“実写化は不可能”と言われ続けてきた国民的人気漫画『キン肉マン』。物語は、その実写映画化の発表会見で幕を開ける。しかも監督に園子温、プロデューサー&出演に綾野剛。眞栄田郷敦は、綾野から声をかけられウォーズマン役を快諾するも、現場は大問題を抱えていて……。
ドキュメンタリードラマ『キン肉マン THE LOST LEGEND』で演じるのは本人役。
「最初はどうなるか想像もつかなくて。監督(松江哲明)の別のドキュメンタリードラマ『山田孝之の東京都北区赤羽』を見たら、どこまでがリアルで、どこまでがドラマなのかが逆にもっとわかんなくなって。
不安はあったんですが、いざクランクインしてみると、構成なんてどうでもいいんだな、と(笑)」
流れや押さえるべきポイントなどの構成は決められているが、それ以外は役者に託されるスタイルだ。
「普通のドラマや映画とは違い、待ち時間もほとんどなく。衣装は自前、メイクもほぼなし。現場に行ったらすぐカメラが回って、その場を生きて帰ってくる感じ」
ゆえに、撮影現場でのエピソードを尋ねられても、作品全体としか言いようがないと笑う。
「僕としては設定はドラマでも、葛藤、不安、勢い……それらの感情は全部リアル。シュールで笑える部分もあって、泣けたり、感情が熱くなる部分もあり、とても不思議な感覚になる作品です。あと、エンディングでは僕がサックスを吹いています。本当にエンタメが詰まった作品なので、ぜひ、見てもらいたいなと思います」
僕にとっての“超人”は父親
劇中で眞栄田が取り組むのが、ウォーズマン役。父親は機械超人、母親は人間というロボ超人で、残忍で冷酷だったが、キン肉マンに敗れてからは改心し、屈指の人気キャラに。
「けっこう共通するところはあるなと思っていて。父親(千葉真一さん)がすごく特殊な存在で。その影響で、自分はちょっと特別な目で見られるような関係性は似てるなと思うし。引っ込み思案で、グイグイ行くタイプじゃないのも似てる。母親が大好きなところも。そして、自分のいた世界から抜け出して、出会った人の中でどんどん変わっていくっていうのも。僕は、アメリカから日本に帰ってきて、いろんな出会いをして、今があるので」
『キン肉マン』は言わずと知れたヒーロー漫画だが、眞栄田にとってのヒーローは?
「ヒーローというか、目指すものはあまりないんですけど……。僕にとって“超人は誰ですか?”と聞かれたら、父親だと答えます。82歳を越えても、いつでも夢と目標があって。常に上を見ていて。あとは、身体が僕よりデカくて、メチャすげえ! 80代であれをやれと言われたら絶対に無理だな、と思うことがたくさんあって。そんなところが、やっぱり超人かなって思います」
“いつ辞めようか”と思うほどきつかった
'21年は『教場II』、『星になりたかった君と』、『レンアイ漫画家』、『プロミス・シンデレラ』、そして主演の本作。立て続けにドラマへ出演している。俳優デビューは'19年。たった2年でこの躍進と人気は驚くばかり。俳優としての自信を大きくしているのでは?
「デビューしてからずっと芝居をするのがつらかったんですよね」
意外すぎる答えが返ってきた。
「実力も自信もないし。“いつ辞めようか”っていうくらい、きつかったですね。役者としての考え方や向き合い方が変わったのが、まさにこの『キン肉マン THE LOST LEGEND』で。綾野さんとの出会いも大きかったです」
ドキュメンタリードラマゆえに、綾野が予想を超えた芝居をぶつけてくる驚き。さらには作品のために全力を捧げる姿にも刺激を受けたと振り返る。
「今までは、正解はないのに正解を求めていた自分がいて。台本を読み込み、“こうやらないといけない”と思い込んでいた。でもこの作品で、本当にその場を生きている実感が得られた。生きているな、楽しいなって。同時に今までにはあまりなかった“こうやりたい”という気持ちが生まれてきて」
放送の順番は逆になるが、今作のクランクアップ後は『プロミス・シンデレラ』の撮影に。二階堂ふみからも刺激を受けたという。
「改めて、“自分のやりたいようにやっていいんだな”とすごく思わされて。自分の中の変化が完結しました。今は“こうやりたい”を実践しています。だから今は、演じることがすごく楽しいです」
見た目は大きく変わらない。しかし、俳優・眞栄田郷敦は生まれ変わっていた――。
世代じゃないけどハマった!
連載開始は'79年。コミックの累計売上部数は7700万部超。アニメの最高視聴率は21.6%。昭和の男児たちを熱狂させた『キン肉マン』。「僕は世代じゃないんですが、その存在は知っていました。なぜか家に映画『キン肉マンII世』のDVDがあって、それは見ていました。
今回の撮影と同時進行で読み進めたんですが、最初はめっちゃふざけているな、という印象で(笑)。王道のストーリー展開なんですが、どんどんハマっていって。いつもおちゃらけているキン肉マンがすごく仲間思いだったり、悪が正義になる瞬間があったり。そういうのにヤラれましたね。
この作品の中でたくさんの『キン肉マン』ファンに会うんですが、とにかく熱量がすごい。でも、その熱量になっていってる自分がいましたね(笑)」
WOWOWオリジナルドラマ
『キン肉マン THE LOST LEGEND』
毎週金曜夜11:30〜(WOWOWプライム)
放送中 ※WOWOWオンデマンドでも配信中
スタイリング/MASAYA(ADDICT_CASE)
衣装協力/RABD、both