※画像はイメージです

 ついついムダ遣いしてしまう、貯金ができない……。その原因は“お金の使い方”にある。

お金の使い方を知ってムダ遣いを減らす

ファイナンシャルプランナーの内山貴博さん

行動経済学の観点からは、人は買い物のときに冷静な判断を見失うことがある、ということがわかっています」

 そう話すのは『お金の使い方テク』の著者でファイナンシャルプランナーの内山貴博さん。行動経済学とは、個人の感情や心理が、日常生活の経済行動に及ぼす影響を分析する学問、とのこと。なんだか難しそうだが、とても身近な学問だという。

「例えば“欲しいモノはないけどせっかくバーゲンに来たんだから無理やり何か買う”などの行為は、行動経済学では非合理的な買い物と考えられています。

 本当に必要だから買うのならばいいのですが、“自分へのご褒美”や“お買い得だし”“限定品だし”などの理由で衝動買いをするのはムダな買い物になります。

 まずは品物やサービスにお金を払う前に、1度立ち止まって“本当に自分に必要か”“本当にお得か”を考えるだけでも財布の紐は固くなります」(以下、内山さん)

 買い物中に揺れ動く感情の正体を知り、不要な出費を未然に防ぐお金の使い方を知ることは一生の財産になる。

 そこで、身近な買い物の中に潜むムダな消費行動を学べるクイズを出題。賢い買い方はどれなのか、クイズを解きながら学んでいこう。

「普段の買い物から冷静に、買おうとしている理由を考え、生活に必要か、不必要かを基準にジャッジするといいでしょう。浪費を極力抑えるという意識を持つだけでもお金の使い方が変わります」

<1>キャベツを買うならどっち?
A 1玉158円のキャベツ
B 半玉98円のキャベツ

単価の安さで判断するのは禁物 ※画像はイメージです

余らしてしまう人は半玉を

 キャベツ1玉158円を半分にすると79円なので、半玉98円を買うよりも単価は安い。しかし、単価の安さのみで判断するのは禁物だ。

「キャベツ1玉を新鮮なうちに使い切れるならお得な買い物です。でも、使い切れず冷蔵庫の中で傷ませているなら、ムダになっている証拠。

 まずは、1週間〜1か月ほど冷蔵庫の中をチェックして、自分の買い物の傾向を把握。余らせてムダにしているなら、多少割高でも使い切れる分を買うようにすると、食材のロスもムダ遣いもカットできます」(内山さん、以下同)

★内山さん的「見切り品」の上手な買い方
「スーパーでは、野菜やお刺身など、傷み始めた食材の価格が値引かれて“見切り品”として売られますよね。安くなるのはありがたいですが、その分味が落ちている可能性が高いので、食事の満足感が少ないかもしれません。

 食事をおいしく楽しみたいという人は“火を通すものは見切り品、お刺身は値引きではなく新鮮なものを買う”など、基準を設けましょう。食卓の満足度を上げつつ節約するのが、上手な買い物です」

<2>ネットスーパーと実際のスーパーの買い物、得なのはどっち?
A ネットスーパー
B 実店舗

どちらにもメリットあり!

「最近は、ネットスーパーの利用者も増えていますね。商品の価格は、実店舗よりもネットスーパーのほうが、特売品の購入ができない、配送料がかかるなど、若干高くなる傾向があります。

 一方で、ネットスーパーは店と家を往復する時間がかからず、重たいものを運ぶ手間が省け、冷たいものもそのまま届くので利便性が高い選択です。また、実店舗でやりがちな予定外の買い物も防げます

ネットの方が安く済むかも? ※画像はイメージです

 ただし「◯円以上で配送料無料」などのサービスにこだわるのは考えもの。

無料にするために不要なものを買うのは本末転倒。配送する人の人件費だと割り切って、必要なものだけを買いましょう」

<3>コース料理を食べるなら次のうちどれ?
A 1,500円のコース
B 2,500円のコース
C 5,000円のコース

“本当に食べたいもの”を選ぶ

 人は目当ての商品の選択肢が3つあると、真ん中を選びがちだという。

商売上手なお店ではこうした心理を利用して、真ん中のコースの食材を大量に仕入れて単価を下げ、利益率を上げているケースもあります

選択肢に惑わされないで ※画像はイメージです

 どのコースが得や損とは一概に言えないが、選択肢に惑わされないことが大事。

「普段のランチは安く、記念日はいちばん高いコースなど、目的や自分の満足度をもとに値段そのもので冷静に判断をすることで余計な支出を抑えましょう」

<4>洋服のセール、2点で10%オフ、3点以上で20%オフ……
A 買い!
B 買いじゃない

割引目当てで無理に服を選ぶのはNG!

 セールで見かける「対象商品2点で10%オフ」などの甘い言葉にはご用心。

甘い言葉にご用心 ※画像はイメージです

お店側は、あまり人気がない商品など“まとめ売りにするとメリットがある商品”を対象にしている可能性が高いです。特に洋服は季節や流行に売り上げが左右されるので、可能な限りシーズン中に売り切りたいのが本音。

 一方、買う側は10%を値引くために服を無理やり選んで、結局気に入らずムダになった、というケースも。欲しい服がたまたま“まとめ買い”の対象だったらラッキーと考えて、純粋にショッピングを楽しみましょう」

 セール中にこそ、冷静な判断力が求められる。

<5>家電量販店で高額の買い物をするならどっち?
A 10%現金値引き
B 10%ポイント還元

現金値引きで支出を抑えるべし

 大手家電量販店では定番になっている、購入時のポイント還元サービス。10%還元はお得な印象があるが「節約面に疑問が残る」と、内山さん。

同じ10%なら支出を抑えよう ※画像はイメージです

合理的に買い物をするなら“現金値引き”がおすすめです。例えば、5万円の家電を買う際、10%の現金値引きなら4万5000円になりますが、ポイント還元の場合は値段は元値のままなので支出は5万円です。また、一生懸命貯めたポイントで商品を購入してもポイントは還元されません。支出を抑える、という意味では現金値引きが有利です

 ポイントを貯めることにこだわらず、こまめに使って日々の買い物額を少しでも減額させるのが節約のコツ。

ネットショッピングはECサイトを賢く比較

 同じ商品でも、ECサイトによって値段が大きく違うケースは珍しくない。

「特に家電のような高価な買い物は、さまざまなECサイトの値段を比較してから購入に踏み切るのが鉄則。『価格.com』などの値段比較サイトを活用すると、各サイトの商品価格がひと目でわかるのでとても便利です。日ごろからさまざまなECサイトに会員登録しておくと、購入する際に登録の手間が省けますよ」
 

ECサイトを賢く比較して節約を ※画像は「価格.com」より

<6>大人気のハイボール、選ぶならどっち?
A 350ml缶
B ウイスキーの割り物

お酒好きこそ「缶」で買って酒量を調節

 ウイスキーを瓶で買い、炭酸水で割れば自宅でも手軽に作れる「ハイボール」。缶で買うよりも安く上がりそうだが……。

飲み過ぎには注意 ※画像はイメージです

お酒は“缶”での購入がおすすめです。1日に飲む量は個人差がありますが、缶だと、切りよく“ここでやめておこう”と自制がしやすい。逆に大瓶のウイスキーだと、ついついたくさん飲んでしまう人もいるはず。

 私もお酒が好きなので気持ちはわかりますが、短期間で瓶のウイスキーを何本も買うのは、節約とはいえません。缶の箱買いも“たくさんある”と思って何本も飲んでしまうのでNG。1日1本など本数を決めて購入して、買いすぎと飲みすぎを防ぎましょう

<7>日常の買い物、現金とクレカどっち?
A やっぱり現金
B スマートにクレジットカード!

現金とクレカを上手に使い分けよう

上手に使い分けよう ※画像はイメージです

「非常に判定が難しいですが、食費や日用品の支払いは、現金、もしくは即時引き落としができるデビットカードやコード決済に軍配が上がります。クレジットカードは自分の残高に関係なく支払えるので、気づかぬうちに“生活水準以上”の買い物をして、お金が貯まりにくくなります。

 ただし、数万円を超える高価な買い物はクレジットカードを使うと明細が残って支出が把握できるというメリットも。“使いすぎ体質”の人は、現金とクレジットカードの使い分けができると安心です」

 自分の性格と相談しながら支払い方法を決めるべし。

<8>医療保険やがん保険、加入するならどっち?
A ネット保険で
B 昔ながらの営業の人から

保険の見直しはプロに任せるのが安心

 近年、インターネット経由で加入できる“ネット保険”が注目を集めている。

保険はプロに任せるのが安心 ※画像はイメージです

「ネット保険は安さの面で魅力を感じる人が多いと思います。でも実は、類似の保険と比べて必ずしもいちばん安いわけではないんです。

 さらに、ネット保険の場合は保障内容を自分で把握しなければならず、サポート面にも不安があります。その点、保険の担当者がいると出産や疾患など、ライフステージの変化に応じて相談ができるのがメリット。生活に関わることなので、相談相手がいると不安も軽くなります

<9>家計簿つけるならどっちがいい?
A 手書きでしっかり!
B ラクラクアプリで

気軽に家計管理をするならアプリがおすすめ

 家計の管理には家計簿を活用したいが、三日坊主で続けられない、と悩んでいる人も多いはず。

「家計管理でのポイントは、収支の見える化と継続です。スマホの“家計管理アプリ”ならば、キャッシュレス決済と連動して勝手に記録されたり、レシートを写真に撮れば項目を反映する機能があったりと、手軽に続けられます。収支を把握すれば、家計の問題点も見えるようになりますよ」

アプリなら家計簿管理も楽だ ※画像はイメージです

 もちろん、手書きで継続できている人はそのままでOK。

家計簿をつけて終わりではなく、収支から見える“問題点”を洗い出し改善することが大切!

FP内山さんおすすめの家計簿アプリは

 家計簿アプリのいちばんのメリットは「いつも持ち歩いているスマホで記録できること」と内山さん。買い物したらその都度、ササッと入力すれば、レシートをため込んだあげく記録が面倒になって挫折、という悪循環が防げる。

 おすすめは、「LINE Pay」の購入履歴などが自動で反映される「LINE家計簿」や、レシートと購入した商品のバーコードを読み込むとポイントが貯まり電子マネーに交換可能な「CODE」など。自分に合ったものを選ぼう。

<10>たくさん種類がある「◯◯ペイ」の賢い持ち方は?
A 1つに絞る
B 複数の「○○ペイ」を使いこなす

コード決済方法は2〜3つに絞る

 スマホ画面に二次元コードやバーコードを表示させて支払いをするコード決済。その手軽さから利用者を増やしているが、サービスが乱立しているため、アプリを何種も入れているという人もいるだろう。

乱立する「◯◯ペイ」。自分に合ったものを使おう ※画像はイメージです

「コンビニなど特定の店で使うとポイントが貯められるので、複数のコード決済を利用している人もいるかもしれません。でも、数が多いと管理ができなくなる可能性が高いです。

 また、アプリにお金をチャージしたまま放置するのは、現金が金庫に入っているのと同じ状況なので運用もできず、リスクにもなります。利用するコード決済は2〜3つに絞るのが理想です

内山貴博著『お金の使い方テク』(朝日新聞出版)※記事の中の写真をクリックするとアマゾンの紹介ページにジャンプします

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教えてくれたのは●内山貴博さん●内山FP総合事務所株式会社代表取締役。大学卒業後、証券会社に勤務し2006年に独立。FP相談業務のほか、セミナーなど多方面で活躍。『駆け出しFPの事件簿』(きんざい)など著書多数。

[取材・文/大貫未来(清談社)]