中学時代の大越悠莉奈容疑者

「以前にも駐車場でママ! ママ! と泣き叫ぶ長女の姿を見たことがあります。あのときに何かできていれば……」

 近隣住民は肩を落とす。

 炎天下の車内に1歳の次女を放置し死なせたとして、千葉県警は7月23日、八千代市に住む自称・飲食店従業員の大越悠莉奈(おおこしゆりな)容疑者(25)を保護責任者遺棄容疑で逮捕した。

車の中で寝ている容疑者がたびたび目撃されていた

 容疑者は3歳の長女、亡くなった次女の三櫻音(みおん)ちゃんと3人で暮らすシングルマザーだった。

「事件があったのは7月22日。容疑者は都内での夜勤仕事を終え、知人宅に預けていた2人の娘を迎えにいった後、自宅マンション前に止めた車内で3時間ほど仮眠しました。

 そして午前10時ごろ、長女だけ自宅に連れていき着替えをさせた後、30分ほどしてから車内に放置していた三櫻音ちゃんを迎えにいくと、ぐったりしていた」(テレビ局記者)

 その後、「娘の意識がない」と容疑者から119番通報があったが、間もなく三櫻音ちゃんは熱中症で死亡した。

 警察の調べに対し容疑者は「車のエアコンはつけていた」と供述している。

 事件当時、千葉県は気温が30度を超える真夏日だったという。

 幼い娘を炎天下に放置して死なせた容疑者だが、普段はどんな様子だったのか──。

 同じマンションの住民は、

「この辺では珍しいくらいおしゃれで美人で。よく娘さんと一緒に買い物に出かけているのを見かけました。すれ違うとペコリと会釈もしてくれて感じのいい人ですよ」

高校時代の大越悠莉奈容疑者(本人フェイスブックより)

 子どもと一緒にいる姿は度々、目撃されていた。

「お子さんも小ぎれいな服装をさせてもらっていて、虐待を受けている様子ではありませんでしたね」

 ところが、こんな気になる話も……。

「今回の事件のように朝、彼女が車の中で寝ているところは何回か見たことがあります。娘さんが一緒だったのかまでは見ていませんが……」(同・住民)

長女が泣きながら母親を探し歩いていた

 居住する自宅マンションは築23年の3LDK。賃料は月9万円ほどだという。

 さらにはネグレクトを疑わせるような証言まで出てきた。冒頭の近隣住民が語る。

「今年の5月ごろ、マンションの中で長女が泣きながら母親を探し歩いていたんです。朝の9時くらいでしたね」

 同じマンションに住む女性が保護して警察に通報し、母親の行方を捜したが……。

「なんと、不在と思っていた母親が、実は家で泥酔して寝ていたんですよ。娘を外に置き去りにしたまま、インターホンの音にも気づかなかった」

 炎天下、長女は裸足のまま放置されていた。警察はネグレクトの疑いがあるとして児童相談所に通告をしたが、それでも今回の事件を防ぐことはできなかった……。

容疑者の母親もシングルマザー、兄は有名な不良

 千葉県出身の大越容疑者。地元の同級生は彼女について、

「人柄もよくてよく笑う、優しい子でしたよ。運動神経抜群で、ソフトテニス部ではエースでした」

ソフトテニス部では大会入賞もしていた

 部活の顧問は厳しい先生だったが、反抗する様子もなかったという。ただ……。

「決して友達の多い子ではなかった。実家では父親が病気で早くに亡くなり、母親も何をしていたかわかりませんが、見たことがないくらい常に不在。基本的に祖母しか家にいなかったようです。

 私服はいつも同じ。もしくは学校のジャージでした」

 容疑者の母親も同じくシングルマザーで、孤独な家庭環境だったようだ。さらに、

「彼女には兄がいるのですが、地元では有名な不良で、逮捕歴や少年院に送られたこともあったそうです。

 ケンカや万引きをする仲間のグループといつも一緒にいたようで、生徒の間では恐れられている存在でした」(同・中学の同級生)

 高校時代に容疑者と飲食店でアルバイトをしていたという女性も、

「仕事はしっかりやっていて頼もしかった。ただ何となく周りとノリがズレていて、友達のいない子でしたね」

 学校では友人が少なく、頼れる家族もいない。周囲には孤独な学生生活を送っていたように映っていたようだ。

暴力団関係の男性と交際していたことも

 大人になっても、負のスパイラルからは抜け出せなかった。最近の容疑者を知る知人男性によると、

「県内の公立高校を卒業した後は、都内のキャバクラで働いていました。その後、娘2人を出産。

 娘の父親なのかはわかりませんが、一時期、彼女は30代半ばの暴力団関係の男性と交際し同居していたそうです。その男性は昨年、高齢者からお金を騙し取ったとして、詐欺の疑いで逮捕されています。その後の行方は不明ですが、彼は多額の金銭トラブルを抱えていたようです……」

20歳ごろ。右手の薬指に指輪をはめている(画像は反転。本人フェイスブックより)

 周囲に容疑者を支えてあげられる人はいなかったのか。

 実家の母親に電話をかけてみたが、何度かけてもつながらなかった。

 今は別の場所でひとり暮らしをしている祖母も訪ねたが、

「最近はまったく会っていなくて……」

 と疎遠ぎみな近況を語った。

 幼い娘を死なせた容疑者の責任は重い。だが、このような悲劇を起こさないためにも、容疑者のような孤独なシングルマザーは家族や友人、近隣など社会で支えていく必要があるだろう。