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 41歳で4000万円貯めた「ミニマリスト」の森秋子さん。不要なモノを捨て、生活をシンプルにするだけで貯金が増えたそう。ケーキは人数分買わないなど、お金との上手な付き合い方は必見!

“本当に欲しいモノ”に囲まれればお金は貯まる

「ミニマリストっていったい何?」と疑問に思う人も多いだろう。「ミニマル」とは「最小限」という意味。そして、「ミニマリスト」とは本当に必要なモノだけに囲まれて、ごくごくシンプルな暮らしをする人のこと。

 ミニマリストとしてブログで発信し、書籍『ミニマリスト、41歳で4000万円貯める』も好評の森秋子さんは、20代半ばで結婚したのち都内に中古マンションを購入し、30歳前にして住宅ローンを完済。さらに現在4000万円もの貯蓄があるとか。

 特に質素倹約に励んでいるわけではないというが、どうやってそんなに貯蓄を増やすことができたのか?そもそも“シンプルに暮らすこと”と“お金を貯めること”にどんな関係があるのだろうか?

 20代後半のころの森さんは、子育てと家事と学業(専門学校に通っていたため)に忙殺されていた。やらなくてはならないことが山積、さらに、お金のやりくりや節約に頭を悩ませるなかで、夫とは毎日ケンカばかり。このままでは家庭崩壊してしまうかも……と思った時期に、行き着いたのがシンプルなミニマルライフだったという。

ミニマルライフは自分が本当に欲しいものは何か、自分が本当にしたいことは何かと、心の奥の素直な気持ちに耳を傾けることから始まります。そうすると、不要なモノが何かがはっきり見えてきます。

 私の場合、モノを大量に買う生活から解放され、その結果、自然にお金が貯まりやすくなりました。経済的に余裕ができたことで、夫とギスギスしていた日々に安心感や優しさを取り戻すこともできました」(森さん、以下同)

 森さんがたどり着いたミニマルライフで大切なことは「お金に向き合うこと」だという。たしかに、お金をたくさん持っていることは魅力的なことだが、満足度が高く豊かな人生を送るためには、お金の量よりも使い方のほうが重要だ。しかも、森さん自身はお金の使い方を見直したことで結果的にお金を貯めることにも成功している。つまり、大切なのは、節約以上にお金の使い方の意識を変えることかもしれない。

 その13のポイントを教えてもらった。

1. 不要品は徹底して持たない

 ミニマルライフを始めるにあたって最初にすべきこと。それが“捨て活”。つまり、不要なモノを見直し、手離すことだ。

「不要なモノにあふれた家は空気がよどみ、本来なら貯まるべきものすら貯まらない」

 と森さんは言う。

「捨て活によってスッキリした空間を手に入れるのは爽快です。窓を開けたときに、サーッと風が通るのを感じられる清々しい家を目指しましょう」

 モノが少なくてスッキリした部屋は、ただそれだけで、キレイやおしゃれなどと褒められることも多い。そう、捨て活に成功すれば、お金をかけずに“褒められ部屋”をゲットすることが可能なのだ。

 ターゲットは、家じゅうの死蔵品。例えば、長らく出番のなかった衣類は地域の古布回収へ。洗面台の下で眠っていた使いかけの洗剤類は、トイレ掃除などの機会にどんどん使ってしまうのがおすすめ。捨て活というとマイナスのイメージを持つ人もいるかもしれないが、むしろ、自分を生かすための“生き活”だと森さんは言う。

「身のまわりがきれいになってフットワークが軽くなると、何歳になっても変化できる可能性を感じられます。捨て活はいつでも誰でもできる“生き活”なんです」

2. 手持ちの服は30着以上はいらない

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 いざ“捨て活”となったとき、恐らく多くの女性がつまずくのが洋服だろう。断捨離しなくては、と思ってはいても、何を捨て、何をとっておけばいいのか判断がつかない、という人も多いのでは?

 現在、森さんのクローゼットには上下5~7セットの組み合わせで30着ほどあるだけ。その判断基準は……。

「まずは、すべての洋服をクローゼットから引っ張り出してください。大抵の人はトップスが多くて、ボトムスが少ないはず。そしてボトムベースでトップスをコーディネートして、約1週間分の7セットを選びます。これが最強の組み合わせになるので着まわしは考えません。

 このようにして仕事用、冠婚葬祭用、遊び用などとTPOに応じて上下を考えれば、全部で30着ほどに落ち着くはず。それ以外は処分してしまえば、クローゼットもスッキリします」

 ボトムベースで服を選ぶというのが目からウロコだ。森さんにとって、服は消耗品。お気に入りの上下を着たおして、それらがくたびれたら、また最高のセットを作ればいい。だからこそ、なんとなく服を買うことが減るという。

3. 服のお手入れを習慣化して衝動買いしない

 服をたくさん持つということは、モノを大事にしなくなることにもつながる。毛玉だらけの服を着ていると、街で素敵な服を見かけるとつい買いたくなってしまう。

「私は帰宅したら必ず洋服ブラシをかけるようにしています。そのおかげで一着一着に対する愛着が湧き、次から次へと新しいものが欲しくなる“負の連鎖”から解放されて、無駄遣いをしなくなったのです」

 手入れが行き届いている服は(靴やバッグも)、値段にかかわらず、素敵に見えるものだ。

4. 今必要ないモノは未来でもいらない

 リサイクルショップに不用品を売る目的とはなんだろうか。もし片づけるだけだとしたら、0円でもいいので引き取ってもらうほうがいいと森さんは断言する。

「なぜならモノを減らすことはとてもエネルギーを使います。そのエネルギーが自分にあるうちに、処分をスピーディーに行ったほうがいい。でも、少しでも高く売りたい、元を取りたいと欲を出すと、たちまち処分のスピードがダウンしてしまいます。フリマアプリも同様で、かなりマメな人でないと早く処分できません」

 今必要でないモノは未来ではもっと必要なくなる、今必要でないモノを残すと未来の負担になると森さんは断言する。

「今は『買う』より『捨てる』ほうが難しくて、値段も高い。粗大ゴミを出すことは1人では難しいですし、ゴミ袋が有料の地区も増えています。モノにいっぱい囲まれる暮らしは、もはやぜいたくではありません。反対にスッキリとした空間で暮らすことのほうがぜいたくという感覚に変わっています」

 森さんはモノが少ない暮らしをしたら、モノを持ちすぎていた時代には重かった心身がフワッと軽くなったそう。今必要なモノだけを買う。単純なことだが、これも無駄な出費を減らして貯金を増やす大事なコツなのだ。

5. 「何歳だから~~すべき」という考え方は持たない

 親の世代の生き方や価値観に今の自分の生活を当てはめて考えないことも、シンプルライフを送るコツ。特にかつての「世の中総中流」という金銭感覚は役に立たないと心得よう。

 昭和の常識は平成の非常識、令和の今は旧来のステレオタイプな考え方を押しつけると、一種の暴力と受け止められてしまうかもしれない。

 そんな価値観のアップデートのためにおすすめなのが、あえて自分とは関係のなさそうな情報を仕入れてみること。例えば、10代向けの雑誌や記事に目を向けてみるのがおすすめと森さんはいう。

「若い子向けの本を読むと、新しい気づきがあってとても面白いのです。その反面、大切にしているものは自分が若いころと変わらないと感じます。こんな自分の心の揺れを観察できますし、それを大切に思えるのがいいところ」

「もう歳だから」と考えたり、周りの人と比べたりせず、自分の気づきに正直に生きること。それがミニマルに暮らすコツかもしれない。

6. 贈答品は“現金”
モノで贈るにこだわらない

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 昭和や平成の時代にはマストだったお中元や御歳暮を贈る習慣。これらは主にモノのやりとりが多いが、もし相手にとってそれほど欲しくないモノを贈ったら、置き場所や使い道に困ることもある。

「モノのやりとりはなくしてもいいと思っています。私はお茶を習っていますが、お茶の先生は2人暮らしなので、たくさんの頂き物は使い切れないのではと思いました。だから、現金にさせていただくことを先生に相談し、以来現金をお渡ししています」とのこと。

 もしモノのやりとりをやめることで付き合いが切れるのであれば、それはそれで仕方がないとキッパリ。

「反対に『あなたがくれる桃を楽しみにしている』と相手が言うのであれば、そのトキメキを大切にするべきでしょう。もし、桃を贈るための予算がなければ『今年は贈れないけれど、来季は贈りたいです』など、臨機応変に対応するのもいいと思います」

 相手の状況を慮りながらも、世間のやり方と同じにすべし、という既成概念から解き放たれる。その度ごとに調整すると無駄がないし、やりとりも楽しくなる。

「現金は置き場所にも困らないし、いつか必要になるときがくる。相手が欲しがらないモノにお金を使うより、生きたお金の使い方だといえます」

7. 世間体ファーストなお金のやりとりはいらない

 1500万円まで非課税となった子や孫に贈る教育資金。親世代にお金がないのならば、祖父母の出番となりそうだが……。

「節税対策とか金銭的な余裕がある場合でも、それが相手にとっていいこととは限らないし、自立を妨げるリスクになるかもしれません。まずは“自分の財政ファースト”でいきましょう。“自分自身を大切にする姿勢”を貫くことが、子ども世代、孫世代の自立を応援する財産になると私は考えます」

 現在、それぞれの家計の格差は思っているよりも大きく、比べだすとキリがない。誰かと比べず、自分の家計を大切に考えて行動することが安心できる暮らしにつながるという。

「例えば、嫁の実家が孫に500万円あげたからわが家も出さないと格好がつかないなどと、見栄を張る必要もありません。自分のやり方と相手のやり方は違って当然。お金を出せる人が出したいだけ出せばいいのです」

 祖父母なら普通はお金を出すべきなど、“普通”という名の呪縛にとらわれた“世間体ファースト”はやめよう。可愛い孫だからこそ、相手を思う気持ちや真心を伝えることが大事だ。

8. 自分を大切にして老後のお金に不安がらない

「節約などをしすぎてお金に関してストレスをためている人ほど、お金はあの世に持っていけないと言うような気がします。私の場合、あの世に行くまではお金が必要と考えて大切にお金を使うことを心がけています

 節約すると思うと我慢からストレスがたまるが、大切に使うと思うとゆったりした気持ちになる。お金の使い方は生き方そのもの。乱暴に使えば乱暴な暮らしになり、お得ばかりを求めると損得勘定に追われる暮らしに。

「自分を大切に生かすためにお金を大切に使うことを常に意識すれば、それだけで無駄買いの習慣は激減するはずです」

 また、老後のことなど、未来の不確実なことを思い悩むのもキリがない。生活をミニマルにしておくと「これでやっていけそうだ」、「なんとかなる」と実感できることが増えるはずだという。

9. 「0円デー」を作って毎日買い物しない

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 スーパーの夕方に出る半額食材など、お買い得品をたくさん買って結局使い切れずに捨ててしまう……。そんなことはないだろうか?

「お買い得とはいっても出費は出費。買わなければ0円ですむので、本当に必要なものだけ買うべきです」

 店に行く前に買い物リストを作っていき、たとえ半額シールがついた品でも、リストになければ買わないでおくべし。

「また、何も買わない“0円デー”を設けるのも効果的です」

 その日は冷蔵庫に入れっぱなしの食材などに目を向け、それだけで料理を完成させる。1日目を乗り切ったら2日目にもチャレンジ。今あるものだけで工夫すれば大丈夫という自信がついてくるのだ。

10. 「今ならお得」の誘惑に負けない

 買い物などでポイントを貯めるポイ活が流行っているが、還元率の高い日やお得なネットストアを検索するのはひと苦労だ。

 ポイ活をするなら徹底的にやらないと、妥協して高い買い物をしたり、決済アプリがスマホに増えすぎて、どこで何を使ったかわからなくなってしまったりというデメリットも。

「特に電子マネーは、『今なら○円お得』などのキャンペーンがありますが、最初の期間だけに適用されることが多いのです。最初は大盤振る舞いだったのに、結局ポイントや新しい仕組みを使いこなせないままキャンペーンが終わることになりがちです」

 もしポイントを貯めるのならば“瞬間ポイ活”がいいと森さん。

「私は高額なPCを買ったときにアプリでポイントを貯め、すぐにポイントを消費してアプリを消去しました」

11. 店の人の目を気にして必要な個数以上を買わない

 森さんの友人である裕福な女性のお宅に、子どもと2人でお邪魔したときのこと。帰りに、子どもにケーキを買ってあげたいと言われ、ケーキ屋に立ち寄った。そこにはおいしそうなケーキがたくさん並んでいたという。

「女性に『あなたとご主人はケーキを食べる?』と聞かれたので、『夫は甘いものを食べませんし、私はおいしいものをたくさんいただいたので、もうお腹がいっぱいです』と正直に答えました。するとその女性は、子どものために1個だけケーキを買ってくださいました」

 普通ならば、1個だけだとお店に悪いかなと思い、少し多めに買ってしまうところだが、必要な数のケーキしか買わなかったのがポイント。

 その女性から無駄のない合理的なお金の使い方を学んだという。

12. 自分へのご褒美はリスト化して無駄買いしない 

 頑張った自分へのご褒美と称して、ブランド品を買ったり、高級エステに行ったりと、ついつい無駄遣いをするというのはよく聞く話だ。しかし、ご褒美の内容は普段の買い物同様にリスト化して、時間を置くのがいい。自分をクールダウンさせるのに効果的だからだ。

「そうすることで、やっぱりいらないとなるかもしれません。本当に必要なのかという点で、楽しみながらも欲望をコントロールできるのであれば、満足度の高い買い物ができるでしょう」

 ご褒美は頑張るモチベーションを上げるためには必要なものだが、リスト化していったん落ち着くのが無駄なお金を使わないコツだ。

13. 予定外の出費でも定期預金は崩さない

 森家では、メインバンクの普通預金の口座に毎月1か月分の生活費を入れる。その範囲内でやりくりし、お金が余ったら定期預金の口座に入れ、普通預金の残高をゼロにする。そしてまた新しく1か月分の生活費を入れる、というやり方で家計を回している。ただ、予定外の出費があっても決して定期預金は崩さないという。

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「自分の定期預金口座から借り入れてあえて借金をします。定期預金を持っていると、それを担保に銀行から低金利で借り入れができるシステムを活用しています。リボ払いやキャッシングと比べると雲泥の差で使いやすいです」

 借り入れなので、通帳の明細にはマイナスとしてしっかり記録される。マイナスがはっきりと目に見えることで、使いすぎのチェックにも。 

「借り入れ後は、翌月の定期預金の貯金を減らして借入金を返済します」

 あえて借金するという発想が、使いすぎを抑制するのだ。

 ミニマリストになるためにもっとも大事なのはモノが欲しくなったときに自分の心の声に忠実になり、これは必要か、必要でないかを冷静に見極めること。

 暴走しがちな欲望をコントロールすることができるなら、私たちもミニマリストになれるかもしれない。

 教えてくれたのは……森秋子さん ●1979年生まれ。東京都在住。夫と子どもの3人暮らし。30代で始めた「ミニマリストになりたい秋子のブログ」で人気ブロガーに。近著『ミニマリスト、41歳で4000万円貯める』(KADOKAWA)が好評。

〈取材・文/東野りか〉