「新型コロナ対策に専念をしたい。そういう思いの中で総裁選には出馬をしない」
永田町に激震が走った。
9月3日、菅義偉が総裁選への不出馬を発表。任期満了に伴い、首相の座を辞任するというのだ。新型コロナウイルス感染者の自宅療養者数は13万人を突破し、医療が逼迫するなか、突然の責任放棄に開いた口がふさがらない。
9月下旬には自民党総裁選が行われ、選出された新総裁が国会で首班指名を受け、第100代首相となる。週刊女性は全国の18~70歳の女性1万人にネットアンケートを実施。回答方法は自由記述で『総理になってほしい』『なってほしくない』政治家の氏名と理由をそれぞれ挙げてもらった。
「リーダーシップがない」ぶっちぎりの1位
『総理になってほしくない』政治家として1936票を獲得し、ぶっちぎりの1位に選ばれたのは、“ガースー”こと現職の総理大臣・菅義偉だ。
「緊急事態と言いながら東京五輪を開催し、国外から選手を呼んだことに矛盾を感じる。国民の不安や反対を理解せず無視して強行するのは違うと思う」(岡山・36歳医療関係)、「リーダーシップがない。メッセージがまったく伝わらない」(神奈川・52歳建設業)
菅総理のお膝元・神奈川で行われた横浜市長選では、自民党の公認候補が落選。毎日新聞の世論調査では支持率は過去最低の26%まで下落し、ついには9月末での辞任を決めた。
ワースト1位ではあるものの、菅総理は『総理になってほしい』ランキングの6位にもランクインしている。
「コロナでいろいろ言われているけど携帯代が安くなったし、ほかのことで頑張ってくれている」(栃木・41歳小売業)、「新型コロナの感染拡大は誰が総理でも止められない。コロナがない状況で力を発揮した姿を見たい」(埼玉・36歳専業主婦)
などと菅総理を擁護する声もちらほら。しかし、専門家の意見は厳しい。政治ジャーナリストの細川珠生氏は、
「保身のために、幹事長などの党役員の人事刷新や、総裁選前に衆院解散を行う政権の“延命”行為を画策するなど、支持できるところが何もない」
さらに厳しい言葉は続く。
「アンケートの結果には、政府のコロナ対応への不満が表れています。未曽有の事態だから“しょうがない”とする同情論もありますが、国民にメッセージをきちんと発信できないのは、総理として致命的。不安な日々を過ごすなか、国民が誰を頼ればいいのかわからないのは不幸でしかありません。現職が負けるということは、ご自身がされてきたコロナ対策を否定することにもなりますし、やる気もなくされたのでしょうから、出馬をやめてよかったと思います」(細川氏)
ツイッターで連発していた“お願い”投稿も、もう見られなくなる──。
『なってほしい』政治家1位、永田町での姿は
一方、『なってほしい』政治家1位に輝いたのは1060票を獲得した河野太郎行政改革担当相。
「ツイッターなどでも積極的に国民の意見を聞こうという姿勢に誠実さが感じられる」(京都・30歳サービス業)、「謝るときは謝る。責任を持ってハッキリ言える」(神奈川・38歳サービス業)、「忖度なく自分の意見を述べるから」(福岡・40歳その他)
河野行革担当相は“エゴサの鬼”とも呼ばれ、ツイッター上で自身の名前が書かれた投稿に、しばしばコメントすることも。フォロワー数は230万人超えの人気者だ。今回の総裁選も出馬を表明しているが、政治ジャーナリストの角谷浩一氏の評価は厳しい。
「彼がワクチン担当になったことで、厚労省との手柄争いが起きている。兼務する行革担当は縦割りの弊害をなくす役割のはずが、厚労省が行う発表を“俺が話す”と横取りするなど、自身が縦割り行政の弊害そのものです」
国民が見ている姿と、永田町での姿には、だいぶ差があるようだ。さらには、
「彼はブログを書いているのですが、そこでは野党のごとく政権批判をしていたのです。しかし、入閣したとたん都合の悪い一部の投稿を削除。外務大臣時代には記者にされた質問が嫌だったんでしょう。回答せずひたすら“次の質問”と言い続けたことがありました。ワクチンの供給が減少することがわかっていたのに黙っていたり……。結局、言うことが立場によってコロコロ変わったり、都合の悪いことは答えないところがあるのです」(角谷氏)
だが、自民党内ではこんな意見もあるという。
「彼の発信能力を、ほかの政治家も見習うことは必要かもしれませんね。衆院選挙を見据え、国民に人気のある“河野さんを総裁に”との声もあるようですよ」(前出・細川氏)
期待の1位だけど、総裁選で勝利できるか!?
大衆を引きつける能力は天性のモノ
『なってほしい』政治家2位は847票を獲得した小泉進次郎環境相。
「若い人の意見を活かした新しい政治をしてほしい」(東京・46歳サービス業)、「イケメン」(兵庫・46歳公務員)
「若さとビジュアルでの人気ですね。若くてきれいな人がいいのは男性も女性も同じです。大衆を引きつける能力は天性のものです」(細川氏)
今年で40歳になった小泉環境相だが、政治の世界ではまだまだ若手。国民はそんな若い力に期待しているようだが実は『なってほしくない』政治家でも4位に。
「プラスチックをなんでもかんでも有料にしないで。レジ袋はゴミ袋として2次利用していた。結局、ポリ袋製品を買ってるから意味ない。全然庶民のことがわかってない」(北海道・51歳小売業)
ゴミ袋を指定している自治体は多いが、東京23区など透明または半透明のポリ袋を使ったゴミ出しを認めている自治体も少なくない。
「小泉さんはプラスチックの生産が海洋汚染につながると言いますが、レジ袋の影響は微々たるものだとも。それなのに、主婦が悪者のように扱われているのはおかしい。温室効果ガス削減目標の46%も、記者に数字の根拠を問われると“(頭に)浮かんできた”と話すなど、この人が大臣で本当に大丈夫なのか心配になりますよね」(前出・角谷氏)
政治家は顔だけじゃなく、中身も大事ですからね……。
“トンデモ発言”“読み間違い”連発のワル
菅総理に続き『なってほしくない』政治家2位として、1325票を獲得したのは麻生太郎財務相。
「家柄だけで政治家になった人。数々の失言からふさわしくない」(岐阜・32歳無職)、「口調も格好もワルみたい。しかも漢字の読み間違えもするし、他国に対して恥ずかしい」(東京・61歳無職)
などなど、批判の嵐。
低迷を“ていまい”、破綻を“はじょう”など、財務大臣とは思えない読み間違えだけでなく、'19年には「子どもを産まないほうが問題」、'18年には「セクハラ罪という罪はない」などの“トンデモ発言”を連発してきた。
「周囲にいる役人や記者をバカにして物事を進めていくような態度が、国民にはものすごく不快に映るんでしょうね」(角谷氏)
続けて3位は安倍晋三前首相。574票を獲得した。
「2度も体調不良を理由に総理を辞職したのだから議員を辞めるべき」(東京・34歳専業主婦)、「隠蔽、改ざん、嘘つきで論外。アベノマスクの政策も意味不明。税金の無駄遣いはするし、消費税は上げるし、生活が苦しくなることしかしなかった」(神奈川・33歳サービス業)
今も国会議員として在籍しているが、『森友学園』問題や『桜を見る会』については、いまだにきちんとした説明はされないまま。そんな政治姿勢に怒りの声が多数集まった。だが、『なってほしい』ランキングでは4位に。
「2度の総理経験があり、各国とも安定した関係を築ける」(東京・40歳専業主婦)
8年弱にわたる歴代最長の長期政権を維持しただけあり、今も人気は根強いようだ。
「生理的に無理」との声もあるけれど
『なってほしい』政治家3位に石破茂元幹事長がランクイン。699票を獲得。
「理性的に物事を処理し、きちんと国民の声を聞いてくれそう」(東京・48歳専業主婦)、「竹島問題、尖閣諸島の問題もしっかり取り組んでくれると思う」(島根・43歳製造業)、「選挙で掲げた公約に共感できる」(兵庫・40歳医療関係)
石破元幹事長の政策やこれまでの姿勢について評価するコメントが集まった。専門家たちの評価も高い。
「石破さんは実はコロナ対策について結構発言しているんです。保健所の負担を減らすプランや医療体制の逼迫は感染症法の不備があるから改善が必要だなど。彼は防衛相をしていただけあって、そこはしっかりしていますね。ただ、彼も菅さんと似たようなところがあって自分の考えを人に伝えるのがあまり得意ではない。総理になったとき、そこが国民にどう映るのかがポイントです」(前出・角谷氏)
『なってほしくない』政治家としては6位だが、
「醸し出す雰囲気が生理的に無理」(鹿児島・50歳専業主婦)、「危険思想を持っているような人相に見える」(北海道・56歳サービス業)
など、石破元幹事長の“外見”に関する意見が多かった。これについて細川氏は、
「もともとは無愛想な人だったのですが、総理・総裁を目指してからは意識してニコニコしている。そうとう努力をされていると思います。ただ、フッと気が抜けた瞬間に素が出てしまうのでしょう。お顔は怖いですが、お話しすれば面白く、とても感じのいい人なんですよ」
菅総理の総裁選“不出馬”でチャンスが巡ってきた気もするが……動向に注目だ。
知事や引退した元総理の名前も
コロナ対応に奮闘する各知事にも注目が集まる。
『なってほしい』政治家5位は女性初登場となった小池百合子東京都知事。7位には政界を引退し、今はタレントとして活躍する橋下徹。8位には吉村洋文大阪府知事。9位には小泉純一郎元首相がランクインした。
なぜここで知事や引退した元総理の名前が出てきたのか。前出の角谷氏はこう分析する。
「菅総理が何を言ってるかわからないので、明確に言葉にしてくれる、強いリーダーシップがある人を求めているのでしょう。橋下さんなんかはその典型ですね。ただ、はっきり言いすぎて、“独裁だ”と求心力をなくしていくのも、発言力のある人が陥りがちなパターン。小泉さんは“自民党をぶっ壊す”などと過激な発言をして人気を集めましたが、本当に国民のためになる政策を実行したのでしょうか」
評価が高いからといって、調子に乗ってはいけない。
『なってほしくない』政治家5位は二階俊博幹事長。
「独裁的でGoToのような好き勝手な政策を行った」(東京・36歳金融関係)、「いかにも悪いことしそうだし自分に都合のいい政治をしそう」(和歌山・35歳専業主婦)
などと怒りの声が相次ぐ。
「裏があるように見える二階さんが政治の中枢を牛耳っているというイメージですよね。『GoToトラベル』を推進したことなど、自分の利益のため、国民をダシに使っているように見えることに国民は嫌悪感を抱くのでしょう。昭和の政治スタイルが、今の国民の生活に合っていないという象徴ですね」(角谷氏)
幹事長を退くだけじゃなく、議員のポストも後進に譲ってはどうか。
『なってほしくない』9位には蓮舫がランクイン。
「必要な調整をせずに独断で進めていきそう」(東京・51歳サービス業)、「批判ばかりで本人の政策が見えない」(福岡・34歳医療関係)
ただ繰り返す政権批判に、国民はうんざりしている。
「蓮舫さんで思い出すのは、事業仕分けです。あの仕分けで大幅に減らされたのが教育・研究費でした。例えば基礎研究費が減ると、今回のパンデミックに対応するための研究も進まないわけです。仕分けしてよかった部分もあったのでしょうが、なぜこの大事な部分にお金がついていないのか、疑問に思うことが多々あって、理由を調べてみるとあの仕分けが原因。その負の遺産を私たちは今も引きずっているんです」(前出・細川氏)
有力候補の岸田氏は国民の認識が足りない
『なってほしい』政治家11位の岸田文雄元政調会長は、まっさきに総裁選への出馬を表明した有力候補のひとり。
「腐敗した政治を変えてくれそう」(京都・19歳学生)、「外務大臣の経験が活きそう」(神奈川・65歳専業主婦)
など期待の声が集まるが、「思った以上にランキングが低く、意外でした。岸田さんは外務大臣や政調会長を歴任し、経歴も申し分ない。有力候補ではありますが、この結果を見ると岸田さんの存在を国民が認識できていないように感じます。だから岸田さん本人とその周囲が、国民への発信をどう変えていくのかが、勝負の分かれ目になってくると思います」(細川氏)
『総理になってほしい』13位の高市早苗元総務相も出馬を表明している。
「政策通だから」(東京・51歳その他)、「政治家の必須因子である確固とした国家観と知識を持ち、対応能力に秀でている」(広島・68歳医療関係)
派閥に属さない高市には推薦人20人を集めるハードルがあるが、彼女の政治家としての力量はどうか。
「政策は硬いものですが、しっかり練られており評価できます。その一方、お礼状はすべて手書きなど、細やかな気遣いのできる人。今回の総裁選で勝てなくとも、重要ポストを獲得できるような終わり方ができれば、今後に期待が持てると思います」(細川氏)
本当に私たちのことを考えてくれる総理とは──。