流行りのコスメや美容法。いくつになっても女性なら、ぜひ試したくなるもの! でも待って。そのコスメや美容法、本当に安全ですか?加齢に抗いたい焦りから、少し冷静さを失いがちな私たちに、3人の賢者が活を入れる!
“薬用化粧品”は全成分表示が義務ではない
美しくなりたい。女性にとって永遠の願いだが、そんな願いを裏切る化粧品が出回っている。
独立行政法人国民生活センターには、毎日のように化粧品危害の相談が寄せられている。危険な化粧品を見分ける術はあるのだろうか。
「化粧品のボトルの裏側や箱には見慣れないカタカナの名称が並んでいます。これをひとつひとつ読んで、どれが危険な成分か判断できると思いますか。一般の消費者が見分けるのは難しいでしょうね。現在、化粧品は、使用されているすべての原料を記載する全成分表示が薬機法(旧薬事法)で定められ、配合量の多い成分から順に表示されています」
そう語るのは、ジャーナリストの郡司和夫さんだ。かつて“化粧品”は102種類の表示指定成分だけの表示が義務付けられていたが、2001年の薬事法の改正により全成分表示になった。しかし、医薬部外品に分類される“薬用化粧品”は全成分表示が義務付けられていない。
「これら薬用化粧品は厚生労働省が定めた有効成分だけを表示すれば、その他の原料は表示しなくてもよい。多くの消費者にとっては、化粧品よりも薬用化粧品のほうが効果が高くて信頼度が高いという印象があるでしょうが、違う。最も気をつけなければいけないのは、その薬用化粧品の中でも美白を謳(うた)う製品です」
美白化粧品といえば2013年に起きた白斑被害が記憶に新しい。美白化粧品で“皮膚がまだらに白くなる”などの被害が報告され、メーカーが自主回収の措置を取った。
「白斑被害が起きたのは、美白成分であるロドデノールの含有量が多いからという結論になっているが、実はそうではない。ロドデノールだけでは皮膚の基底細胞に達して白斑の原因となることはない。問題の美白化粧品に配合されていた合成界面活性剤が皮膚の表面のバリアを破壊、基底層にまで美白成分が達し、メラノサイトに作用したのが原因です。本来、薬機法では、化粧品の配合成分が浸透するのは角質層までと定めています。それが基底層まで達したことで白斑被害が起きたのです」(郡司さん)
肝斑、シミ、ニキビが悪化?!
白斑被害は多くの女性に衝撃を与えたが、“肌の奥に働きかける”という惹句(じゃっく)で消費者をつかむ化粧品は今も多い。その1つが、マイクロニードルパッチ、刺す美容法だ。中でも、SNSで話題になっているファンデーションに警鐘を鳴らすのが、形成外科専門医・美容外科医・美容皮膚科医である上原恵理先生だ。
「この商品は、ファンデーションの中に0・02mmの天然針が3000本入っていると言いますが、その針が角質層を超えて肌の中に入れば、アレルギー反応等のリスクがあります。肌の表面にとどまることが前提の成分が肌に入り込むわけですからね。肌にある肝斑を刺激して悪化させることも起こりうる。そもそも皮膚はあらゆる刺激によって劣化するもの。こすったり、叩いたりするのは論外。刺激が皮膚の炎症を招き、防御反応としてシミができたり、皮膚のコラーゲンやエラスチンを破壊してハリを失わせたりします」(上原先生)
刺す美容法の効果や副作用についてデータが蓄積されていないことを指摘する医師もいる。日米での診療経験が豊富な皮膚科専門医の野田真史先生だ。
「微細な針であえて皮膚に炎症を起こし、皮膚の新陳代謝であるターンオーバーを促す美容法は確かにあります。ただ、市販の刺す化粧品などが本当に浸透するか疑問がありますし、現在はデータがない。異物反応として、将来的に炎症やシミ、しこりなどの症状が出てこないとも言い切れません」(野田先生)
本来、身体の中にないものを入れるリスクを考える必要がある。例えば最近、ニキビ用のニードルパッチなども販売されているが、
「日本の病院ではニキビ治療が保険診療適用となります。ニキビ治療薬アダパレンゲルは3割負担で1本150円程度。一方、アメリカでは、保険診療適用ではないため、約20ドル(約2000円)で市販されています。アメリカで市販のニキビ治療薬などを自分で買って治療する背景には、そういう医療事情がある。また、サリチル酸やグリコール酸などが入ったニキビ肌用のピーリング剤がありますが、これも敏感肌の人は避けたほうがよい。都内在住であれば中学3年生までの子どもは医療費も無料。専門的な治療を受けるほうが安心でしょう」(野田先生)
医薬部外品のニキビ用洗顔料には、イソプロピルメチルフェノールが配合されていることがある。
「これは殺菌剤、防カビ剤として多くの化粧品に使われている成分ですが、逆にニキビを悪化させアレルギー症状を起こす危険も」(郡司さん)
【あの流行コスメを医師がジャッジ!】
●韓国コスメ
「プチプラでキャッチーですよね。私もコスメは使いますが、日韓で規制成分が異なりますので、大手メーカーが日本用に出している製品を選ぶのがベター」(上原先生)
●量販店のハトムギ化粧水
「ハトムギの皮をむいた種はヨクイニンとして古くから漢方で肌のために用いられてきました。塗っても害の少ない成分です」(野田先生)
●マイクロニードルパッチ、クリーム
「化粧品は薬機法で『角質層を超える』ことを謳ってはいけません。マイクロニードルが角質層を超えたら薬機法違反ですし、超えないなら効果は期待できない」(上原先生)
●オーガニック化粧品
「オーガニックの化粧品に対する統一された基準は欧米にはありますが、日本には存在しません。一体何でそれがオーガニック?というような製品も多々あるのが事実」(上原先生)
危険ではない化粧品も使い方でアウトに!
夏の日焼け後のケア、秋からの乾燥肌のケアの定番になっている美容法の1つが、青い缶がトレードマークの、おなじみのクリームを顔に厚く塗り、パックした後で洗い流す美容法だ。高価なパックより効果的で肌がつやつやになると話題だが……。
「意味不明です。そもそもニ●アクリームは保湿クリーム。適量を肌に塗ればよい」(上原先生)
保湿に必要なものは水だけではなく、それを肌にとどめる作用のあるセラミドやペプチド。保湿したあとに油でふたをする役割だ。油だけを顔に大量に塗りたくり、洗い流しても何の効果もない。
「逆に皮脂詰まりで肌の状態は悪化。ニ●アそのものに問題はありません。ただ、みなさんはニ●アに安全なイメージを持っていますが、原材料は石油。とはいえ危険なものではなく、精製された石油はミネラルオイルとしてベビーオイルの原料にもなっています。精製された石油の液状のものがミネラルオイル、半固形状のものをワセリンといって、ニ●アはその2つをバランスよく配合した製品。石油由来だから不安、自然由来だから安心というのは、単なる自然信仰です」(上原先生)
むしろ植物性の自然由来化粧品は成分が安定しない。精製されない成分でアレルギーを起こす可能性もある。
「冷静になって、小学生レベルの理科の知識でもわかるよってことは、美容上で結構あるんです。みなさん落ち着いてと言いたい」(上原先生)
同じく郡司さんもこう語る。
「“天然成分だから安全”というのは完全な迷信。ロドデノールも植物由来の天然成分ですが、合成界面活性剤によって肌バリアを突破して皮膚に浸透した結果、白斑被害を生んだ。化粧品は食べ物じゃないから大丈夫、そういった認識を変えることが必要です。口から食べたものは肝臓で解毒されますが、マスカラや口紅などで粘膜から吸収された経皮毒は肝臓で解毒されませんから!」
安易な自己判断で最新の美容法や化粧品に飛びつく前に、まずは冷静になろう。
【これが使ってはいけない危険成分!】
主な用途/成分名/使われている商品
●合成界面活性剤/アルキルエーテル硫酸エステルナトリウム、アルキルスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル/日焼け止め、ハンドクリーム、シャンプー、ボディソープ
●乳化剤・粘化剤/ジエタノールアミン、ヤシ油脂肪酸TEA液/クリーム、シャンプー、コンディショナー
●溶剤、pH調整剤、乳化剤/トリエタノールアミン/シャンプー、メイク落とし、アイライナー、手指消毒剤
●殺菌剤・防カビ剤/イソプロピルメチルフェノール/ニキビ用化粧品・洗顔料、ボディソープ
●感触改良、耐水/ジメチコンクロスポリマー/ファンデーション、化粧下地、日焼け止め、口紅、リップグロス、マスカラ
●保潤剤・保湿剤/ポリエチレングリコール、ステアリン酸PEG-3・5グリセリル/ローション、日焼け止め、シャンプー
●合成着色剤/タール色素(色+数字)※顔料より染料が危険/口紅、アイシャドー、チーク、ティント
●収斂剤・制汗剤/クロルヒドロキシアルミニウム/制汗剤、デオドラント製品、ルースパウダー、ファンデーション
●紫外線吸収剤/アボベンゾン、オキシベンゾン、オクトクリレン、テレフタリリデンジカンフルスルホン酸/日焼け止め、乳液、ファンデーション
●白色顔料・紫外線遮蔽剤/ナノ酸化チタン/日焼け止め、ファンデーション
【謎の美容ライターMが告発! あのコスメはダメよ〜3選!】
ネット広告でよく見る「角栓ニュル!」、「シミがポロッ!」、「白髪が消えた!」の3つは気をつけて!! 角栓を無理に出したら毛穴が開きっぱなしになって、さらに毛穴が目立つの。シミは色素沈着、紙にインクを落としたような状態。ポロッと取れるとか、ほくろかイボと勘違いしているんじゃない? 白髪をなくす方法なんて、開発されたらノーベル賞ものって言われているんだよ。どれも過剰なあおりで、あ〜ホントにイラつく!
教えてくれたのは
郡司和夫さん……東京生まれ。法政大学卒業。フリージャーナリスト。身近な生活用品の安全、環境汚染を中心に執筆活動を続ける。主な著書に『これを食べてはいけない』(三笠書房)、『生活用品の危険度調べました』(三才ブックス)ほか著書多数。
野田真史先生……皮膚科専門医。東京大学大学院医学系研究科卒業(医学博士)。ニューヨーク州医師免許を取得し、2014年からニューヨークのロックフェラー大学皮膚科で診療、研究。2016年東京大学医学部附属病院皮膚科助教。All About「皮膚の健康」ガイド、池袋駅前のだ皮膚科院長(https://tokyoderm.com)。
上原恵理先生……美容外科医、美容皮膚科医、美容医療評論家。東京大学医学部附属病院研修医を経て、東京大学形成外科医局所属。THE ONE.院長。THE SKIN CLINIC神楽坂顧問。著書『すっぴんクオリティを上げる さわらない美容』(KADOKAWA)。
〈取材・文/ガンガーラ田津美〉