現在50代中盤から60代前半のいわゆるアラ還女性はバブルを謳歌した世代。学生時代に第1の青春を過ごし、バブル真っただ中に20代で第2の青春を送った彼女たち。欲望に忠実な彼女たちは60歳になっても人生を楽しむことを諦めない。どこまでも自分の幸せを追求する彼女たちが送る第3の青春とはー。
今、アラ還離婚が増えています
「女優復帰をされて最近ますます美しくなっていると思ったら、離婚が決まったということもあったのですね」
関係者がそうささやくのは鈴木保奈美(54)のことだ。
石橋貴明との19年にわたる結婚生活にピリオドを打ったことを発表し、世間を驚かせたのはつい先月のこと。発表後はインスタグラムなどで充実した様子を投稿している。
「今、アラ還離婚が増えているんです」
作家で「ラブピースクラブ」を経営する北原みのりさんが言う。
「50代中盤から60代前半のアラ還世代はちょうどバブルを謳歌した世代。だから欲望に忠実な女性が多い。保奈美さんもそう。経済的に自立しているアラ還女性がお子さんが巣立った途端に離婚するケースは芸能界だけに限りません」
夫という荷物を手放し身軽になった女性に話を聞いた。
●キラ還ケース(1)「輝く最後を送りたい」
戸村陽子さん(56歳・仮名)ヨガインストラクター
昨年コロナ離婚をしたというのは都内に住む戸村さん。
「30年も連れ添ったんですよ。もう卒業させて、って」
と、離婚を明るく語る。
24歳の「女として(当時)いちばんモテた」ときに結婚。相手は5歳年上の会社員で、第2子を授かってからセックスレスになったという。
「25歳で長女、27歳で次女を産んで20代、30代は子育てに費やしました。受験の盛んな地域だったので、お受験が人生のすべて! 夫とも協力して表面的に仲よし家族を演じてきました。性的な関係はなくても家族として夫婦仲はうまくいっていました」
それでも頭の中に離婚の2文字は常に浮かんでいた。
「30代に入ったころから“あとどれくらい女でいられるんだろう”というキーワードが常に頭にあって子どもたちが巣立ったら離婚しようと決めていました。恋もしたいし、子どもが成人する50代は自分のために生きようって。
だから娘たちにはひとりでなんでもできるように教えたし、大学入学と同時にひとり暮らしをさせるというルールも作りました。おかげで2人とも高校時代からアルバイトして自分で食べていくという意識が強い女性に育ちました。周りのママ友も同じ考え方、将来の計画を立てたりと“リコ活”は楽しかったですね」
女の人生は50歳を過ぎてからが本番
夫の経済力により何不自由なく生活できたという戸村さん。そのお小遣いでヨガの勉強を始めたのが40歳になったとき。
「ヨガが流行り始めてスポーツクラブで何げなく受けたスタジオレッスンでチャクラが開きました(笑)。離婚は決めていてもどうやって食べていくのかがわからず、結局夫に寄生するしかないのかなと諦めかけていたころにヨガに出会えたんです。
まずインストラクターの資格をとりました。マンションの集会所でママ友から数百円とるヨガ教室から始めて、50歳になったとき大手ヨガスタジオで自分のクラスを持つことができました。50歳から新しいことができたんです」
と、目を輝かせる。
「収入が手取りで30万円を超えたときに少し苦しいけど十分自活できるなと。55歳のときに離婚を切り出しました。押印した離婚届を押しつけただけですが(笑)。もう人の世話をするのが嫌だったんです。
夫は最初、環境の変化を受け入れられない様子でしたが、彼女もいたようで、すんなり別れてくれました。慰謝料もなし! 娘たちには成人した段階で私の気持ちを伝えていたので何も言われませんでした。ただ“結婚式には両親そろってほしいからケンカはしないで”とだけ言われました。大嫌いになることなく別れたので幸せなケースだなとつくづく思います。
当初は恋することにこだわっていましたが、今は毎日が楽しくて恋人も別にいらないかもとか思っています」
●キラ還ケース(2)「止まっていた生理が再開した!」
佐藤のぞみさん(57歳・仮名)webデザイナー
東京都のタワーマンションに住む佐藤さんは「女の人生は50歳を過ぎてからが本番」と言う。なんともたくましい言葉だがそこに行き着くまでには大変な道のりがあった。
「26歳で6歳年上の会社社長だった夫と結婚。3人の子どもに恵まれて勝ち組生活もつかの間、バブルがはじけて夫の会社は倒産、私も働きに出ることになったんです」
それまで住んでいた高級マンションは売り払い、郊外の公営住宅に住むことに。夫は資金繰りで朝から晩まで家におらず、佐藤さんは育児をしながらパート。持ち前の愛嬌から人気販売員となった。それでも「暗黒の30代を送った」と語る佐藤さん。
「借金返済のため自分にかけるお金なんてゼロで、子どもに贅沢もさせてあげられない。でも、私は絶対にこんなことで人生終わらせない。もう一度勝ち組生活に返り咲くと決意していました」
そんな佐藤さんが目をつけたビジネスがwebデザイン。
「パートをしていたビルにパソコン教室が入っていて、気のいいお姉さん講師が空いた時間に無料で教えてくれたんです。そこでwebデザインを学んで、借金をしてパソコンを買い、その後は独学で学びました」
毎日が充実、第3の青春
42歳のときにwebデザイン会社にパートとして入社。めきめきと実力をつけた佐藤さんは8年後の50歳のときに退社して独立。
「離婚を決めたのはそのときです。いちばん下の子どもが大学に入学し、家族というチームが一段落ついた。元夫は抵抗して1年ほど協議した末に離婚を勝ち取れたのは52歳でした。
驚いたのが、離婚した途端止まっていた生理が再開したんです! 40代中盤で閉経したと思っていたのに」
と笑う。コロコロ変わる佐藤さんの表情を見ているとこちらまで楽しくなる。
「起きてから寝るまで自分のことだけをしていられる幸せ。彼氏がいなくても全然かまわないくらい毎日が充実しています。友人とBTSの追っかけをしたり、やりたいことが山ほどある。まさに今、第3の青春って感じますね」
前出の北原さんは、この現象について、
「私の周囲だけでも3人はいますよ。アラ還離婚。うちで働いてくれてる女性にボーナスを渡したら“これでやっと夫の引っ越し代が払える!”と喜んで、そのボーナスで夫を引っ越させたといいます(笑)。
今のアラ還世代って女性の欲望を声に出した初めての世代なんです。女性だって欲があるということを社会に突きつけた世代。これからも新しい扉をガンガン開いて自由で軽やかなアラ還女性でいてほしいですね」
60歳が初老と呼ばれたのははるか昔。女性はアラ還から、なんて時代が来る!?