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 少子化や核家族化を背景に、先祖の墓を片づけ、更地にして管理者に返す「墓じまい」が増えている。それに伴いトラブルも増えており、寺から多額の離檀料を請求される、親戚じゅうから猛反対を受けるなどの問題が浮上している。最近、多く見られるトラブルのケースから、滞りなく「墓じまい」を完了させる段取りまでを専門家に聞いた。

お墓の行く末

 コロナ禍での2度目のお盆を迎え、猛暑のなかで墓参りをすませた人も多いだろう。一方、帰省自粛で満足に墓参りができない人も増え、「墓参り代行」といったサービスも好調だという。そんななか、先祖代々のお墓を撤去・処分する「墓じまい」や、お墓を別の場所に引っ越す「改葬」を考える人が増えている。

 厚労省の2019年のデータによると、墓じまいを含む改葬件数は12万4346件に上る。また、管理者と連絡がつかず無縁仏となり朽ちていくお墓も増加しており、不要となった墓石を引き取って供養している「墓の墓場」と呼ばれるお寺もあるそうだ。

改葬は年々増加傾向にあり、2017年には10万件を突破しました。弊社が運営する情報サイト『いいお墓』に寄せられるご相談でも、約15%が墓じまいに関連するものです

 そう教えてくれたのは、供養サービス事業などを展開する株式会社鎌倉新書の広報・古屋真音さん。同お客様センターの佐藤信也さんは、墓じまいが増加する背景について次のように分析している。

引っ越しなどでお墓参りが困難になり、先祖代々のお墓を一度たたんで、アクセスのいい場所へ改葬したいという方はとても多いです。また、少子化でお墓を管理する跡継ぎがおらず、やむをえずお墓を撤去するという方もいらっしゃいます。

 ただし、取り出した遺骨を手元にいつまでも残しておけるわけではないので、基本的には墓じまいする場合は改葬とセットで考える方がほとんどです」

 墓じまいの増加に伴い、関連するトラブルも多数起きている。国民生活センターに今年寄せられた相談では、お寺や霊園とのトラブル事例が最も多い。

 ある80代の男性は、毎年管理費を支払っていたお寺の納骨堂が昨年からコロナの影響で閉鎖され、お参りができなくなってしまった。別の霊園に新規の申し込みをすませ、元のお寺に墓じまいをすると伝えたところ、離檀には30万円の支払いが必要と言われて納得ができないという。

 また、別の70代男性は先祖代々付き合いのあるお寺があり、長年お布施なども納めて良好な関係を築いてきた。ところが、住職が亡くなってしまい新しい住職に代替わりした途端に、お布施以外にもいろいろな名目で高額な寄付を募るようになり、墓じまいをして離檀することにした。

 埋葬者1体につき35万円を支払うように言われたが、先祖代々の墓なので、そもそも何柱の遺骨が埋葬されているかの記録もなく、あまりの高額な請求に憤っているという。

墓埋法が制定された昭和23年以前につくられた共同墓地などは、管理者が不明のケースも多い

 生前にお墓を申し込んだものの、一度も納骨しないまま墓地契約を解消したケースも。

使ってないのに90万円!?

 ある80代の女性は、15年ほど前にお墓の永代使用料として90万円をお寺に支払った。お墓が必要になった際にお寺の敷地のどこかにお墓を建てられるという内容の契約だったが、契約書などの書面はなく、手元には領収書のみが残っている。

 そんななか、昨年夫が亡くなりお墓が必要になったが、墓石を建てる費用や交通の便を考えて別の場所に埋葬することにした。元のお寺に相談したところ、一度も使っていなくても永代使用料90万円は返せないと言われ、諦められずにいる。

 以上のような改葬元とのトラブル以外にも、親族間でもめるケースもあるという。

「墓じまいや改葬は、自分や親子間だけではなく、親族なども関わる話になります。誰かが許可なく墓じまいを進めてしまい、気づいたらお墓参りをする場所がなくなっていて困ったというトラブルもあるようです」(佐藤さん)

 このように、不要なトラブルを起こさないためには、どうしたらいいのだろうか。

「まずは家族や親族間での話し合いですね。お子さんにお墓を管理する手間をかけさせたくないと配慮して、自分の代で墓じまいをしておこうと考える方も多いですが、本当にお子さんが負担に思うのかなどもまず聞いておくべきだと思います。

 墓じまいの後で自分はどこに埋葬されたいか、改葬先についても話しておくべきですね」(佐藤さん)

以前のお墓のイメージと異なり、樹木をモチーフにした樹木葬や、明るい印象の納骨堂など多様化している

専門家が教える「墓じまい」

 家族の合意ができたら、次は改葬元のお寺や霊園への相談となる。特に離檀料や永代使用料の返金などお金の問題はトラブルになりやすい。

お寺としても、いまの檀家という仕組みがあって成り立っているところがあるので、事前にしっかりと相談しておくことは必須です

 離檀に際して包む金額については、その家とお寺の関係性や気持ちの問題でもあり、宗派や地域によっても異なるので、一概にいくらが適正とは言えないのが難しいところです。3万円から20万円といったあたりで、これまでの法要1回分のお布施を目安に考えるといいかと思います」(佐藤さん)

 改葬先を考えるうえでは、別の場所の一般墓以外に、永代供養墓という選択肢がある。「永代供養墓はお寺や霊園が、承継者に代わってお墓を管理・供養してくれるお墓のことで、樹木葬や納骨堂などさまざまな種類があります。選ぶポイントとしては、お墓の種類、自宅からのアクセス、金額の3本柱を総合的に考える人が多いです」(古屋さん)

「永代」とは言うものの、供養してもらえる年数は霊園やお寺ごとに細かく決まっている場合がほとんどで、年数によって金額も異なる。共同のお墓に埋葬する合祀墓という選択もあるがその場合に、納骨後は遺骨を取り出すことはできない。そのほか、散骨や、自宅などに遺骨の一部を保管して供養する手元供養を選ぶ人もいる。

 改葬先が決まれば、あとは段取りに沿ってスムーズに進めればいいだろう。

改葬に必要な書類などは、墓石の撤去などを行う石材店などでも詳しく教えてもらえます。墓石の撤去代や遺骨の取り出しにかかる費用などはお墓の面積やサイズ、納骨されている柱数によっても異なるので、事前にしっかりと見積もりを出してもらうと安心です」(佐藤さん)

 お墓の在り方も時代とともに変わりつつある。墓じまいも、そのなかの新しい選択肢のひとつなのかもしれない。

「ご先祖様を敬う気持ちは変わらなくても、家族にとって理想のお墓のカタチはそれぞれです。いちばんよい選択を考えてもらえるといいなと思います」(古屋さん)

■■■墓じまいの段取り■■■(※は仏教の場合)
【1】改葬元に改葬の意思を伝える
【2】改葬先の墓地を確保する
【3】「埋葬(納骨)証明書」、「改葬許可証」の申請・発行
【4】改葬先への埋葬申請を行う
【5】閉眼供養(お魂抜き)を行う
【6】墓石を撤去する
【7】改葬先に納骨する
【8】開眼供養(お魂入れ)を行う

お話を伺ったのは……●株式会社鎌倉新書/広報・古屋真音さん、お客様相談センター・佐藤信也さん●供養や相続に関わるポータルサイトの運営や、情報サービスを提供する企業。日本最大級のお墓情報サイト『いいお墓』では、全国の霊園・墓地情報の検索や資料請求も可能。『いいお墓』https://www.e-ohaka.com/

(取材・文/吉信武)