《独立してから、民放キー局からのオファーはありません。もちろんオファーがあれば出演して全力を尽くしますが、一方でこの1年間テレビに出ていなくても経営という面では全く問題はない。だから出演料が厳しいという事情があったりしたら無料でも出ますよ》
9月14日、『AERA dot.』にて元NEWS・手越祐也の独占インタビュー記事が配信された。2020年にジャニーズ事務所を退所、独立した手越は「テレビに出演していない」ことを問われて、オファーがあれば「無料で出る」と言ってのけた。
現在、フリーとして活動する彼の主戦場は『YouTube』だ。
「退所会見と同時に設立した『手越祐也チャンネル』は登録者数162万人で、人気ぶりはさすが元ジャニーズといったところ。ですが、当初こそ再生回数100万回超えを連発するも、最近では10万回にも届かない動画も多くなっています。
特定のファンや、興味がある視聴者が自ら選択して見るのがYouTube。世間一般では、彼の動画を視聴したことがない人が多いのも事実です」(スポーツ紙芸能デスク)
チャンネル登録者数162万人と言っても、日本の人口の比率でわずか1%程度。インタビュー記事では、7月7日にスタートしたという6か月連続シングルリリースプロジェクトにも触れているのだが、この情報が初耳である人も少なくはないだろう。
仮に、手越が今なお『世界の果てまでイッテQ!』(日本テレビ系)に出演していたのなら、番組内で宣伝してもらうことで大勢の視聴者が知り得たと言える。「無料で出演」発言は宣伝を見据えてのことで、営業面では決してマイナスにはならないと踏んでの発言とも考えられそう。
すでに居場所を失った手越
「とはいえ、彼にオファーする局はないのでは?」とは前出の芸能デスク。
「“いろいろな事情があると思う”“出演料が厳しい”などと、自身にオファーがない状況をポジティブに分析する手越ですが、それは違うと思いますよ。確かに前向きでチャラいキャラはウケていましたが、それは“ジャニーズの手越”であったからこそ。
よく、“大手事務所から独立したから干された”と訴える者がいますが、逆に“大手事務所だから出演できた”という現実もある。それに本当に制作側が起用したい、必要とするタレントなら事務所に関係なく、あるいはギャラに関係なく使われますよ」
手越を重宝していた日テレもすでにシフトチェンジしている。露出を増やしているのは、『24時間テレビ』でメインパーソナリティーを任された『King & Prince』。
「グループ初のレギュラー番組が日テレ系での放送が濃厚で、企画内容を詰めている段階だそう。そして『イッテQ』にも、新メンバーとして1人加入させる案も検討されていると聞きます。内村(光良)さんは平野(紫耀)くんに才能を見出していると言いますが……」(制作会社スタッフ)
次々と新しいスターが誕生する芸能界だけに、“椅子を奪われた”手越の居場所はすでになくなっているということか。
同様にお茶の間から姿を消して久しい、元『雨上がり決死隊』の宮迫博之。2019年の“闇営業”騒動で吉本興業を退社、すべての地上波レギュラー番組から降板した彼だが、8月17日の雨上がり解散報告会にて、
「僕はあきらめてませんよ。いつか僕がテレビに出られる状況になったとき、ひな壇の端っこ、声をいちばん出さなあかんところから始めたいと思っています。そこから最終的にここ(司会の位置)にスッと……」
手越と同じく、YouTubeチャンネル『宮迫ですッ!』を開設し、登録者数143万人を誇る人気ユーチューバーになった宮迫。カリスマ・ヒカルをはじめ、縁のある芸人らとのコラボで再生回数を伸ばすことで十分に稼いでいるはずだが、それでもテレビ復帰への執着ぶりは凄まじい。
動画コンテンツに詳しいITライターが宮迫を評する。
「吉本をクビになってもなお、いずれは“テレビが俺を必要とする”とたかを括っていたであろう宮迫さん。YouTubeこそ当初は“つなぎ”のつもりで、どこかユーチューバーを“素人”と見下していた部分があったと思います。でも、ヒカルと組んだことで考えは改まったみたいですね。持ち前のトークだけでなく、潤沢な資金をつぎ込む本気の企画でなんとか数字を伸ばそうと努力しています」
そう、手越も宮迫もテレビ出演によるギャラがなくなったとはいえ、金銭面で困っているわけではない。その上で、2人がテレビ出演に“固執”する理由とは何かーー。
至れり尽くせりのテレビ局
「YouTubeでは得られない、“THE芸能人”の自尊心をくすぐる快感がある」とは、芸能プロダクション幹部。
「ともに視聴するコンテンツですが、番組を制作するための環境、関わる人間の多さ、注ぎ込まれる制作費が桁違いです。事務所に所属するトップユーチューバーなら、ディレクターやカメラ担当、エディターらが関わりますが、極端なところ1人でも作れるし、お金もかけず、撮影スケジュールも自分で決めることができます。
一方のテレビでは、あらかじめスケジュールを押さえて、街ロケでも多くのスタッフがついて回り、スタジオにはさらに多くの局関係者が出入りし、豪華なセットが組まれます。この特別感がテレビであって、自身の冠番組ならば扱われ方はまるで“王様”ですよ(笑)」
局やスタジオに“顔パス”で入り、共演者やスタッフ、関係者と顔を合わせれば「おはようございます」と挨拶され、楽屋が用意されて、プロのメイクもつくという至れり尽くせり。確かに、自身で全てをセッティングするユーチューバーとは勝手が違いそうだ。
また、おもしろい箇所だけをつなげて自分の思うままに制作できる“編集ありき”のYouTubeとは違い、台本こそあれども生の掛け合いやアドリブがあるからこそおもしろくなるのがテレビだとも。
「番組の観覧客やスタッフ、携わる関係者のリアクションや熱を直に手に取ることができるので、特に芸人であればボケやトークでスタジオ内が爆笑したら、それは気持ちいいですよ。
一方で“滑った”時には冷んやりした空気を肌でビンビン感じるわけで(苦笑)、そんなヒリヒリした緊張感の中で番組を作っていくのです。
それにテレビの編集はプロのシビアな目で判断されるので、自分がおもしろいと思った言動もバッサリ切られる。オンエアで見て、“アカンかったか〜”と反省して自分の芸がますます磨かれていきます。収録後の芸人同士の反省会も楽しみの一つでしょう。
それはバラエティー番組だけでなくアイドルも同じで、歌番組で観客からの自分に対する声援が少なければ“もっと頑張らなきゃ”と思えますからね」(芸能プロダクション幹部)
コメント機能があるといっても、ユーチューバーは視聴者の表情やリアクションを直に見られず、毎回のように同じメンツで行われる収録では自分の言動がおもしろいかどうかを判断するのは難しい。テレビ業界では、若者世代を取り込むためにトップユーチューバーやインフルエンサーをゲストに起用するトレンドも一時期は生まれたが、爪痕を残した“生き残り”は少数だ。
逆に芸能人にとってYouTubeは欠かせないプラットフォームになりつつあるが、思うように登録者数や再生回数を伸ばせないケースも多々ある。やはり、テレビとYouTube では土壌が違うのかもしれない。
芸能人にとっていちばん怖いこと
そして、宮迫や手越が最も恐れているのが、テレビに映らなくなったことで「世間から忘れられる」ことだとも。
雨上がりの解散報告会後、宮迫に関する様々な記事が飛び交ったことに対し、自身の動画で「100ウソはやめて」とコメントする一方で、「でも、(記事で)やっぱり扱ってはほしい。相手はしてください」と話していた。「この発言が全てだと思います」と芸能ジャーナリストの佐々木博之氏は代弁する。
「“世間から忘れられる、抹消される”こと。これが、芸能人にとっていちばんキツく、恐れていることでしょう。YouTubeはあくまでも一つのプラットフォームであって、誰もが目にするものではありません。一方のテレビは影響力こそ落ちているとはいえ、今もなお老若男女に広く普及しているメディア。そこから姿を消せば話題にならなくなり、世間が忘れるのも思いのほか早い。
また“承認欲求”を満たす環境としては最上位にあるのがテレビだと思います。人気番組に出ていた彼らならなおさらのことで、普段“イッテQ見たよ、アメトーーク見たよ”と声をかけられても、“YouTube見たよ”とはならないでしょう。スポットライトを一度でも浴びた彼らにとって、返り咲きたい思いは強いのではないでしょうか」
いつ飽きられるかの不安
そして、彼らはそもそも“ユーチューバーになりたかった”わけではない。
「もとからユーチューバーとして活躍する人は自身のコンテンツを確立していますが、芸能人にとってYouTubeはあくまで“サブ”、見切りのいいサイドビジネスの部分が強いと思います。その上で、ユーチューバーとしていつまでネタを続けられるか、いつ飽きられるか、という不安は芸能人としての活動以上にのしかかっている。だからテレビに戻りたい、と考えるのも必然なのかもしれません」(佐々木氏)
ヒカルをはじめとして、億を稼ぎだすとも言われているユーチューバー。その収入に魅力を感じて新規参入者が続出。登録者数や再生回数などの数字を伸ばそうと、時に彼らの迷惑行為も取り沙汰される。
「もちろん、テレビも視聴率という数字に一喜一憂するのは間違いありません。でも、数字以上に、大勢の共演者やスタッフと一丸となっておもしろい番組を作る一体感、達成感と充実感は代えがたいものがある。そして手越さんや宮迫さんは“多くの人を喜ばせたい、笑わせたい”という理由もあって芸能人になったはず。
ユーチューバーがそれをできない、とは言いませんが、やはり実際にお客さんを前にしてこそ彼らの才能は発揮されるのではないでしょうか」(前出・芸能プロダクション幹部)
宮迫の相方・蛍原徹は、お客さんを前にした「舞台」に立つことを、『雨上がり決死隊』復帰の第一歩として考えていたという。その気持ちをかえりみずにYouTubeに走ってしまった宮迫。今はその選択に後悔しつつも、またテレビに呼ばれることを願って必死にもがいているのかもしれない。