ユーチューバーとしても活躍するちいめろさん。インターネットでの動画配信や地上波のバラエティー番組などにも出演。若いママ世代を中心に絶大な人気を誇っている。
13歳の長男琉ちゃろ(本名・琉雅くん)と10歳の長女ひめちゃん(本名・麗姫愛ちゃん)の子育てに奮闘するカリスマ・ママなのだ。
“ちいめろ”の名が広く世に知れ渡ったきっかけは、当時4歳だった息子の琉ちゃろくんにホストの格好をさせてSNSに投稿したことがきっかけだった。髪を金色に染め、一流ブランドに身を包み、シャンパンにキスをする幼児……。センセーショナルともいえる写真に、ちいめろ親子に大きな関心が集まった。
当時は「子どもにホストの格好をさせるなんて」と眉をひそめる人もいたが、どうしてホストだったのだろう? 本人に尋ねてみると……。
「ちい(自らの呼び名)、ジャニーズが大好きで! 小さいころから琉ちゃろ(長男)はめちゃくちゃ可愛かったのでジャニーズに入れたかったんです♪」
そう理由を説明するちいめろさん。
「ジャニーズに入ってもデビューまで下積みが長くなったら大変なので、まずは知名度を上げなくちゃって思ったんです。そこで思いついたのが“子どものホストキャラ”。子どものホストって聞いたことないし、新しいんちゃう!? って思って(笑)。それでホストキャラとして琉ちゃろをプロデュースすることにしました」(ちいめろさん、以下同)
なんとも斬新なアプローチだが、狙いは的中。
琉ちゃろくんの名はあっという間に広がり、モデルとして雑誌に載ったり、ファッションショーに出たり、テレビ出演したりと一躍スターダムに。同時にちいめろさん自身の知名度もアップし、その子育て方法には大きな関心が寄せられた。
とはいえ世間からは、「あんなママに育てられて子どもがかわいそう」「子どもは嫌がっている! 親失格だ」という批判も殺到し、特にネット上では大炎上。「虐待だ」などと警察に通報する人もいて、一時は大騒動になった。
「“子どもが嫌がっているって、本人に聞いたの?”って思ってました。いろいろ言われましたけど、正直、あまり気にしていなかった」
人と違っていい! 個性をつぶさないで
気にしないでいられたわけについて尋ねると、
「人と違うことはいいことだと思っているからです」
とズバリ言い切る。
「他人と同じようにする必要はない。自分だけの個性を見つけて磨くのがいちばん大事じゃないですか?」
その考え方は、彼女のファッションからもうかがえる。リボンやフリルがたっぷりついたピンクや水色のパステル調の“姫系”の服を身につけ、派手なネイル、髪色もピンクに変えエクステもつける。愛らしいメイクをほどこし、まるでフランス人形のようなコーディネート。どう見てもママとは思えないビジュアルだ。
「昔から姫コーデが大好きで♪ ママになってもそのスタイルは変わりません」
そんな派手な外見に対しても、「親としていかがなものか」と批判的意見も多かった。
だが、言われてやめるようなちいめろさんではない。
「“ママになったら○○するべきって誰が決めたん?”って感じです。見た目を地味にしたらいい母親なんですか? いい母親って世間が決めるものじゃなくて、子どもが決めるもんやろ? って思っています」
ママだって自分らしく生きる権利があるし、“ママだから”って大好きなおしゃれを我慢する必要はない。周りの目を気にして、自分を抑え込むなんておかしいと訴える。
さらに《ちいめろ星のお姫様、ちいめろでしゅ♪》という挨拶文から始まるブログも展開。その独特な世界観は大人世代からするとなんとも理解しがたいのだが……。
そんなちいめろさんだが、以前のような批判は今は、ほとんどないという。
世間が持っていたネガティブな印象を変えたのは家族で一緒に出演し、日々の生活を紹介しているユーチューブチャンネルの存在も大きいという。
動画からはいつも笑顔が絶えず、仲のよい様子が伝わってくる。のびのびと成長している子どもたちを見ていると、まるで親戚になったような感覚にも。
かつてホストファッションに身を包んでいた琉ちゃろくんも現在は中学1年生。校則に従い、髪は黒くし、ファッションもどちらかといえば無頓着なほどだと、ちいめろさんは笑う。
「もっとチャラ男になるかなって思っていたんですが、真逆になっちゃいました(笑)。
母親の見た目が派手でもしっかり子育てできるんだってみなさんに思ってほしくて、人一倍勉強、礼儀、マナーには気をつけてしつけています。最近は、2人の子どものことを“すごくいい子だね”と言ってくれる人が多くてうれしい!
昔、炎上したときにうちのことを心配していた人たちに今のあの子たちを見せたいですね(笑)」
「説教には時間をかける」子育ての秘訣
「ちいめろちゃんのようなママに育てられたかった!」「琉ちゃろやひめちゃん(長女)みたいに育ってほしい」など、理想のママ的存在になったちいめろさん。子どもと接しているときに気をつけている点は?
「常に子どもと対等な立場で接することです。親はつい偉そうになりがちだけど、誰でも上からものを言われたらイラッとするじゃないですか。だから頭ごなしに叱ったり、命令口調にならないように気をつけています」
子どもが何か悪いことをして叱るときは「ダメの一点張り」ではないという。
「ダメな理由を丁寧に説明します。そのうえで、“こうしたらいいんじゃない?”とアドバイスや“こうすると、こうなるよ”といった未来予想も説明します。子ども自身が納得しないとやらされている感が残り、モヤモヤも抱えてしまいます。なのでそこは丁寧に。だから、ちいの説教はすごーく長いです(笑)」
あとはとにかく褒めること。
「何歳だろうが褒められればうれしいですよね。だからちいは、何でも褒めちゃう。“ママ、宿題終わったよ”って子どもに言われたら“すごいじゃん、やるじゃん!”って感じです」
否定しないことも気をつけている点だという。
「子どもは親から見ると、“えー”と思うような選択をすることってありますよね。洋服選びとか、宿題しないでゲームするとか。そこで、否定するんじゃなくて、『誘導』するようにしています」
こんな配信動画がある。
琉ちゃろくんの誕生日プレゼントに、ちいめろさんはドリルとおもちゃを用意した。
母親としてはドリルを選んでほしかったちいめろさんは、ドリルを選ぶといかにいいことが起きるかを丁寧に説明。初めはゲーム一択だった琉ちゃろくんも、ついには、「それなら…」とドリルに手を伸ばし……なんてひと幕も。
極めつきは愛情表現を過剰なくらいたっぷりとしていることだ。動画からも様子は存分に伝わってくる。
「“大好き”はたくさん言っちゃう! 言葉にしないと伝わらないし、ママに愛されているという自信があれば子どもも安心すると思うんです」
そして子どもたちにはハグもたっぷり!
「スキンシップも大事です。お互いにホッとしますし」
愛情たっぷりの子育てを実践しているちいめろさんだが、実は子育て本などは一切読んだことはないという。すべてオリジナルなのだ。
基準は子どものときに親からしてもらってうれしかったこと、されて嫌だったこと。
「幼少期に感じたことを生かしています。大人は子どものときの気持ちを忘れがちですが、ぜひ思い出してほしいな」
ちいめろ流HAPPY子育て【5か条】
★上から目線で命令をしない
→やってほしい理由、ダメな理由は丁寧に説明する
★たっぷり褒める
→誰でも褒められればうれしいし、やる気もアップ
★否定しない
→否定ではなく誘導はアリ。子どもの選択を尊重して
★たくさん「大好き」と言う
→言葉にしないと伝わらないから!
★ハグをたっぷりする
→スキンシップは信頼関係を深めるので積極的に
どん底期を支えてくれた母の存在
インタビュー中はもちろん、日ごろから明るくポジティブなちいめろさん。
だが、過去には自殺を考えるほどに、つらく悲しい時期があったそう。
若くして結婚、2人の子どもを授かった直後のこと。夫の異性問題が原因で離婚をすることになった──。
離婚調停中に人生最大のどん底に陥ったという。
「精神が不安定になって、精神安定剤を大量に飲んだり、『死んでやる』って屋根から飛び降りようとしたり……。とことんまで落ちましたね」
そんなとき支えになったのが、実母・浩ちゃんの存在。あれこれ口を出すのではなく、娘の痛みを理解し、支えようと必死になってくれた。
「いちばん印象に残っているのが、ちいがリストカットを繰り返していたとき。“あんたが切るなら私も切るから”って母が目の前で手首を切ったんです。ちいはお母さんが大好きだったから、ショックだった……。ですが同時にものすごく深い愛も感じました」
荒れた生活は半年近く続き、子どもを両親にあずけて夜、出歩くこともあったという。
どん底から復活できたのは、シングルマザーの先輩からのひと言がきっかけだった。
「“子どもだけは絶対にママの帰りを待っていてくれる。どんなに遅くても起きて待っててくれるんだよ。子どもだけは何があっても裏切らないよ”って言われて……。病んでる場合じゃない、私は子どもがいちばん大事! 守るべき存在がいる! と完全に目が覚めたんです」
悩めるママのヒントになれたら
それ以後はとことん子どもたちを愛し、いちばんに考えるようになった。
「いいママになりたいというよりは、単純に子どもたちが愛おしくて、愛おしくて。心の底から大好きがあふれている感じです(笑)」
そんなちいめろさんの元には、ファンからの悩み相談ともいえるメールが届くこともしばしば。「子どもをすぐ怒っちゃう……」「私もシングルマザー。毎日大変で子育てが楽しめない……」など、週に何通も寄せられている。
「子育てがうまくいかない人は、まず笑うことを心がけてほしい。家庭の中心であるママが暗いと、家族みんなも暗くなって、悪いことが起こりがち、負のスパイラルに陥っちゃう。だから、キツくても笑う。つらい状況も気の持ちようだと思って、私も前向きに考えるように努力しています」
また浩ちゃん世代ともいえる50~60代の女性には、「娘が子育てで悩んでいたら、まずはただ悩みを聞いてあげてほしい」と訴える。
「つらいの? 変なの?」と寄り添ってくれるだけで、心がほぐれる。悩みを言葉にして吐き出せれば、気持ちもグッと軽くなるもの。
「このとき、“こうしたら、あかんやん!”なんて上から目線で言うのは避けて。“わかっとるわ!”ってよけいストレスがかかっちゃうから。“一緒にがんばろう”って対等な感じで言ってくれると、いちばんありがたいかな」
親とも子とも深い信頼関係で結ばれているちいめろさん。
これまで両親からたくさんの愛情を注がれて育ったと振り返る。
「両親は厳しかったけれど、いろいろ経験させてくれたし、やりたいと言ったことはやらせてくれました。今度は私が自分の子をたっぷり愛する番! これからもユーチューブやブログでちいめろ流の家族愛を伝えていきたいな」
どんな批判にも負けずに自分を貫く原動力──。それは彼女が愛する人たちの笑顔があるからなのだろう。
https://www.youtube.com/channel/UCvkWfTGdqAz8N3nJfNay-cA/featured
(取材・文/樫野早苗)