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 昨今、ツイッターを代表としたSNSで、一般人を「ブロック」する芸能人・有名人が少なくない。代表的なのは、総裁選にも出馬した河野太郎、政治的発言が増加中のロンドンブーツ1号2号の田村淳ら。確かに有名人には、誹謗中傷も含めた“クソリプ”は多い。しかし、彼らは「一度もやりとりをしていない」者すら、“即ブロック”するということも……。彼らはなぜすぐブロックするのか、その状況と心理――。

《田村淳に絡んだことないのにブロックされてるw どうして? なんで? 》

《河野太郎にブロックされた! どうでもいいけど。しかし絡んだことないぞ。》

 一般人にとっても便利なツールであるSNSだが、それ以上に重要視しているのは芸能人や政治家といった有名人たち。情報発信・ファン獲得のためにSNSは重要なツールだ。しかし、そんな彼らが今、続々と“一般人”を『ブロック』(相手に自分の投稿を見られなくする機能)している。その代表が冒頭の2人。

「ほかにも政治家でいうと蓮舫さんや芸人ではバカリズムさんなどが、ツイッターで“すぐブロックする”ことで有名。バカリズムさんは理由について“イラッとしたらブロックする”と発言していました」(スポーツ紙記者)

 彼らはなぜ一般人をSNSでブロックするのか。

「芸能人に限りませんが、ある程度フォロワーがいる人は、いわゆる“クソリプ”が非常に多く、ダメージが大きいので、それを受けたくないという心理でしょう」

 そう話すのは、SNSに詳しいウェブメディア評論家の落合正和氏。『クソリプ』とは、“クソなリプライ(返信)”のこと。投稿されたユーザーが誹謗中傷などを不快に感じるリプライを指す。

「フォロワーが数千人程度の私でも、クソリプはしょっちゅうきます。ある程度のフォロワーがいて情報発信している人がブロックを多用するというのはすごく理解できます。“発信しているんだから当たり前でしょ”という有名税のような意見もありますが、ネガティブなコミュニケーションはとりたくないと考えるのは当然のことだと思います」(落合氏、以下同)

絡んでいない人もブロックする心理

 ネット、そしてSNSの普及によって有名人たちの仕事には変化が生まれた。

「テレビの露出があれば食べていける時代ではなくなり、SNSなどでファンを獲得していかないと生き残れなくなってきています。ある程度、自分でファンやそのコミュニティーを作っていかなくてはならない。そうなったときにやはりクソリプは、営業上の不利益が多くなる。例えば“こういう発信をしたら、いろんなツッコミやヤジが飛んでくるんじゃないか”というように、自分が発信することに対してハードルが上がってしまう。発信することが億劫になってしまったり、恐怖感が生まれかねません

 クソリプを送った人をブロックする心理はわかるが、冒頭の田村淳や河野のように、“絡んでいない”状態でブロックする心理とは?

河野太郎・田村淳に絡む前にブロックされた一般人(ツイッターより)

ブロックしている方の判断の部分になりますが、過去のその人の発言を見てコミュニケーションをとりたくないなとの判断でしょう。ちょっとヘイトじみたことをしていたり、フェイクニュース的な事実とは異なるような発言をしていたり。政治家からするとフェイクを巻き散らされたりすることは大迷惑。本来は支持者だった人が離れていってしまう可能性もある。このような人とコミュニケーションすること自体、非常にマイナスになるということですね」

 河野はブロックに対して、「ブロックするのはフォロワーさんにひどいリプを見せたくないから。だから私は堂々とブロックします」と発言。

“ブロックしても、そのリプライはほかのユーザーに見える”ということをジャーナリストの津田大介さんが指摘していました。それも正しいのですが、そこで河野さんとブロック対象者間のコミュニケーションが遮断されるというメリットも

 ブロックされた相手は河野のツイートが見られなくなるので、それ以上やりとりはなくなる。結果それ以上、ほかのユーザーが、罵詈雑言や誹謗中傷が飛び交うような状態が極力見えないようになる。

河野さんのおっしゃっていることは間違いではない。とは思いつつも、政治家がコミュニケーションをとらないというのは、どういうことなんだという一面ももちろんあると思います。明らかに誹謗中傷的なものは政治家であってもコミュニケーションをとる必要はないでしょう。ただ、ではそこの判断はどこなんだとなると難しい。線引きはなかなかできない。どうしてもユーザー、つまり河野さんの判断になる。そうすると、“これは誹謗中傷じゃなくてあなたへの意見でしょ”というものまでブロックすることも当然出てきてしまう。このあたりの判断は難しいですよね……」

ブロック多用は米では違憲判断も

 ちなみに同じようにブロックを多用する政治家がいた。前アメリカ大統領のトランプだ。彼はツイッターで自分に批判的なコメントをした人をブロックしていた。それは“言論の自由”の侵害だとして、ユーザーたちが訴え、結果“ブロックは違憲”という司法判断がなされている。

「日本でも今後そういった裁判が行われる可能性というのは十分にあるのではないかと思います。ただアメリカと日本でやはり法律が違う。アメリカという国は自由や透明性を誇りにしている国でもありますので、その部分で日本人との解釈や価値観の違いは出てくるのかと思います」

 河野のフォロワーは現在、240万人超、田村淳は320万人近い。

「正直なところクソリプの嵐だと思います。とんでもない数のクソリプが飛んできて、まともなコミュニケーションができないから封鎖する。自分の支持者とかファンの人たちとまともにコミュニケーションしようと思ったら、そういったものを遮らないととてもじゃないけどできない。私が2人のような立場だったとしても、そうするだろうなと思います」

 コロナ禍の影響で情報収集用としてツイッターの利用者が増えているという。有名人も一般人も、ブロックに気をつけて……。