昨年は、コロナ禍でおうち時間が増えたことで、可燃ゴミから粗大ゴミまで大量のゴミの廃棄が問題になったが、ここ最近はどうなのだろう。世界中で“ゴミ”が問題になる中、ゴミ清掃芸人として活躍するお笑いコンビ「マシンガンズ」の滝沢秀一さんにお話を伺った。
お金持ちエリアのゴミは「ぜんぜん違う」
「外出自粛が始まったころは、体感でゴミの量が1.5~2倍に増えた気がしますね。そのゴミの量と言ったら……人手不足もあり、とにかく大変でしたね」
多く見られたのは、お弁当のカラ容器に、ピザの空き箱、アルコールの瓶や缶、片付けで出た粗大ごみに、段ボール、あとは庭の手入れをして出た葉っぱなど……。
「そのころはウイルスの恐怖からマスクだけでなく、ゴーグルもつけて収集にあたっていたんですけど、汗はダラダラかくし、むしろ熱中症のほうが危険なので、いまはマスクだけです。手洗いやうがいをしっかりすることで、感染は防げています」
最近は、断捨離もひと段落したのかゴミの量はコロナ以前と同程度になっている。ただ、ここにきて、ゴミ捨て場へのマスクのポイ捨てが目立つようになってきたという。長引くコロナに気持ちが緩んできているのかもしれない。
とはいえ、このマスクのポイ捨て、どこのエリアでも見られるわけではない。捨てられているのはズバリ、「比較的お金のない人が住むエリア」。ほかにも、タバコの吸殻やアルコールの空き缶が大量に出ている。
「お金持ちのエリアでは、そういったゴミはほとんど見かけません。実は、一般庶民とお金持ちの家から出るゴミは、ぜんぜん違う。たとえば庶民のゴミで目立つのは、100円ショップの商品やファストファッションの衣類。しかもそれほど着ていないようにみえる新品同様のものばかり。ワンシーズン着たら簡単に捨ててしまうんでしょうね」
これらのゴミはお金持ちエリアでは見かけない。それどころか、そもそものゴミの量が圧倒的に少ないという。
「高級住宅地ほど収集はスムーズに終わります。お金を持っているからこそ、欲しいものをじっくり吟味して買うんでしょうね。愛着がわくから大事に使う。安いからと適当に買うと、ちょっと使っただけで捨てたり、使わなくても安いからいいか~と安易に捨てるのではと」
その人の生活レベルはゴミに表れる……。滝沢さん自身、4年ほど前から「お金持ちのマネをして」ゴミを少なくする生活を実践しているという。
「モノを買うときは思い入れを込めて買う、ゴミになるようなものは極力買わない、生ごみはコンポストで肥料にする、洋服も毎月レンタルで借りる。食べ残しを出さないように、冷蔵庫の中もしっかり管理しています。こうやってごみを減らしていくことで、ムダが減って、お金も貯まるようになりましたね~。そしてなにより、ゴミを捨てないのって心地いいんですよ」
小さな結び目で出すのはやめてほしい
ゴミ清掃員を始めて9年。驚くようなゴミに遭遇することもあるという。
「ゴミ袋にそのままお味噌汁が注がれていたことがありますねー。どうして流しに流さずに?ってびっくりしました」
ほかにも、生きたネズミがそのまま入れられていたことや、牛乳パックにトイレの小を詰めて出してくる人も。
「世の中にはいろんな人がいるのを実感しています。液体関係は、清掃車の回転板に挟まると飛び散るので、僕らが悲惨なことになります……」
では「理想的なゴミの出し方」はあるのだろうか。
「袋の口を結ばずに出す人がいますが、中身がでちゃうと、いまはウイルスをぶちまけてしまう可能性もあるので、やめてほしいです。あと、袋にめいっぱいゴミを入れて“どこで持つの?”ってくらい小さな結び目で出す人も(笑)。8割くらいにしてもらって、しっかりと二重に結んで出してほしいですね」
ゴミは出したら終わり、ではない。人は、“顔の見えない相手”のことは想像しにくいけれど、相手のことを知っていると思いやりをもって行動できる。私たちのゴミの向こうに、日々ゴミと格闘している多くの人がいることを想像すれば、少しでも気持ちのいい世の中になりそうだ。
滝沢秀一(たきざわ・しゅういち)
太田プロダクション所属。西堀亮とお笑いコンビ「マシンガンズ」を結成。'12年に定収入を得るために芸人をやりながらごみ収集会社で働き始める。ごみ清掃員の体験などを発信するTwitterが人気を集め、エッセイ『このゴミは収集できません』など著書多数。'20年には環境省「サステナビリティ広報大使」に就任。
最新刊『日本全国 ごみ清掃員とゴミのちょっといい話』(主婦の友社)
入れ歯を資源として回収する新宿区など、全国の自治体が進めるゴミの工夫をゴミ清掃芸人の視点から紹介。