朝から晩まで、毎日やるべき家事がめじろ押し。家族は手伝ってくれないし、時間に追われて体力ぐったり……。でもちょっと待って! その家事、ホントに必要なの?おカネも時間も増えて、人生が豊かになる新・家事テクをお伝えします。
家事のゴールが決まればしなくていい家事がわかる
「全部ちゃんとやろうとしなくていいんです」というのはシンプルライフ研究家のマキさん。2児の子を持つワーキングママでありながら、梅シロップを手作りしたり、子どもとたっぷり遊んだりと丁寧な暮らしを送る。
「好きな家事はやるけれど、面倒な家事はとことんカット。それで、時間と心身に余裕ができ、生活をぐっと楽しめるようになったんです」
マキさんの“しない”と“する”の線引きはとても明確。例えば洗濯。1~10までの工程があるとき、1が終わったら2、2が終わったら3……と順を追ってやることはしない。
「1のスタートと、10のゴールのみ決めて、最短距離でゴールに行く方法を考えて家事をするようにしています」
1のスタートは「毎日洗濯機を回す」で、ゴールは「毎日清潔な服を着る」こと。ゴールが「清潔な服を着る」なので、洗濯ものはたたまなくて支障なし。また1のスタートも「洗濯機を回す」ことなので、色柄ものを分けたり、タオル類だけ別に洗うなんて手間は削除! 加えて、すべての洗濯物が同じタイミングで乾いてほしいので、衣類を買うときは「乾きやすいもの」を基準にチョイスしている。
「乾きにくいフード付きパーカは選ばず、トレーナーを選ぶという感じ。手洗いが必要な服も避けています」
料理や掃除なども、ゴール思考をもとにした家事のみをやるようにしていったマキさん。結果、毎日の家事量は普通の人の半分以下に!
「ゴールさえ守ればいいと考えれば、おのずと、そぎ落とせる家事は見えてきます。家事を減らすと、洗剤や水道光熱費といった費用も減るし、時間に余裕が生まれて生活が豊かになります」
ほかにも、おっくうな掃除は「ついで」のワンアクションで終わらせたり、毎日の料理は「ルーティン化」で負担を減らしたり。その結果、不要なものに気づけ、ムダがなくなりお金も貯まる! 目からウロコのアイデアの数々、今日から取り入れてみて!
お皿は持ちすぎないことがポイント
●料理
献立作り、買い物、調理、片づけ……と工程が多いので、家事のシンプル化は不可欠!
(1)毎日、変える必要はなし!献立は考えない
料理のスタートは「おいしそうな素材を買う」、ゴールは「家族が健康になる」と決めているマキさん。栄養豊富な旬の食材を購入し、平日は、ごはん、みそ汁、肉や魚と野菜を使ったおかずの3品に限定。
「健康になればいいので、バラエティーに富んだメニューにする必要はなし。おかずは塩やしょうゆで味つけを変えれば、炒めるだけでもバリエは広がるもの。スマホで何作ろうと検索する無駄な時間もなくなります」。そのぶん、休日はちょっと手をかけた調理をするようにして、バランスを取っている。
(2)食器は必要最小限に!
「よく使う食器は決まっているもの。それだけを使いやすい場所に置いておけば、取り出すのが簡単で、配膳もスムーズ」。料理によって食器をあれこれ変えると、見た目にはいいかもしれないが、家事は複雑になっていく。
使い勝手のいい食器を厳選するのがポイント。「私は皿洗いが大嫌い。朝食はワンプレート、夕食は大皿盛りで、極力、手間がかからないようにしています」。持たないことで節約にもなる。
(3)ラクな食材を選んで下処理はしない
食材を買うときのルールは、旬の素材であることと、もうひとつ、「調理がラクなもの」。「皮をむいて、アク抜きしたり、下ゆでが必要なものは避けています」。
選ぶなら、火の通りが早いほうれん草や、ゆでるだけで食べられるブロッコリー、そのまま食べられるトマトなど。卵、納豆、豆腐なども調理工程がシンプルだ。逆に里いも、れんこん、じゃがいも、レバーといった食材は下処理が必要なので、平日は避け、週末の時間があるときにチョイス。
(4)手持ちの調理器具で作れないなら作らない
キッチンツールも少数精鋭。「手持ちの道具で作れない料理は作りません」。揚げ物用の鍋やオイルポットはないので、揚げ物は、市販のお惣菜や外食ですます。「卵焼き器もなかったので、卵料理は目玉焼きかゆで卵に限定していました。どれも同じ卵。栄養素は変わらないので、それでよし!」
すぐに片づけられる部屋にすることが肝心
●掃除・片づけ
肝心なのは「掃除しよう」と頭で考えないこと。無意識にきれいにする「ながら」術を!
(1)「掃除しなくちゃ」という気持ちを持たない
「『さぁ、やるか』という気合は不要。ストレスだし、よけい面倒に感じてしまいます。おすすめは、“ついで”掃除」。手を洗ったついでに手の泡でサッと洗面ボウルをぬぐい、トイレに入ったついでに床をサッと拭いたり、入浴中にボディタオルで浴槽を洗ったり。調理後はコンロが温かく汚れがとれやすいので軽く拭くなど。
「洗面所を掃除しようと思わず、手についた泡がもったいないのでこすっておこう、という気持ちの切り替えが大事。掃除のハードルが下がります」。専用の洗剤も不要!
(2)ロボットに頼り掃除機は使わない
重い掃除機を出して、組み立て、コンセントに差し込んで……掃除機をかけるのは重労働のひとつ。「わが家はロボット掃除機に頼ることにしました。タイマーをかけて、毎日勝手に掃除してもらっています」。
これにより、掃除機をかけなきゃというストレスはゼロに。「ロボット掃除機が通りやすいよう、床に物を置かないので常にスッキリ!」
(3)片づけることより片づけやすいことがキモ
いつも片づいている部屋を目指すのではなく、すぐに片づけられる部屋にすることが肝心。そのためには、まず物を減らすこと。限られた収納スペースにギュウギュウに入れるようでは、片づけるのもひと苦労。
「棚の上に、旅先で買ったお土産や、子どもの工作物など並べるのはNG。なるべく置かないようにするか、壁に掛けるなどして、床から浮かせましょう」。拭き掃除をするときに、持ち上げる手間なく、手早く拭ける。
(4)リセットすればOK掃除のハードルを上げない
ピカピカに掃除しようとしなくていい、とマキさん。「汚れたり散らかって、ゼロからマイナス状態になった部屋を、掃除でプラスにする必要はなし。ゼロに戻すだけでいいんです」。
掃除とは、“元の状態にリセットすること”と考えれば、ハードルはグッと下がる。「それ以上をやる必要はないと割り切ると、気がラクになります」
下着は引き出しに無造作に入れても大丈夫
●名もなき家事
日常の中のムダはまだまだある! 持たない、やらないでシンプル&貯まる生活をゲット。
(1)1個に限定各部屋にゴミ箱を置かない
各部屋のゴミ箱から、ゴミを集めてひとまとめにするのは、地味ながらも手間な作業のひとつ。マキさん宅のゴミ箱は1つ。60Lの大きめサイズを、キッチンにスタンバイさせている。
「ゴミが出たら、家族がここに捨てにきます。ゴミを捨てるときは、ここのゴミ袋を出すだけ。朝の忙しい時間でも苦になりません」
(2)重い荷物はストレス!買い物には行かない
「わが家はほとんど宅配ですませています。重い荷物をお兄さんが玄関まで持ってきてくれるので、あとはそれをキッチンへ運ぶだけ」。大荷物を運ぶ必要がないので、体力をムダに消耗することはなし。そのぶん、野菜をゆでたり食材を切っておくなどの調理に体力をまわすことができる。
「買い物は予算を設定して週に1回だけ、と決めれば、ちょこちょこ買ってうっかりムダ遣いをすることもありません」
(3)夏の定番だけど……麦茶は作らない
夏になると、ほぼ毎日というほど繰り返される麦茶作り。「大きなポットを洗って、水を入れて、お茶パックを入れて……が面倒で。思い切って水にチェンジ!」。ポットに水を注ぎ、冷蔵庫に入れておくだけにした。
「水ならポットが汚れにくいので、洗う手間が格段にダウンです」
(4)ハンガーにかけるだけ。衣類はたたまない
洗濯が終わったら、衣類はどんどんハンガーにかけて、そのままクローゼットにイン。「パンツやスカートもすべてハンガーでつるしています。手持ちの服が一度に目に入るので、洋服選びで探す・迷うといった時間も減りました」。また下着類もたたまず、引き出しにポンポン!
「新品はストックしていますが、使うのは2セットのみ。引き出しに無造作に入れても、中がゴチャつくことがないんです」
ストックで住空間を占領されるのはもったいない
(5)玄関、キッチン、風呂場……マットは撤廃
家中のマット類はすべてなくした。
「週に1回はマット類をまとめて洗濯するようにしていましたが、洗い忘れてしまったり、マット類だけを別に洗濯するのが手間で……」。床が汚れたら、汚れが目立つので、その都度さっと拭くように。結果、以前より清潔に保てるようになったそう。
「ロボット掃除の妨げにもなりません」
(6)保存袋やラップはいくつもストックしない
「大中小とサイズ別に持っている人がいますが、うちはワンサイズのみ」。いろいろなサイズをそろえていると、最後まで使い切れずにムダになったり、なくなるたびに「買い足さないと」と……と管理も面倒。ワンサイズのみなら管理がシンプルで、ストックは1つあれば十分。
「ストックで住空間を占領されるなんて、もったいない。余計なものを買わなければ、ムダな出費もなくなりますしね」
シンプルライフ研究家。不要な家事をやらないシンプルな暮らしを紹介したブログ「エコナセイカツ」が話題を呼び、総アクセス数は約3500万PV。『しない家事』(三笠書房)など著書多数。
〈取材・文/樫野早苗〉