もはや説明の必要はないだろう。人間を食う鬼たちと“鬼殺隊”と呼ばれる剣士たちとの壮絶な戦いと、大切な人たちとの絆を描いた超ヒットアニメ『鬼滅の刃』。昨年、公開された映画『劇場版 鬼滅の刃 無限列車編』は興行収入400億円を突破。日本映画史の記録を塗り替えた。
「9月25日に、その映画が地上波で初放送。大反響でした。秋からはフジテレビ系列で続編シリーズの放送もスタートしますから、年末にかけて、日本中がまた『鬼滅』一色に盛り上がっていくでしょうね」(テレビ誌編集者)
主人公・竈門炭治郎、その妹で“鬼”の禰豆子、“イノシシの被り物”の二刀流剣士・嘴平伊之助、“炎柱”煉獄杏寿郎、“蟲柱”胡蝶しのぶ、“最強の敵”鬼舞辻無惨……敵味方問わず、個性的、魅力的なキャラクターがひしめく『鬼滅』にあって、ファンから圧倒的な人気を集めているのが“雷の呼吸”我妻善逸だ。
「普段は頼りなくて泣きごとしか言わないヘタレキャラなんですが、ひとたび覚醒すると、鬼を一撃で切り裂いてしまうほどの強さ。そのくせ、底抜けに優しい心の持ち主で。その“ギャップ萌え”はもちろん、演じている声優さん自身が、ちょっと善逸っぽいところも支持を集める理由」(アニメ制作会社関係者)
2人目の子どもが生まれて
それが声優・下野紘。数々の人気アニメ作品に出演するだけでなく、最近はKAT-TUN・亀梨和也主演のドラマ『レッドアイズ 監視捜査班』や人気バラエティー番組、舞台にも出演、歌手としてCDもリリースしている。
「今年、下野さんは“アニメ界のアカデミー賞”と言われる『声優アワード』で“MVS賞”を受賞しました。一般のファンからの投票だけで受賞者を決めるという賞で“主演男優賞よりも価値がある”とも言われています。それを、ぶっちぎりの得票数で獲ったのが下野さん。つまり“今、日本でいちばん人気がある声優”なんです」(前出・アニメ制作会社関係者)
実は、善逸――いや、下野には、ファンには見せないもうひとつの“顔”が。
「実は下野さん、結婚しているんです。この夏、2人目のお子さんも生まれたそうですよ」(声優事務所関係者)
これまでファンの間でも“結婚してるの?”“いや、してない!”と、たびたび論争が繰り広げられてきた下野だが、やっぱり!?
9月下旬、秋晴れのある日、下野の自宅を訪ねた。昼下がり、自転車に乗った下野の姿が――ふと見ると、下野の胸には抱っこ紐にすっぽり収まった小さな赤ちゃん! もうひとりの子ども、そして妻とおぼしき小柄な女性と、家族4人で自転車に乗って近所の公園へ。すっかり2児のパパの顔で、つかの間のオフを家族と楽しんだようだ。
翌日の夜、仕事から帰ってきた下野に声をかけると、思いのほか落ち着いた様子で、
「……とても大事な話なので、ここではなくて、きちんとお話ししたいのですが」
そこで日を改めて、所属事務所に下野を訪ねた。
「今、子どもは2人です。2人目はこの夏、生まれました。最近はなかなかできませんが、休みの日に妻や子どもと出かけるのは、わりといつものことなんです。“下野だ”ってバレないかって? ないですねぇ(苦笑)。電車に乗っていても道を歩いていても、本当に気づかれなくて。親しいパパ友やママ友の中には、僕の仕事を知っている方もいますけど、みんな、やっぱり子どものことが中心ですから」
下野を支えた妻のアドバイス
下野が結婚したのは、もう10年以上も前だという。
「出会ってすぐに友だちになって。そこから、ごく自然にお付き合いするようになったんです。1年か2年かたったところで結婚して。僕は最初から結婚を意識していました。奥さんは飾らない人ですね。いいことも悪いことも、思ったことを正直に僕に言ってくれる。そういうところに惹かれたのかな……」
20代で家庭は持ったが、生活は楽ではなかった。
「声優って、役をもらえるかどうかは全部オーディションで決まるんです。受けたオーディションのうち“2割受かったらいいほう”という世界で。20代後半までは、なかなか受からなくて本当に苦しくて。それなのに、僕よりも下の子たちが出てきたり……。20代は、ずっと焦り続けていましたね」
そんな下野を支えたのは、妻のアドバイスだった。
「僕の出演作品をチェックしてくれて、芝居について“もっとこういう感じのほうがいいんじゃない”とか、けっこうハッキリ(苦笑)。最初のころは奥さんの意見を全然聞かなかったんです。でもやっぱり、外から聞いている人の意見って正しくて。妻の意見を受け入れるようになってから、少しずつオーディションにも受かるようになりましたし、自分自身の芝居も俯瞰して見られるようになって」
子どもも、父親の仕事を理解しているという。
「一緒に見ることは、ほとんどないですけど、声で“パパだ”とわかるみたい。ニヤッとしながら“出てたね”って言ってくれたりします。子どもと妻は守っていくべき存在で、僕に力を与えてくれる存在でもあり、いるのが当たり前でもあって……。本当に大切な存在です」
だが、いったいなぜ公表してこなかったのか?
「奥さんと結婚した当時、僕自身に“見られる存在”だという意識がまったくなかったんです。10数年前と今とで、声優という仕事の幅も注目のされ方も全然違いましたし。もちろん悩んだことはあります。奥さんと“公表しようか”という話になったこともあります。でも、そのたびに“それも何か違うよね”という結論になって。結婚も子どものことも、僕が演じているキャラクターたちには全然関係のない話なので……」
とはいえ、ファンに“本当のことを伝えていない”後ろめたさもあったに違いない。
「結婚して家族がいるということをファンのみなさんにお伝えすることになって、きっと驚かれたと思います。少なからずショックを受けられた方もいらっしゃると思うんです。それは本当に申し訳ないなと思います。ただ、これからも僕自身、声優として頑張っていきたいと思っていますし、何より、僕が演じるキャラクターたちも、もっと頑張っていくと思います。彼らと作品を、これからも応援してもらえたらありがたいです」
善逸は、やっぱり底抜けに優しい男だった。