロットに行って参ります。

原田 お気をつけて!

【本日の、反省】「今日のことは今日で忘れる」という玉緒さんの生き方は、誰にもまねできないですよね。世間的には“勝新太郎を支える妻”というイメージが強いですが、本当は勝さんに引けを取らないパワーを持っている女性だと思います。きっと人に言えない経験もたくさんされていると思いますが、「勝新太郎の妻でよかった」と胸を張って言える。その言葉にすべてが集約されていると感じました。最終回にふさわしいゲストに来ていただいて本当によかったです。ご愛読ありがとうございました!

中村玉緒(なかむら・たまお)●7月12日、京都府生まれ。松竹映画『景子と雪江』でデビューし、1954年に大映と専属契約、1965年に大映から移籍して現在に至る。映画やドラマで活躍する傍ら、明石家さんまにその才能を見込まれ、バラエティー番組にも数多く出演し人気を博す。私生活では1962年に勝新太郎と結婚、2児をもうける。今年3月よりInstagramとYouTubeチャンネル「中村玉緒の今日のことは今日で忘れる」をスタート!
原田龍二(はらだ・りゅうじ)●1970年、東京都生まれ。第3回ジュノン・スーパーボーイ・コンテストで準グランプリを受賞後、さまざまな作品に出演。司会者として『バラいろダンディ』(TOKYO MX)金曜日を担当。芸能界きっての温泉通、座敷わらしなどのUMA探索好きとしても知られている。現在、YouTubeチャンネル「原田龍二のニンゲンTV」を配信中!

〈取材・文/大貫未来(清談社)〉