「宝塚時代からずっと走ってきました。とくに('14年の)宝塚100周年以降の自分は、少しゆっくりしたかった。そういう意味で昨年、自宅で過ごす時間が増えたことで家の中の掃除をしたり、断捨離したりする時間を持つことができました。
でも、そんな余裕のある気持ちでいられたのは最初だけ。舞台に立てるということが、私にとってどれだけ大切なことかを痛感する期間にもなりました」
'09年に宝塚歌劇団の星組トップスターとなり、6年にわたり男役として見るものを魅了してきた柚希礼音。'15年の退団公演の際には、劇場前に約1万2000人ものファンが集った。
退団後もさまざまなミュージカル作品に出演。先日も3年ぶりの再演となった『マタ・ハリ』の幕が下りたばかり。
「自分が真ん中(主演)で舞台に立つのは1年半ぶりくらい。主役ということもそうですが、舞台に立つこと自体もこわかったですね。宝塚時代も毎回、毎回、こわくて。舞台稽古でステージから客席を見るたび“ここに立つのか”と足がすくむ思いでしたが、今回も心臓が縮み上がりました。久々に見てくださる方に“いいものを見せなくちゃ”と、勝手に自分にプレッシャーを与えて緊張していましたね」
稽古を何度重ねても「足りない」という気持ちを拭えなかったと本音を語ってくれた柚希。新型コロナウイルスの影響で昨年より自宅からリモートで歌の稽古をしたり、ひとりコツコツ練習することが増えた。
「“1日の舞台は、100日の稽古よりためになる”みたいなことをよく聞くんですけど、ほんとうにそのとおりだなと思いました。1回の舞台でどれだけ学ぶことが多いか」
幸せだと感じられるように
改めて「ステージが好きだ」と確かめることができたという彼女のソロコンサート『REON JACK 4』が9月11日からスタートする。3年ぶりとなるコンサート。
「『REON JACK 1』は宝塚を退団して1年ほどたって“なんだか遠くに行っちゃった気がする。でも、そんなことなかった。近かった”ということをコンセプトに作りました。
パート2や3は、内容をさらに洗練させていった。今回は、“あったかい”をテーマにみなさんが知らぬ間に抱えている緊張や葛藤、我慢を忘れて“幸せだな”と思っていただけるものを目指しています」
迫力のある歌声にハイレベルなダンスと、見どころいっぱいのステージ。すさまじい運動量の驚愕のパフォーマンスを軽やかに披露できる理由を聞くと、
「コンサートのたびに客席のみなさんを幸せにしたいと思うんです。でも、その100倍くらいの幸せをみなさんがくれる。愛の飛ばし合いが起こるのがコンサートだなと思います。
柚希礼音をすべてさらけ出し、心を裸にすることで、ファンのみなさんとの距離がぐっと近くなる『REON JACK』は、私と客席のみなさんとでなにかキャッチボールをしている感じがするんです」
キツかったダンスに挑戦
宝塚時代に相手役だった夢咲ねね、音楽大学の声楽科を卒業した男性ボーカルグループ・LE VELVETSの佐藤隆紀、西川貴教など豪華な日替わりゲストが出演する今回のコンサート。
「それぞれ過去の作品で共演したことのある方々で、みなさんお忙しいし、無理だろうなと思ってお願いしたら出演してくださることになりました。コラボするからには最高のものを作りたい。
前回も、あの方とも、この方ともと考えて構成したら、途中で“もう無理。前と違うんだ、年が”と思うようなステージになって(笑)。アンコールでも、踊っていましたから。
ただ、やっぱり、私の原点は踊りというところがある。3年前もキツかったタンゴを今回も披露する予定です。限界に挑戦しますよ(笑)。
でも、今回のステージのいちばんのコラボ相手はファンのみなさん。エンタメが心の栄養になるんじゃないかと思っていますので、いっしょにほっこりできたらいいですね」
●ソロコンサート『REON JACK 4』9月11日の東京・TOKYO DOME CITY HALLを皮切りに、北九州、大阪で開催。
●ニューシングル『PARTY!』発売中
〈ヘアメイク/藤原羊二 (UM) スタイリスト/山本隆司〉