配信サービスの充実で、自宅でさまざまな映画が楽しめるようになったけれど逆に、何を見ようか迷っちゃいません? 夫婦で、ひとりで「今、見るべき1本」をLiLiCoさんがセレクト。熱い推薦コメントとともにお届けします。
人生をさらに彩り豊かに
おうち時間の充実にぴったりなのが映画。でも最近見るのはテレビや韓国ドラマばかりで、映画はご無沙汰……という人も多いのでは?
「日本のテレビは面白いから! 私も一日中、楽しめますもん(笑)。でも映画には、たとえどんなおバカなコメディームービーでも、ホラーでも作品を通して何かを伝えたいという作り手からのメッセージがある。それをじっくり味わい、受け取るのが映画の醍醐味なんですよね」
と語るのは、年間400本以上は鑑賞するという、映画コメンテーターのLiLiCoさん。
「見終わった後に誰かと感想をシェアするのも大事で。夫婦でも友人どうしでもそこから話が広がりますし。私も主人と一緒に見るとやっぱり楽しい。自分が気づかない部分に気づけたりして」
映画の魅力はストーリーだけではない。
「私はインテリアが大好きだから、映画に出てきた家具とか小物を見て模様替えしたくなるし、登場人物のファッションをマネしたことも数知れず。それこそアクセサリーのつけ方から、ライフスタイルまでたくさんのヒントがちりばめられている。自分の中の好奇心が刺激されて人生が豊かになります」
また昔に見た映画を見直すこともおすすめ。
「人生経験とともに感性も変わっていくので、オトナ女子こそ、気に入った作品を繰り返し味わってみてください」
夫婦で楽しめる映画4選
笑いや感動を共有したり、じっくり語り合ったり。夫婦で見るのにおすすめの作品はこちら!
夫婦で語り合いたくなる感動作
■『アイリス』
アイリス・マードック(ジュディ・デンチ)とジョン・ベイリー(ジム・ブロードベント)は、1950年代、オックスフォード大学で出会った。あまり目立たない存在だった講師のジョンは、豊かな知性と魅力的な容姿を兼ね備えたアイリスに、一目見た瞬間から恋をする。やがて2人は結婚し、アイリスは一流の作家になる。それから40年後の現在。2人の絆はより深くなっていたが、ある日、テレビでインタビューを受けていたアイリスは、自分の話していたことを忘れ、言葉に詰まってしまう。精密検査の結果、アルツハイマーと診断される。
2001年/91分/イギリス/DVD セル&レンタルにてリリース中
監督:リチャード・エアー 出演:ジュディ・デンチ、ケイト・ウィンスレットほか
【LiLiCoさん推薦コメント】
これは実在したイギリスの作家の話。このリチャード・エアー監督の作品は大体90分で終わるんですが、毎回過不足なくいい映画を作るんです。そんな中でも『アイリス』は、夫婦の絆がテーマ。アルツハイマーで忘れていく妻を、ジム・ブロードベント演じる夫が守り続けるんだけど、たまらず彼がキレてしまうシーンに、私はグッときました(涙)。私がこうなっても、あなたは守れる? 夫婦でそんな会話が生まれてもいいんじゃないかな。
楽しくお互いを見直せる鉄板コメディ
■『ラブ・アゲイン』
まじめを絵に描いたような男のキャル・ウィーバー(スティーブ・カレル)は、高校時代に知り合った妻のエミリー(ジュリアン・ムーア)と可愛い子どもたちに囲まれ、安定した生活を送っていた。しかし、妻が男をつくり、離婚を考えていると知ったときから、彼の理想的な人生はもろくも崩れ去ることに。ひとりバーで寂しく過ごしていたある夜、遊び人ジェイコブ・パーマー(ライアン・ゴズリング)と知り合い、ファッションや酒の飲み方の手ほどきを受けて見事モテ男へと変身を遂げるキャル。しかし、心までは簡単には変えられず……。
2011年/118分/アメリカ/Blu-ray 、DVD 、デジタル配信にてリリース中
監督:グレン・フィカーラ、ジョン・レクア 出演:スティーブ・カレル、ジュリアン・ムーア、ライアン・ゴズリング、エマ・ストーンほか 発売元:ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント (C) 2011 Warner Bros Entertainment Inc. All Rights Reserved.
【LiLiCoさん推薦コメント】
夫婦で笑いたいときや、マンネリぎみな夫婦にもぜひ見てほしいコメディ作品。ただ笑えるだけでなく、人は変われるって思えたり、人間関係のつながり方の面白さや、子どもたちを通してティーンの頃の恋を思い出せたりと、見どころいっぱい! そして、出会ったころとすっかり変わってしまった旦那さんへの当てつけとして見せるのもヨシ(笑)。お互いに、恋したときの気持ちを忘れないことが大切だと、改めて気づかせてくれる作品です。
思わず人生を振り返ってしまう!?
■『ザ・ギフト』
新たな転居先で幸せな家庭を築く夫婦サイモン(ジェイソン・ベイトマン)とロビン(レベッカ・ホール)の前に、夫の同級生と名乗る男・ゴード(ジョエル・エドガートン)が現れた。再会を喜んだゴードから、2人に1本のワインが“ギフト”として贈られる。しかし、徐々にエスカレートしていくギフトに、2人は違和感を覚える。やがて夫婦のまわりに異変が起き始め……ついに2人は、ゴードが仕掛けた恐ろしいギフトの真相を知ることになる――。
2015年/108分/アメリカ/Blu-ray、DVD、デジタル配信にてリリース中
監督・脚本・出演:ジョエル・エドガートン 発売元:バップ(C)2015 STX Productions, LLC and Blumhouse Productions, LLC. All Rights Reserved.
【LiLiCoさん推薦コメント】
ホラーというと、脅かす系とか、心の中が寒くなるようなものがありますが、実はいちばん恐ろしいのは人間。この作品は、普通の人間ドラマとして見られるんだけど、人間の怖さを思い知らされるという意味で究極のホラー! あの隣人を演じているジョエル・エドガートンが監督も務めていて、描き方が抜群に面白いのよね。ネタバレしないようひと言だけメッセージを送りますね。あなた方夫婦が出会う前の、お互いの過去を知っていますか……?
ミュージカル映画の超名作
■『グリース』
舞台は50年代のアメリカ。高校生のダニー(ジョン・トラボルタ)とオーストラリアからサマーバケーションでアメリカにやってきたサンディ(オリビア・ニュートン=ジョン)は、ひと夏の恋に落ちる。夏が終わるころ、サンディの帰国により別れを告げた2人だったが、父親の仕事の関係で、ダニーが通うライデル高校に転校することに。突然の再会に喜ぶサンディだったが、実はダニーは、“T・バーズ”と呼ばれる不良グループのリーダー。グリースを塗りたくったリーゼントヘアに黒い革ジャン、スリムなブルージーンズといういでたちで……。
1978年/110分/アメリカ/Blu-ray、DVD、デジタル配信にてリリース中
監督:ランダル・クレイザー 出演:ジョン・トラボルタほか 発売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント
【LiLiCoさん推薦コメント】
ジョン・トラボルタといえば「サタデー・ナイト・フィーバー」だけど、こちらも名作! と、力説したいのが「グリース」。高校生役のキャストたちがだいぶ大人だったり、矛盾もありますが(笑)、いちばん脂がのっている当時のトラボルタが本当に素敵だし、サントラも素晴らしい! ちなみに当時8歳だった私は、この作品を見て黒のレザーを着こなすワイルドな女の子がモテると勘違い。女性像とはこんな感じだと思い、今の私がいます(笑)。
おんなひとりで楽しむ映画4選
誰にも邪魔されず、どっぷり浸かるならコレ!人生を豊かにしてくれる珠玉のラインナップです。
生きる素晴らしさを噛みしめられる傑作
■『歓びを歌にのせて』
ダニエル・ダレウス(ミカエル・ニュクビスト)は、天才指揮者として世界的に活躍し、大きな名声を得ていた。しかし、過酷な公演スケジュールとプレッシャーから、病に倒れてしまう。肉体的にも精神的にも限界を感じたダニエルは、第一線を退き、幼少時代を過ごした村へと戻る。廃校になった母校の小学校を買い取り、住むことにした彼だったが、故郷では過去にひどいいじめを受けていた。しかし幼少時とは名前を変えていたため、村人は彼がこの村の出身とは気づかない。それどころか、有名人が来たと大騒ぎ。そして村の聖歌隊の指導を頼まれる。
2004年/132分/スウェーデン/DVD(セル&レンタル)にてリリース中
監督:ケイ・ポラック 出演:ミカエル・ニュクビストほか
【LiLiCoさん推薦コメント】
これは、1億回ぐらい紹介している(笑)、私にとって不動のNo.1作品。36歳のときに出会ったんですが、当時の私は周りに気を遣いすぎていて。これを見て“自分の人生は自分のためにある”と思えました。この作品が特にうまいのは、キャラクターにリアリティーがあること。だから、共感できる部分がたくさんあるんです。それに、サントラにも入っている「ガブリエラの歌」は、歌詞もメロディーも本当に素晴らしい! ぜひご注目を。
知られざる音作りの努力に感動
■『ようこそ映画音響の世界へ』
映画音響にスポットをあてたドキュメンタリー。1927年に初のトーキー映画が誕生して以降、映画音響は今も発展し続けている。本作では、『キング・コング』、『ゴッドファーザー』、『ROMA/ローマ』など、名作の映像を使い映画音響の歴史を紹介。さらに、ジョージ・ルーカス、スティーヴン・スピルバーグなどの著名監督や、『スター・ウォーズ』のベン・バート、『ジュラシック・パーク』のゲイリー・ライドストロームといった映画音響界のレジェンドたちへのインタビューとともに、“音”が映画にもたらす効果と重要性に迫っていく。
2019年/94分/アメリカ/Blu-ray、DVD(セル&レンタル)、デジタル配信にてリリース中
監督:ミッジ・コスティン 出演:ウォルター・マーチほか
(C) 2019 Ain't Heard Nothin' Yet Corp.All Rights Reserved.
【LiLiCoさん推薦コメント】
映画紹介をしている中で、毎年その年の私の1位作品を聞かれるんですが、ドキュメンタリーを選んだのは初めて。ドキュメンタリーって、よほど興味があるテーマ以外はつまらないイメージですが、これは特別映画好きでなくても楽しめます。何しろ、映画音響の進化過程を、ジョージ・ルーカスやスピルバーグなどの超有名監督たちが語ってくれるんですから。それに、裏でどれだけ努力しているか知ることで、映画が何倍も楽しくなるはず!
古きよきスウェーデンに触れ
■『幸せなひとりぼっち』
愛する妻に先立たれ、哀しみにくれる日々を送る老人・オーヴェ(ロルフ・ラスゴード)。墓参りのたびに失意を募らせていたある日、隣の家にパルヴァネ(バハー・パール)一家が引っ越してくる。車のバック駐車、病院への送迎、娘たちの子守り……困惑するオーヴェのことなどお構いなしに、次々と問題を持ち込むうっとうしい隣人とはケンカばかりの毎日を送っていたが、それはいつしか日課となり、かけがえのない友情となる。そして、オーヴェの凍てついていた心は少しずつ溶きほぐされ、愛する妻との思い出を語り始めたのだった――。
2015年/116分/スウェーデン/Blu-ray、 DVD(セル&レンタル)、デジタル配信にてリリース中
監督:ハンネス・ホルム 出演:ロルフ・ラスゴードほか
(C)Tre Vanner Produktion AB. All rights reserved.
【LiLiCoさん推薦コメント】
既婚、独身にかかわらず、誰しもひとりになるときがきますよね。そのときに、どう生きるかというのを問う作品。原作は日本でも知られているベストセラー小説ですが、ハンネス・ホルム監督がインタビューで「これは僕自身の話」と言っていたとおり、彼のフィルターを通して丁寧に描きあげた、優しさに満ちた物語です。昔のスウェーデンの生活スタイルがとてもわかりやすく描かれているので、北欧好きの人にもおすすめです。
熟年女性のビタミン映画
■『また、あなたとブッククラブで』
40年連れ添った夫を亡くしたダイアン(ダイアン・キートン)。複数の男性たちとの関係を楽しんでいるビビアン(ジェーン・フォンダ)。離婚のトラウマに苦しんでいるシャロン(キャンディス・バーゲン)。熟年夫婦の危機に直面しているキャロル(メアリー・スティーンバージェン)。長年の友人である4人は、同じ本を読んで語り合う「ブッククラブ」が恒例の楽しみだった。そんなある日、官能小説「フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ」を読むことに。彼女たちはそのスキャンダラスな文面に感化され、気持ちも行動も大胆になっていく。
2018年/104分/アメリカ/デジタル配信にてリリース中
監督:ビル・ホルダーマン 出演:ダイアン・キートンほか 発売元・販売元:キノフィルムズ/木下グループ (C)2018 BOOKCLUB FOR CATS, LLC ALL RIGHTS RESERVED
【LiLiCoさん推薦コメント】
熟年女性4人組を、ダイアン・キートンなど、ハリウッドを代表する豪華女優たちが演じています。彼女たちは世間からしてみたら、恋愛も終わっているでしょうし、老後を考えるような世代。でも「フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ」を読んでみんな大興奮するっていう、めちゃくちゃ面白い映画です。4人の女性たちのキラキラした姿に、「ヨシ、私も!」と思えますよ。ぜひワインと、美味しいつまみを用意してご覧あれ。
1970年スウェーデン・ストックホルム生まれ。 TBS『王様のブランチ』の映画コーナーほか、多くの番組に出演。 アニメの声優やナレーション、女優などマルチに活躍する映画コメンテーター。バッグやジュエリーのデザイン、プロデュースも手がける。
(取材・文/當間優子)