今年7月、コスプレイヤー・えなこがテレビで自らの年収を“5000万円超え”と明かし、お茶の間をざわつかせた。え、コスプレイヤーってそんなに稼げるの……?
アラフィフである筆者は“コスチュームプレイ”と聞くと若干エロな妄想をしてしまう。だが、アニメ『鬼滅の刃』のブーム以降、SNSで人気キャラに扮する有名人やハロウィンでキャラの仮装をする一般人を見かけ、“コスプレ”そのものがとても身近な存在になってきたと感じる。
そもそもコスプレイヤーって何? コスプレ専門誌の先駆け的存在『コスプレイモード』編集部で話を伺った。
麻生政権時代に市民権を得たコスプレ
「コスプレというとアラフィフ世代には『うる星やつら』のラムちゃんなど、セクシーなイメージ。以前は世間から、“露出癖のある、特殊な趣味の人”のように扱われていた。なのでコスプレイヤーたちも、本当の自分を隠すことが多かったんですよね」(編集長・大門太郎さん、以下同)
それが一般に認知されるようになったのは、麻生政権時代のことだ。
「麻生さんが漫画好きなこともあり、アニメやコスプレを含めてKAWAII文化、クールジャパンとして世界に発信していったんです。それが海外でブームとなり、日本には逆輸入された。社会的に認知され、関連イベントも増え、市民権を得たんです」
2007年~2009年ごろ、隠れコスプレイヤーとして存在していた彼らが、コスプレイヤーとして堂々と世の中に姿を現し始めた。コスプレイモード副編集長でありながら、現役の人気コスプレイヤーとして活躍する千都ちひろさんも、その1人だ。コスプレ黎明期から始め、20代でありながら、すでにレイヤー歴15年のベテランだ。
「初めてのコスプレは中1。秋葉原のメイドカフェの店員さんに憧れたのがきっかけでした」(千都さん、以下同)
当時、コスプレ用衣装はドンキホーテや東急ハンズで売られるような“ペラペラのパーティー衣装”ばかり。
「だから衣装を自作するようになりました。高校生になってからは毎週、秋葉原のホコ天で踊ったり、写真を撮ったりしていましたね」
当時のレイヤーたちは、コスプレ専門SNS『Cure』や『コスプレイヤーズアーカイブ』に写真を投稿し、評価を得ることで仲間との交流を楽しんでいた。
人気レイヤー兼、雑誌編集者の千都さん
そして時代はガラケーからスマホに変わっていった。写真投稿の場がコスプレ専門SNSからTwitterに変わったことで、一般の人の目に触れることも多くなった。それと同時に「レイヤー全体のレベルが急激に上がった気がします」(大門さん)
その頃、えなこや、今も人気を誇るレイヤーが多数登場している。
「えなこ以外にも宮本彩希、火将ロシエル、五木あきらなど、神7的な存在の人気レイヤーがいます。職業として食べていけるのは、ほぼグラビアアイドル的な活動をする彼女たちぐらいでしょう」(大門さん)
実際、千都さんもフォロワー数10万人を超える人気レイヤーでありながら、雑誌編集者が本業だ。
「たしかに今はレイヤーもファンイベントを開いたりインフルエンサーになったりと多様化している。グラ嬢よりコス嬢のほうが個性が出せておいしいと思う手合いがいるのも否めません」(大門さん)
そのひとつがアイドルコスプレイヤー。過激なセクシー衣装で一定のファンを持ち、中にはマンツーマンのイベントで月100万円稼ぐ人も。だが一方で、クオリティーの高い衣装を自作し、ロケ地やシーンにこだわった写真を投稿する千都さんのコスプレイヤーとしての収益は、多い時でも月10万円程度。なぜなら版権コスプレで収益を得るのはタブーとされているからだ。
多忙な本業をこなしながらも、そこまで夢中になれるコスプレの魅力とは?
「コスプレは最大のファンアートだと思ってます。大好きなキャラクターはもともと自分より数億倍可愛い存在。コスプレをすることで、少しでもそのキャラに近づきたい。誰かに評価されるより、キャラへの愛をコスプレで最大に表現して、自分自身が満足したいんです」(千都さん)
コスプレの楽しみ方は人それぞれでいいんです、と語る千都さん。楽しみ方が自由なら、じゃあアラフィフがコスプレしてもいい!?
「コスプレは決まりがない。ハマると卒業できない趣味なので、もちろん年齢制限もないですし! 今からぜひトライしてみて」(大門さん)
さすがにリアルでは恥ずかしいけれど、今のアプリの画像加工技術はハンパない。推しのキャラに扮して写真を投稿してみる趣味──アラフィフ世代でもデビューできる日が来るのかもしれない。
千都さんのとある1日
7:00 起床。朝食はヨーグルトやプロテインが多い。
10:00 出社。企画や取材など。ライターとのやりとりで、エンドレスLINE。
13:00 昼休み。会社周辺はランチが高いので、もっぱらコンビニ。食後に15分間、デスクで昼寝するのがルーティン。
14:00 仕事。企画出し、原稿書き、キャスティング連絡など。
19:00 定時はこの時間だが、残業の日がほとんど。
22:00 帰宅。ハイボールで晩酌する日も。お風呂に入りながら今期のアニメをチェック。
1:00 就寝。美肌のため、大体これくらいには寝るようにしている。
「やはりコスプレイヤーたるもの新作アニメはおさえつつ、とはいえ、美容のために夜寝て朝起きる生活は崩さないようにしています」(千都さん)
千都さんのコスプレ関連収支
《収入例》
・ファンイベント、グッズ収入=2~10万円(1回)
・パチンコ、競馬など公営ギャンブルでの営業=約10万円(1日)
・1対1の撮影会=約5万円(1日)
・企業コンパニオン=5~10万円(1日)
平均収入額=約10万円(月額)
「コミケのあるなしによりますが(笑)、繁忙期と閑散期があります。平均でならすとこれくらい」(千都さん)
《支出例》
・新着衣装の生地代15000円~
・靴代5000円~
・ウィッグ代3000円~
・カラコン代2000円~
・その他の小物代5000円~
・撮影ロケ地、ロケハン代や交通費10000円程度
平均支出額=約5万円(月額)
「“趣味代”として毎月5万円の予算をとっています。それをオーバーしない範囲で生地などを選びます」(千都さん)
千都さんの推しキャラ!
「たれ目が性癖なので、意中の人はツイステ(ツイステッド・ワンダーランド)のフロイド・リーチ君です。今日のネイルも彼のイメージで作っていますし、先日は彼のぬい(ぬいぐるみ)とオソロの水着を自作してハワイアンズでダブルデートしてきました♪ あっ全然同担OKです、牽制とかではないです。もちろん彼氏は脳内にしかいません。あっすみません、萌え語りになると長くなってしまって。早口じゃなかったですか? オタクなのでごめんなさい」(千都さん)
千都さんの作品!
「服飾系の大学を出ているので、コスプレの衣装はなるべく自作するようにしています。いままで作った作品は100着超え! すべてケースに入れて保管してます。部屋はリビングと寝室のほか、ミシンなどがある衣装制作用の作業部屋も」(千都さん)
《取材・文=安川ヤス子》