誰もが一度は食べたことがあるであろうロッテの「コアラのマーチ」。子どもから大人まで、みんなから愛される、まさに国民的お菓子の代表でもあるが、そんなコアラのマーチに“異変”が…!?
なんと<マスクコアラ><オンラインコアラ>、ウーバー○ーツ!? な大きなバッグを背負った<出前コアラ>など“世相”を反映した絵柄があると、SNSでジワジワと話題を呼んでいる。
気になって商品を買ってみると、目がキラキラの<少女マンガコアラ>に、三体のコアラが描かれた<分身コアラ>、もはやコアラの形状を無視した<にしきあなごコアラ>に、数字を頭に浮かべる<円周率コアラ>…など、ナナメ上をいくコアラが続々!
過去には<まゆ毛コアラ><盲腸コアラ>が女子高生の間でブームになったが、また新たなブームの予感!?
そもそも、コアラのマーチの絵柄はどのように誕生しているのだろう。実は新たに生まれるコアラ(の絵柄)もいれば、“オーストラリアの森”へ帰ってしまうコアラもいるようで……。“真相”を発売元のロッテに直撃!
新たな生活様式を反映
ボツになった○○コアラも
「今年の3月に<マスクコアラ><オンラインコアラ><キャンプコアラ><手洗いコアラ><出前コアラ><旅行コアラ>の6種類が新たに仲間入りしました。いずれも今の生活様式やトレンドを意識したものです」
そう話すのは、株式会社ロッテ ブランド戦略部の江幡辰也さん。絵柄が決まってすぐに商品化されるわけではなく、ビスケットにプリントする設備の発注にも時間がかかるため、約半年前の昨年7月〜9月ころには新しい絵柄に向けて動き出していたという。
「昨年の夏ごろは、新型コロナウイルスの影響で緊急事態宣言などもあり、我々の働き方も含めて生活スタイルが変わってきたことを実感したタイミングだったので、そういった切り口の絵柄を考えようという流れになりました。
ほかにも<うがいコアラ>なんて案もあったのですが、ペッと吐き出したりするところは、ちょっと絵が汚らしく見えそうということで、不採用となりました」(以下、江幡さん)
新しい絵柄は、江幡さんを含めた「コアラのマーチ」のプロジェクトメンバー数名によって考案されている。
「まずは2〜3案ずつアイデアを出し合って、ディスカッションしたうえで決める流れです。ホームページにあるバーチャル工場見学で見ていただけるとわかるのですが、コアラの絵柄はカラメルでビスケット生地にプリントされています。滲んだりすることもあるので、細かい線や密集したものは描けません。なので、ある程度、余白がある中で表現できる絵柄を考えるようにしています」
コアラのマーチが発売されたのは、遡ること1984年。37年前だ。発売当初は12種類だった絵柄は、一時は500種類までに膨れ上がっていたという。
「12種類からスタートし、年々新しい絵柄が増えていった結果、2015年には500種類まで増えました。ただちょっと増えすぎてしまって(笑)。“なかなか目当ての絵柄に巡りあえない”といったお客様の声もいただいたので、その年に『選抜総選挙』なるものを実施し、365種類にまで減らしました。そこから毎年、365種類を維持しながら約1年に1度、入れ替えたりしています」
……ということは、新しく絵柄が入ったぶん、密かになくなっている絵柄もあるってこと!?
「そうなんです。我々の中では一応、“オーストラリアの森に帰る”という設定ですが(笑)。減らす絵柄の基準はこれといってないのですが、時代に合ってない絵柄だったり、もう流行ってないもの、あとコアラのマーチはライセンスアウトもしていてお菓子以外のグッズもあるのですが、そういうところで使用頻度の少ないコアラは、森に帰ってもらおうと入れ替えをしています」
ちなみに今年、森に帰ったコアラは?
「例えば、2020年はうるう年だったので、<うるう年コアラ>がいたのですが、2021年は違うということで入れ替えました。あとは『謎のコアラのマーチ』という商品の中に入っていた<探偵マーチ><怪盗コアラ>は、商品がなくなった関係で絵柄もなくなりました」
いなくなったコアラたちには二度と会えないのか聞いてみると、
「戻ってきたケースはないのですが、チャンスがあれば今後も戻ることはあるかもしれません。もしお声をいただければ、復活もあるかなと思います」
とのこと。これらの絵柄は、名前などは非公表ではあるものの、発売当初から専門のデザイナーが手がけているという。
実は「レア」な絵柄はない
そんなコアラのマーチ、やはり気になるのが「レア」な絵柄。やっぱりレアな絵柄は、そもそも生産される数が少ない? と思いきや、意外な返答が。
「基本的には、365種類の絵柄はすべて同じ割合でプリントされているんです。コアラのマーチは、まず、ビスケット生地にペタペタとカラメルでコアラの絵柄をプリントしていき、それを焼いたものにチョコレートを入れ、包装するといった工程なんですが、その際、絵柄はランダムに選ばれ包装されていきます。なので、実は“レア”な絵柄というのはないんです」
なんとも驚きの答え。1988年ころには、女子高生を中心に<まゆ毛コアラ><盲腸コアラ>もブームとなったが、
「当時は絵柄の数も24〜48種類と母数も少なく、今よりも出る確率は高かったはずなんです。それでも女子高生を中心に“レア”な絵柄として話題となったと聞いています」
そもそも、絵柄に名前がつくようになったのも、そのブームがきっかけだったという。
「当初はコアラの絵柄を単純にプリントしただけで、〇〇コアラという名前はついていませんでした。でも<まゆ毛コアラ>や<盲腸コアラ>といったお声をお客様からいただいて、弊社としてもそれぞれ絵柄に名前をつけて管理していきましょうという話になったんです」
SNSのない時代に、口コミだけであれだけのブームを巻き起こし、会社側にも影響を与えてしまうとは、驚きだ。
「まゆ毛コアラは、もともとラッパを吹いたコアラの“シワ”がまゆ毛としてとらえられて<まゆ毛コアラ>となりました。盲腸コアラも転んでできたお腹の傷が盲腸の手術痕のように見えるからそう呼ばれるようになり、どれもお客様の見間違いから話題となったんです。
口の横にできたシワが見間違えられて<鼻血コアラ>なんて呼ばれるようになった絵柄もあります。名前をつけるようになったのも、お客様に気づかせていただいた結果なんです」
消費者の声とともに、歩み続けてきたコアラのマーチ。可愛いだけでなく、遊びゴコロもたっぷりなところが、子どものみならず、大人からも愛され続ける理由の一つかもしれない。
「コアラのマーチはビスケットの中にチョコレートが入っているので、夏場でも溶ける心配がありません。お子さんはもちろんですが、しばらくコアラのマーチを手にしていないという大人の方にも、ぜひ絵柄を楽しんでいただければと思います」
今後、コアラはどんな変化を遂げるのかーー。見届けていきたい。
【Column】
好評は○○味!
「2002年に発売した<ミルクたっぷりプリン>味が好評でした。CMも流していたので、その効果もあったのかなと思います。いろんな味を出していますが、プリン系は好評なんです。ホワイトチョコレートとビスケットの相性がいいのかもしれません」
パッケージのここに注目!
「ロッテとして、オーストラリアコアラ基金という、コアラの保護を研究する機関に協力しています。コアラのマーチ全商品に、そのオーストラリアコアラ基金のマークが入っています。ぜひ、こちらにも注目していただきたいです!」
CMを見なくなった?
ロッテコアラのマーチ♪のフレーズでおなじみのCM。最近、見なくなったような……。
「今でもCMは流れています。ただ、全国の主要な時間帯で流しているわけではなく、お子様のアニメ番組の間に流しているんです。昔ほど見なくなったと思われるのは、そのせいかもしれません」