東京五輪ソフトボール代表・後藤希友選手の金メダルをかじったことが大きな騒動となった、河村たかし名古屋市長。
「『最大の愛情表現だった』と言い訳し、のちに謝罪もしてますが、これはダメですよね。ましてこの1年半にわたり、“接触”に最大限の配慮を続けているなかでの、マスクを外して唾液が確実につくだろう行為。カキンと歯にあたる音も聞こえました。メダルの授与そのものも、本人自らが首にかけるというスタイルで配慮を行なっているような状況です。河村市長の行動以前に、そこに何の疑問を抱かずに、よかれと思ってやってしまうところが最大の問題点です」
と、あるテレビ局の報道記者は、河村市長の行動について語る。
「南京大虐殺はなかった」発言
この行為に対し、後藤選手が所属するトヨタ自動車は、「アスリートへの敬意や称賛が感じられない。不適切かつあるまじき行為」と、不快感をあらわにするコメントを発表。その後、河村市長はトヨタ本社へ謝罪に向かうも、アポ無しだったこともあり、社内に入ることができず、車の中からお詫びをしたという。前出の記者は言う。
「この行動も、本質的なことを何も理解できていない証拠ではないでしょうか。周囲にも、市長にアドバイスできる人間がいないのでしょうか」
今回の件に限らず、河村市長は2019年に開かれた『表現の不自由展』のある作品に「日本人の心を踏みにじるものだ」と抗議し、展示の撤回を求め座り込みをした。その2年前には「南京事件はなかった」と、日中戦争中の1937年に起きた南京大虐殺を否定し騒動になった。なぜこれまで失言や問題行動を起こすのだろうか。
「そのつど、まったく学習できないところは本当に驚きですね。問題視される行動を繰り返し、一定以上の地位にある人の周りにはイエスマンが多いのか、世間に老害と言われようがなんだろうが、残念ですが耳に入らず、修正されることはほぼないかと思います」(ジャーナリスト)
失言と五輪といえば、かつて五輪の組織委員会会長をつとめた、森喜朗元総理もあまりにも鮮烈な印象を残す。前出のジャーナリストが続ける。
「聖火ランナーの『有名人は田んぼを走ったらいい』というのは、誰もが開いた口がふさがらない発言でした。さらに、会長辞任の決め手となった、『女性は話が長い』という女性蔑視発言。過去にも冬季五輪で浅田真央選手の演技について、『あの娘、大事なときには必ず転ぶんですよね』と軽率な発言もありました。やはり、こちらも学習できない人ですね」
会長辞任後も、黙っていられないのか、“新作”が飛び出してしまった。五輪開会式で聖火リレーの最終走者に大坂なおみが選ばれたことについて、「松井秀喜のような“純粋な日本人がよかった”」と発言したと、アメリカのメディアに報じられてしまった。
日本人のことを“チャイニーズピープル”
失言の多い政治家というと、麻生太郎財務大臣を思い浮かべる人も多い。前出の記者が言う。
「開会式の演出を担当した小林賢太郎氏が、ホロコーストをネタに取り入れていた過去が問題視されましたが、そのときに、麻生さんの過去の『ナチスに学んだらどうか』という発言に再び注目が集まりました。それに対しては、当時、不適切という指摘を受け撤回したと説明していましたが、昨年の『呪われた五輪』発言などもあり、思ったことを口にしないか、この先も心配です」
そして、トドメはバッハ会長ではないだろうか。
「来日して橋本聖子会長との会談で、日本人のことを“チャイニーズピープル”と発言し、世界中に発信されました。アメリカのメディアは“オリンピックサイズの失言”とタイトルをつけて報じたほど。その後も、コロナの感染状況がよくなったら有観客に切り替えてほしいと言い、アルマゲドン(人類滅亡)が起きない限り中止はないと発言した委員の発言など、もうめちゃくちゃです。ついには“日本人の9割が五輪を視聴している”といい、“ほかにやってるテレビがないからだろ!”と反発の声がありました」(前出)
無事に閉会式を迎えることができたとしても、分別のできない権力者たちの失言が五輪の後味を悪くする。命がけでプレーをした選手にだけは、これ以上、迷惑をかけてもらいたくない。
〈取材・文/渋谷恭太郎〉