新型コロナウイルス、ワクチン接種の様子

《私も打ちました》
《副反応のほとんどは数日で回復します》
《あなたとあなたの大切な人を守るためにも》

 日々、テレビを中心に流れる政府や地方自治体による、新型コロナウイルスのワクチン接種“お願い”のコマーシャル。10月4日、政府は2回目のワクチン接種を終えた人の割合が、全国民の60.9%に達したと発表した。

 しかし、現時点でも2回目どころか、1回も接種せず、“打たない”と決めた人も少なからずいる。

 その“理由”で、やむを得ないのは以下になるだろう。

ワクチン接種後に起こる、急激で重いアレルギー反応を『アナフィラキシー』と呼ぶことは、広く知られるようになりました。急速に血圧低下や呼吸困難が生じて、放置すれば死に至るというものです」

 そう話すのは、新潟大学名誉教授で医療統計の第一人者と呼ばれる医学博士の岡田正彦先生。アナフィラキシーだけでなく、接種後は、接種部位の腫れや痛み、発熱や倦怠感といった“副反応”が高頻度で起こることが報告されている。

医療の結末には、効果と副作用の2つしかありません。“副反応”と、耳ざわりの良い言葉が意図的に使われており、“副作用”と呼ぶのが正しいと私は考えます」(岡田先生、以下同)

“ワクハラ”に悩む人たち

 医師である岡田先生の元には、ワクチン接種についてのさまざまな悩みがメールなどで届くという。そのほとんどは、それぞれの理由で「ワクチンを打たない」と考えている人からだ。

【ワクチンを受けたくないが、職場で強要されている】

【アレルギー体質だと言っても、信じてくれない】

【組織の中で受けていないのは自分だけで、周りの目が恐ろしい】

【もし集団感染が起こったらお前のせいだ、と言われた】

【医療人として失格だとなじられた】

【周囲の目が急によそよそしくなった】

【毎日、上司から人格を否定するような言葉を投げかけられている】

【接種を拒否することは許されない、との指示書が回ってきた】

 これらはその一部。その“ハラスメント”は、勤務先などの“外”ではなく、“内”でも起こっている。

【祖父母から、孫のために早く打つように言われていて、ノイローゼになりそう】

【会社でワクチンを接種した夫から、強く“打て”と責められる】

【自分は打ちたくないし、もちろん子どもにも打たせたくない。しかし、このままでは子どもが学校でいじめを受けるのではないか】

【授乳中だけれど、接種後、赤ちゃんに本当に影響はないのか正しい情報が知りたい。テレビで言っていることは、あまりに一方的で信用できない】

【自分が感染してしまうと、子どもの面倒を見てくれる人がいない。でも、ワクチンの副作用で何日も寝込んだり、出血が止まらなくなったという人の話も聞いていて、まるで究極の選択を迫られているよう。どうしたらいいかわからない】

副作用のリスクのほうが高い人も

「私のところに届くワクチンに関しての悩みは、1つが“打とうか打たまいか”悩んでいる。出来て間もないワクチンだということは皆さん知っていますから、副作用が心配でどうしたらいいのかわからない。もう1つは、自分は“打たない”と決めているけど、周りからの同調圧力が強くて悩んでいる。これは意外と家庭内のものも少なくありません。あとは授乳中であったり子育て中のママさんから悩みも多いです」(岡田先生)

 ワクチン接種に悩む人に、どのような言葉をかけるのか。

「前提として、医療相談というのは法律的にやってはいけない行為。対面で診察をしていないと判断やアドバイスをしてはいけません。 “ワクチンを打つべきかやべるべきか”という質問に対しては、“どうしなさい”ということは決して言わないことにしています。

 打つことのメリット、打たないことのメリットはそれぞれ自分の体質や環境によってまるで違う。住んでいる市区町村によって感染者数はまったく違う。そういったことをもろもろ考えた上で、打ったほうがプラスになるのか、打たないほうがプラスになるのかは、占いのようなもので、第三者にはわからないこと。

 そのため“ご自分でご判断ください”という言い方に統一しています。メールや電話だけでなく患者さんからも同じようなことを聞かれますが、同じ答えをしています。あくまで法律上任意ですから、第三者が言うべきではないということはご理解くださいと」

 欧米では参考になるような研究やデータが発表されているという。

「8月31日付けで発表されたアメリカの論文があります。“過去にアナフィラキシーを起こしたことがある”、“複数の薬に対してあきらかなアレルギーがある”、“蕁麻疹(じんましん)や喘息など複数の異なるタイプのアレルギー疾患がある”などを満たす429人に、ワクチンを接種してもらい、追跡調査を行ったものです。倫理委員会の許可を取り、もちろん参加者に同意をもらった上でのものです。日本ではこういった研究はまったくと言っていいほどありません。

 この結果2回ワクチンを接種した人の3人にアナフィラキシーが起こった。割合にして0.7%です。これを多いと見るか少ないと見るか……」

 ワクチンの接種に関して、“たまに重症のアナフィラキシーが起こるけど、ごく稀なものだから心配いらない。それよりコロナのほうが怖いでしょ?”という意見・論理の人が多い。

「確かに母数が、“過去にアナフィラキシーの経験がある”というような特殊な人たちなので、そのわりに0.7%は少ないんじゃないかとも言えます。ただ、多いか少ないかは第三者が言うべきことではなく、もしかしたら自分がその1人かもしれない。この試験では、専門医がそばに控え、万全の処置ができる態勢を整えていたことから幸い亡くなった人はいなかったですが、アナフィラキシーとは大変危険な状態です。私はこの数字は多いと考えます。

 コロナの感染は、ほぼ同居家族以外との飲食で起こっていることがわかっています。つまり、それをしていない人の感染リスクは限りなくゼロに近い。一方ワクチンを受けることのリスクは、1つ1つは稀ですが、さまざまなリスクを全部合わせると決して稀ではないことがわかっている。そのリスクと天秤にかけて自分で判断すべきだと思いますが、感染するリスクが極めて低いような人は、ワクチンによる副作用のほうが大きいと考えます」

自衛隊で行われた大規模摂取センターの様子

ワクチン接種は安全と言いきれない

 岡田先生によれば上記とは別の調査で、ワクチンでアナフィラキシーを起こした人は、“過去にも同じ症状があったとは限らない”ことがわかっているという。

「つまり、アナフィラキシーの経験が一度もないのに、起こってしまった人もいるということ。こうなると予測不可能です。ワクチンは個人の判断です。しかし、こういった事実もあり、ワクチン接種は“安全だ”と言いきっちゃいけないのではないかというのが私の意見です。

 また、身体的なリスクもさることながら、人間の行動をものすごく決めつけてしまっているような状況も問題です。ワクチンを打ちたくないという人は、このご時世なかなかその声を上げられません。しかし、私がホームページで海外の研究などの情報を発信していたら、かなりの人からそのような声が届けられました。打たないという“判断”をした人の心が傷つけられたりと、社会の分断が起こっている。

 国などの体制側が一方的な判断を押しつけるようなことは、太平洋戦争以来と言っていいのではないでしょうか。少しでもアレルギー体質などがあってワクチンを受けたくない人は、そう申告すべきであり、それを認めない職場の責任者や担当医は、人命を脅かす罪を負ったことになるのではないでしょうか」

 打つも打たないもその人の自由。しかし、一択しか選べない、その一択を選ばなければ迫害されるような二択は、まったく自由ではないだろう。