きのこの山・たけのこの里国民総選挙結果発表&新CM発表会での嵐・松本潤と美輪明宏('19年12月)

きのこの山』がうまいのか、いや『たけのこの里』なのか。俗に『きのこたけのこ戦争』と呼ばれる論争が勃発するほどの銘菓2種。ネットを中心とした“ギャグ”的な論争でもあるのだが、株式会社明治が'01年に“きのこ・たけのこ総選挙”キャンペーンを行うなど、販売元自体も論争に便乗している。この人気商品にこのたび動きが。

『たけのこの里』やっと商標登録!

「8月20日、特許庁が『たけのこの里』を商標登録したことがわかりました。今回は“名称”などの登録ではなく、たけのこ型という“形状”での商標登録が認められました」(社会部記者)

 形状の商標登録は、“立体商標登録”と呼ばれる。それはどのようなものか。

『商標』とは、商品やサービスの出所を表す機能を持つものですが、言葉やマークだけではなく、立体物も商標として機能しえます。典型的な例としては、ケンタッキーの店頭のカーネルサンダース人形などです

 そう話すのは、テックバイザー国際特許商標事務所・代表弁理士の栗原潔さん。形状が商標登録されれば、他社に“パクられる”ことなく、その形を独占的に使用できるため、登録は非常にハードルが高いという。

商品の形状そのものを立体商標登録できればきわめて強力な権利が得られますので、特許庁の審査も厳しくなっています。カーネルサンダース人形のように“看板”として立体物を使用する場合よりもはるかに厳しいです」(栗原さん、以下同)

 今回の明治による『たけのこの里』の立体商標登録出願も、特許庁によって一度登録が拒絶されている(商標法に基づき、出願人に対し特許庁より“拒絶理由”が通達される)。商品が“多少特異な形状であっても”なかなか認められることはない。

出願には消費者による認知度を立証する必要があります。これには、販売シェア、メディアへの露出、消費者の調査等々を提供する必要があり、大変労力を要する作業となります

 特許庁によるサイト『特許情報プラットフォーム』では、登録された商標や登録までの状況が閲覧できる。『たけのこの里』は、'18年5月29日に出願し、今年の7月21日に登録と、実に3年もの月日がかかっている。その間、明治は販売シェアなど、さまざまな資料を提出した。

『特許情報プラットフォーム』では登録までの明治の頑張りも閲覧できる

『たけのこの里』は登録までに3年

 ここで話を“論争”に戻す。実は立体での商標登録は、“ライバル”『きのこの山』も『たけのこの里』に先立ちなされており、しかもたった9か月で登録が認められた。これは特許庁という審判による“『きのこの山』の勝ち”という宣言か。なぜここまで差が生じたのか。

推測でしかないですが、『きのこの山』は形状的に独自性が強いのに対して、『たけのこの里』は類似の形状のお菓子が市場にあるので、本当に『たけのこの里』が明治の菓子としての認知度を得ているかの調査に時間がかかったことが考えられます

 販売元である明治にも話を聞いた。明治によると、『きのこの山』の出願と登録は'17年だが、これは2度目の出願で、それよりさらに先んじること'15年に出願したが認められなかったという(注・特許情報は古いものは閲覧できなくなる)。なぜ“きのこ”が優先されたのか?

「(1度目の出願時は)2年近く努力しましたが、登録には至りませんでした。そこでさらなる準備のうえ、’17年に再度出願して、ようやく登録となりました。'15年に『きのこの山』を先んじてチャレンジした理由としましては、大きく以下3点になります」(明治広報部、以下同)

●“きのたけ”兄弟ブランドとして、先に発売した商品が『きのこの山』だった。

●'15年は『きのこの山』発売40周年の節目の年だった。

●お客様からの認知度では、『きのこの山』のほうが高かった。

 登録までの期間の差を、販売元はどう捉えているのか。

『たけのこの里』立体商標の特許庁の審査期間については、ちょっと長かったかな、という印象はあります

 と話す。その理由について、

「ただ通常の商標出願登録と比べて、名称や普通の形状の登録の場合、“長年の使用により、一般の取引者や需要者が、その名称や形だけでどの商品であるか認識できるような状態になっている”場合に限り登録が認められる、例外適用での登録となります」

唯一無二の『たけのこの里』へ

『たけのこの里』※写真は明治のホームページより

 商標の登録はパクリを規制できるが、一方で登録が認められた場合、独占できる形になるため特許庁の審査はそれだけ慎重になる。

「そのため、審査に時間がかかったのかと思います。ただ、そのぐらい厳しい審査を乗り越えて、『たけのこの里』立体商標も登録になりましたので、非常にうれしく思っております」

 最後に“審判”である特許庁にも話を聞いた。前出のとおり、明治は販売シェアやメディアへの露出などの資料を提出し再チャレンジの結果、登録された。

資料のボリュームが大きく、また紙で提出されている資料も多いので、それをひとつひとつチェックすることにどうしても時間がかかってしまう部分があります。さらに『たけのこの里』の場合は、コロナの関係で審査官もなかなか出勤ができなかった。

 資料の多くが紙での提出だったので、出勤しないと確認できないという状況でもありました。そのなかで審査官も複数の案件を抱えており、どれを優先してやるかという判断もありました」(特許庁担当者、以下同)

 提出資料が、そもそも“証拠”になりうるのかもひとつひとつ調べる必要があり、どうしても時間がかかった。

「出願人が提出する資料もありますが、この形を出願人以外も使っている可能性もありますから、そういった部分も含めて慎重に審査をしたということになります」

 その“形状”の独自性が公に認められたきのことたけのこ。あなたはどっち?