「8月中旬に2回目のモデルナワクチンを接種したんです。打ったその日はなんともなかったんですけど、翌朝5時ごろからとにかく頭痛がひどくてね……」
北海道札幌市在住の50代の男性はそう振り返る。医師からは接種後、発熱や頭痛に襲われることもあると伝えられていた。そのため、寝る前に鎮痛剤を飲んでいたが、それでも、
「夜になって薬の効果がきれると発熱。顔が異様に火照って、身体の節々も痛かった。それで翌朝、また鎮痛剤を飲んで、さらに昼にも飲んで、数時間たって、ようやく落ち着きました」(同・男性)
それでも、接種から2日ほどは倦怠感も残った。とにかくダルかったという。
ワクチン接種が増えてなくなった鎮痛剤
9月2日時点で、2回目のワクチン接種が完了した人は、全人口の47.2%に到達した。65歳以上の高齢者の接種は8割を越え、自衛隊が運営する若者向けの大規模接種センターがスタート。国内のワクチン接種率は日に日に上がっている。
そんな中、薬局の店頭から“2つの市販薬”が消え、今ではなかなか手に入らなくなっている。
ひとつは、ライオン『バファリンルナJ』。
もうひとつはジョンソン・エンド・ジョンソン『タイレノールA』だ。
冒頭にあった“副反応”への対処法として多くの人が服用する鎮痛剤だ。
東京の郊外と都心にある薬局やドラッグストアチェーン店を調べてみたが、例外なく“激レア”化していた。郊外のドラッグストア店員によると、
「この春ごろから品薄になっていて、この1、2か月はほとんど店頭にない状態ですね。入荷しても、大量に買っていくお客様が多くて、すぐになくなってしまう」
都心の薬局もこう話す。
「在庫ゼロがずっと続いています。今ではお客様に別の鎮痛剤をすすめています」(都心のドラッグストアの薬剤師)
販売元にも確認してみると、ライオンは
「現在、増産の体制をとっています。ご要望にお応えできる数量を、なるべく早く提供できるようにしたいと考えております」
ジョンソン・エンド・ジョンソンは、
「世界中のすべての市場で、製品の入手可能性を最大限に高めるように、あらゆる手段を講じています。今回の世界的な公衆衛生上の危機においても、できるだけ多くの方に製品をお届けできるよう、在庫の出荷を順次行っているほか、供給を確保するために、製造拠点で最大限の生産を行っております」
だが、2社とも市場に出回る時期については“今は明確に答えられない”とのことだった。
去年の2、3月にはマスクが同じように欠品状態となっていた。それもこれもコロナへの恐怖心が招いたパニックだといえよう。
そもそも、なぜこの2つの市販薬だけが爆発的に売れているのか。前出のドラッグストアの薬剤師によると、
「簡単に言うと、これらの薬は鎮痛剤としての成分がアセトアミノフェンだけだから。薬としての鎮痛効果はかなり弱いのですが、そのぶん身体への負担がほとんどないんです」
皮膚の血管を広げて熱を放散させる作用や、脳の感受性を低下させる作用があるアセトアミノフェン。安全性の高い解熱鎮痛剤の一種で、子どもが服用しても問題ないとされている。一方、
「ロキソニンなどのような非ステロイド性消炎鎮痛剤は、前者より鎮痛効果は高い。ですが、そのぶん身体への負担も大きいのではないかと考えられています」
実際のところ、どうなのか。のべ1500人以上のコロナ後遺症で苦しむ患者を診断してきた『ヒラハタクリニック』の平畑光一院長に話を聞いた。
医師が2つの鎮痛剤を解説
「ドラッグストアなどで市販薬を買うなら、確かにアセトアミフェンの鎮痛剤がよいでしょう。その薬自体の副反応が少ないので、安心感がありますね」
手に入らない場合は、
「ほかの市販薬でもいいと思います。ですが、副反応は放っておいても、基本的には大丈夫なもの。ひどくてつらいときだけ仕方なく服用する、と考えてください」(平畑先生、以下同)
ワクチンによる副反応を怖がって接種をやめようと考えている人も出てきているようだが、
「ダメです。現在のところコロナの最良の防御策がワクチンですから、できるだけみなさんに接種してもらいたい。
過去に接種後の副反応がつらいと来院された方がいたのですが、実はコロナに感染していてその症状だったことがありました。接種したが免疫ができる前に罹患してしまったということです」
つまり、もう少し早く接種していれば感染しなかったとうこと。ワクチンの副反応の情報にあまり踊らされてはいけないのだ。