仲間と酒盛りをいていたホームレスたち。娘との関係について語ったCさん(左)とBさん(右)

「人間の命と猫の命は人間の命の方が重いなんて僕全く思ってない。自分にとって必要もない命は軽い。だから別にホームレスの命はどうでもいい」

「僕は生活保護の人たちにお金を払うために税金を納めているわけではない。生活保護の人たちに食わせる金があるんだったら、猫を救ってほしいと僕は思う」

 これはメンタリストDaiGoが、自身のYouTubeチャンネルにて発言をした内容だ。

 社会的弱者への差別的な発言に批判が殺到。生活困窮者やホームレスの支援を行う団体が声明を発表するなど、社会的問題にまで発展している。

河川敷にいたホームレスを直撃

 “必要ない”と言ったDaiGoに何を思うのか。ホームレスに話を聞くため、『週刊女性』記者は多摩川の河川敷に足を運んだ。

 橋脚の下に建てられた小屋で談笑していたホームレス3人に声をかけた。

「週刊誌の記者さん? どこの雑誌だい?」

 最初は怪訝な表情を浮かべたが、名刺を出して話を聞きたいと伝えると、

「いいよ! 何が知りたいんだよ!!」

 と気さくに取材に応じてくれた。

「今日は雨で天気も悪いし、みんなで飲んでいるんだよ。兄ちゃんも飲むか?」

 ひとりの男性(便宜的にAさんとする)が第三のビールを手に取ると、記者に差し出した。時間は午前11時過ぎ。カップ酒を手にもって、昼から宴会をしていたようだ。タバコも吸って、意外に裕福な気もするが……。

「アルミ缶拾いが稼げるかって? まぁ1日頑張って3000円ぐらいかな。今はアルミの買い取り価格も高くて、1kg180円ぐらい。それでも時給換算したら、いくらもないよ。なんとか生活できるなってぐらいでね」(Aさん)

 身なりは整えられて、そこまで臭う人もいない。トタンとブルーシートで建てられた小屋には、洗濯物干しがかけられていた。ちゃんと洗濯もしているようだ。

 では、なぜ彼らはホームレスになったのか?

「まぁ、いろいろね……。過去のことはあんまり話したくないんだよ……」(Aさん)

 そう話すと俯いて酒をあおった。年齢を聞くと、

「みんな成人式3回ぐらいやったぐらい! そこから察して!! あ、でもそこにいる“村長”は3回半ぐらいだな(笑)」

 Aさんが指を刺した先には、ひげをたわわに蓄え、帽子をかぶる長身の男性(Bさん)が。記者を見て、穏やかに笑った。

「もう70歳は超えて……。この生活も20年ぐらいになるんじゃないか。出身は高知なんだよ。もう何十年も前だけど、名古屋の会社に勤めていたよ、まだ俺がまじめなころ(笑)」(Bさん)

 と懐かしむように語ったところで、Aさんが口を挟む。

「俺は沖縄なんだよ! 結婚してた母ちゃんが名古屋だから俺もわかるぞ!! まぁ、昔の話だけどな……」(Aさん)

 それだけ話すと再び口をつぐんだ。

 今度は黙って会話を聞いていたスキンヘッドの男性(Cさん)が口を開いた。

「でもよぉ、週刊誌さんは最近、何を追っかけてんだ。安倍元首相のことは取材しないのか。検察の黒川とか、俺はもともと麻雀仲間だよ。よく一緒に卓を囲んだ」

 黒川とは元検事長の黒川弘務氏のことだろう。本当かどうかはわからないが、ほかにも黒川氏が連れてきた部下たちとも麻雀をしたという。一体何をしていた人なのか――。

ホームレスたちの“本音”

「俺はこの生活をして3年ぐらいだ。以前は建設会社を経営してたんだよ。わりと裕福な生活をしてたんだけどな、ただまぁ会社を潰すことになって……。あのとき死んどけばよかったなってよく思うよ。保険金も出たし、家族に迷惑をかけずにすんだ……。でもね、死ねなかったんだよ。死ぬ勇気がなかった」(Cさん)

 淡々と語っているが、当時のことを思い出し、悔やんでいるように見えた。家族とは、会ってないのか。

「娘がふたりいるんだけど、今は28歳と32歳。たまに会ってるよ。一緒にカラオケに行ったりね。“お父さん一緒に住もう”って言ってくれるけどな……」(Cさん)

 それでも、家族とは一緒に住めないという。

「負担になるだろう。俺を抱える責任を、娘たちに押し付けられない。ホームレスをやってるような俺にも、心配してくれる人はいるけれど、やっぱり迷惑はかけられないから。娘には、自分の人生を大切にしろって言ってるよ。悪い男につかまったときと、困ったときは連絡しろって。こんな状態だから、あんまり力にはなれないけれど(笑)」(Cさん)

 横で聞いていたAさんが再び口を挟む。

「そもそも、俺はこんな状態になっているって新潟にいる兄貴や、北海道にいる姉貴に言えねぇよ。家族もいて、子どももいるんだから」

 生活保護という選択もあるはずだが……。

「確かに月15万円もらったら、楽だと思う。でも、俺みたいな人間が国の世話になんて、とてもなれない。死ぬこともできないし、だったら、どう生きようかって考えてこの生活をしてるのよ。なにより縛られるってのは向いてない。金を稼ぐのも楽ではないし、高校生に殴られて骨を折ったことだってあったけど、自由がいいのよ」(Cさん)

DaiGo(YouTubeより)

 では、DaiGoが“ホームレスは必要ない”“命は平等じゃない”と発言したことについては、どう思うのか。この発言を知らなかった彼らに説明すると、

「そんなこと言われたって、ホームレスはいるんだからなぁ……」

 とAさん。Cさんは、

「税金も払ってないし、俺たちは“人間”じゃないのかもなぁ。犯罪行為で金を稼ぐ暴力団や半グレと一緒さ。空き缶を盗んでいるんだから。背負う罪の重さは違うけど、そう言われても、しょうがない気はするけどな」

 としたうえで、こう続ける。

「迷惑はかけていないとは言わない。だけど、必要ないって、死んだほうがいいってことだろ。誰かにそこまで言われる筋合いはないよ。死んだほうがいいなんてことは、自分が一番わかっていること。だからこういう生活をしているんだから」(Cさん)

 そう話すと、河川敷を見つめ、手にしたワンカップをぐびりとあおった――。

 それぞれの事情を抱えているホームレスたち。自称“月収9億円”のDaiGoでも、彼らをバッサリ切り捨てる権利なんてないのだ。