テレビや雑誌、SNSで見かけると、つい気にしてしまう「占い」。占い師に個人鑑定を依頼してみたいと思ったことのある女性は多いのでは。料金は占い師によるが、いわゆる「占いの館」では10分1000円から。予約がとれないような著名な占い師であれば1回5万円ほどするという人も少なくない。
コロナ禍で定着「リモート占い」
長引くコロナ禍で外出は控えなくてはいけないし、先行きの見えない将来への不安や、日々の悩みは尽きない……。そんな不確かな世相に合わせ、対面の鑑定から、オンラインを通じて占いを提供するサービスが増えている。
今年4月からはビデオ通話を活用した「楽天占い リモート鑑定」というマーケットプレイスを楽天が提供。LINEも全国の占いの館にいる占い師とユーザーをビデオ通話でつなげる「LINE対面占い」を開設した。
「以前から、電話やメールでの鑑定は気楽にできると一定の人気がありました。しかし、コロナ禍になってからはリモートの需要がさらに高まっています。Zoomなどが普及したことで、相談しやすくなったのでは」
と話すのは、霊感占い師としてカリスマ的な人気があるあゆこさん。
個人が特技やスキルを出品したり、購入できる「ココナラ」や「スキルクラウド」などのスキルマーケットが増えたことが、広まった一因。実際のぞいてみると、タロットカードや東洋占星術、西洋占星術など、さまざまな占いが個人から“出品”されていた。
メールやチャットで鑑定結果をもらえる占いの中には、ワンコインのものも。
「副業として占い師をされている人やプロの占い師でも、やはりスキルマーケットに出品したり、占いのアプリを利用して、リモートで鑑定を行う方が増えています。
SNSで無料の占い情報を発信し、お客様と出会う場として活用する占い師もいますよ」(あゆこさん、以下同)
鑑定料はスキルや経験によって異なるが、プロが行うリモート鑑定では7、8千円ぐらいからが相場だ。
占いは若者が好きなイメージがあるが、対面鑑定を依頼するのは、社会に出て複雑な悩みを抱える30代以降から70代の女性と年齢層は幅広い。
占い師が語る鑑定内容の変化
「今まで鑑定内容でダントツに多いのは恋愛相談でした。しかし、コロナ禍になってからは将来への不安などの相談が増えていますね。経営者からの相談も多いです」
占いのモバイルサイトを多く運営する会社「ザッパラスが今年1月にオンラインをメインにする占い師に行ったアンケートでも、コロナ禍を経て鑑定内容が変わってきているとの回答が半数以上だった。客層も今までとは変化している。
「外出が減り、人と会う機会も減ったことで、オンラインで気軽に話せる相手として求められています。占い師は今やカウンセラー的な役割もしていると感じています」
占い師は複数の占いを学んでいる人が多く、客の相談内容に合わせて占い方を変えることが多い。
「占星術や四柱推命などは生年月日などの普遍的な情報から統計的に占うもので、生まれ持った性格や傾向、運気のバイオリズムなどを知ることができます。手相や風水もそちらに近いです。タロットカードやダウジングなどは、必要なアドバイスが必然として現れるもの。短期間の状況、人の心に対するアドバイスを得るのに向いています」
占い師選びは、相性がいちばん大事だと話す。では、頼らないほうがいい占い師とは、どんなタイプなのか。
「すぐに行動しにくいことを言う人は避けたほうがいいかもしれません。例えば、『今すぐに会社をやめなさい!』とか。占いはあくまでアドバイスであって、強制するものではないですから」
占い師に言われたことについても、信じるか信じないかは「あなた次第」だという。
「占いの結果は数ある未来の1つ。相談者にとって悔いのない行動をするきっかけになればうれしいです」
占いの結果に従う必要がないというのにはわけがある。
「電話占い師をしていたとき、相談者の約8割は占いの結果とは違う選択をしていました。占い師と強い信頼関係がある場合は別として、占いをする人は相談する前から、自分の中ではすでに答えが決まっていることが、意外と多いんです」
しかしそれも選択のひとつだとあゆこさんは語る。
「何かを決断するときってエネルギーを使うんですよ。私たち占い師に話すことで状況が整理され、行動するきっかけになればそれが何よりです。占いを自分が幸せになれる方法として活用してもらえるのが理想的ですね」
占い師を副業にするなら
もしも占い師を副業にできるとするなら、どんな能力が必要になるのだろうか。
「最初は恋愛相談から始まるけれど、実は心の底に多様な悩みを秘めている人が多い。占い師にとって大切なことは、占いのスキルは当然ですが、相談者が本当に求めているもの、悩んでいることを引き出すことです。
相談者の本心を引き出せる言葉が、相談者の心を開くカギになります。客のニーズを感じとる鋭いマーケティング能力ですね。コミュニケーションスキルが高い人が向いているのは間違いなく、それはリモート占いでも同じです」
では、どんな占いが学びやすいのか。
「西洋占星術や風水などは覚えることが多いですね。占う手段として習得しやすいのは、タロットカードなどカードを使うものや、『ダウジング』などイエスとノーで答えが出るものです。答えを導き出すためのトレーニングは必要ですが」
スキルマーケットにはいちから占い師を目指す人に向け、リモート教室が多数開催されている。「ストアカ」には、占い師による「占いを仕事にする」ための教室などもあった。受講料はオンラインで1時間3000円程度。年代はさまざまだが、基本的に相談する側だった人が多いそうだ。
副業で月収70万円も夢じゃない!
占い好きな人の中には本格的に学び、占い師を副業にする人もいる。その1人、林 知佳さん(33歳)は、人材業界で働きながらリモート占い師として活躍中だ。
「タロットカードを使い、今は1日2~3時間を目安に、ビデオ通話形式だったり、チャット形式で占っています」
そのきっかけは27歳のときの大失恋だった。リモートでできるありとあらゆる占いをしたことが始まりだと語る。
「現実を受け入れられず、2か月で30万円ぐらい占いにお金をつぎ込み、ある日、われに返って(笑)。『私にも占えるかも』という思いがわいてきました。絵で見て学べるタロットカードに興味を持ち、やり方はYouTubeを見て独学で習得しました」
6年前より「ココナラ」にタロット占いを出品。副業の最高月収が70万円に達したこともある。
「経験を積むため、最初100件は無料で鑑定をしたことで、人とのつながりができました。現在はLINEトーク占いがメインで1分150円、個人鑑定では3000円からお受けしています」
最初は無料で受けることで場数を踏む。占いスキルだけでなく、トーク技術や“顧客の常連化”についても実地で学びを深めていった。
副業・占い師のやりがい
自分が生きてきた過程や経験をベースに占い師をやること、「自分らしさ」を忘れずに、そして「稼いでやろう」という気持ちを強く持ちすぎないことで、結果的にいろんな人と出会え、鑑定数が増えていると感じています。
かつて占いで大金をつぎ込んだ経験があるからこそ“お客様を占いにハメる”占い師さんは増やしたくないと思っていて。占いの仕事を純粋に楽しいと感じてくれる人が増えるのがやりがいです。
占いにムダなお金を費やさないために
ただし、心が弱ったとき、占いに依存してお金を使いすぎてしまうことは避けたいもの。あゆこさんに、心を落ち着かせるための方法を教えてもらった。
「紙とペンがあればできる『セルフ浄化』をやってみてはいかがでしょうか(右コラムを参照)。占い師に対面したときのように心がクリアになりますし、自分と向き合うことができます」
だるいとき、疲れたときなどにもやってみると、スッキリすると語る。
「まずはセルフ浄化をしてみて、それでも誰かに相談したいときはリモート占いを頼ってみる、ぐらいのスタンスで。占いは前向きな気持ちになるための自己啓発ツールとして活用するぐらいがいいと思います」
あゆこさん流セルフ浄化術
手順1「紙とペンを用意する」
静かな環境でA4サイズの紙とペンを準備する。紙に下の3つを書き出していく。順番は気にせず、気持ちが赴くままでOK。
(1)この1週間で嫌だったこと
(2)この1か月で嫌だったこと
(3)自分の嫌いなところ
手順2「書き終わったら紙を思い切りちぎる」
書き出した紙を、手でちぎっていく。自分の気がすむまでちぎる。
おもな占いの種類
【西洋占星術、四柱推命など】……生年月日や生まれた場所などをもとにした占い。備わった特徴や性格、いつか訪れる運命などを占う。
【霊感占い】……占い師の霊感や直感の能力を含め、未来を占う。個々の霊力に左右されるため、占い方や得意分野はさまざま。
【手相、風水など】……手のシワや物の形などから運勢を読み解く。人生の転機を占うのに役立つ。手にシワを描き足すことでも変化が。
【タロット占い、易占いなど】……カードや道具を使い、偶然に起こった事柄をもとに占う。人の気持ちや近い未来を占う場合に向いている。
リモートで占いを勉強してみた!
オンラインでもいろいろなことが学べるサイト「ストアカ」。元・占いサイトディレクターの三井一二三さんによる初心者向けの「自分で占う、幸せホロスコープ 基礎講座」(2400円)を受講してみた。
★講師と1対1で1時間みっちりレッスン
今回の教室はZoomで開催。画面を共有し、西洋占星術についてレクチャーが。生年月日だけでなく生まれた時間や場所まで重要になるので、星占いとは違うことを今更ながら知った。無料のサイトで出生時のホロスコープ(ネイタルチャート)を作成できるので、自分の性質などを占うことができた。
★さっそくお試しで友人を占って占い師気分に
受講後、三井さんからPDFで今回の資料をもらえたので、占い好きの友人Aのホロスコープを作成。星占いなどで見るAの星座は「射手座」。
探求心あふれる情熱家で、プライベートな面の星座が「みずがめ座」なので束縛を嫌うタイプ。チャレンジ精神旺盛で変化を好むのも合っている気が……。
30代後半~40代前半までは決断力を発揮し(離婚した)、これからは独創的なアイデアや自己改革で発展を感じやすいようだ。
ホロスコープを読み解くのはイメージすることが大事なようだが、初心者には練習が必要かも。ただ、生年月日と生まれた時間、場所さえわかればリモートでも占えた。
占いについてお話を聞いたのは……●天運アーティスト・あゆこさん●42歳のとき、霊感や霊視の才能を見いだされたことを機に、占いの仕事を始める。若いころから事業を行ってきたため、経営者からの相談も多い。総鑑定人数は8年間で4万人を超える。
副業の占いについてお話を聞いたのは……●林 知佳さん●人材派遣会社で働きながら占い師の仕事に取り組む。YouTubeでも2つのチャンネルを運営。
(取材・文/山田 恵 撮影/中川真理子)