遠方に住む高齢の親が気になる人は多い。そんなニーズにこたえるべく、遠隔でその様子がわかる「訪問型」「電話型」「センサー&アプリ型」などさまざまな“見守り”が展開されている。だが親からしたら大きなお世話、監視されているようで嫌だ、との声も。お互いにストレスなく、いい距離感で安否確認できる最新サービスを集めてみた。
安心できる見守りを一緒に考えることが大切
離れて暮らす家族に会うのがコロナ禍では難しい昨今。高齢の家族を遠隔で見守れるサービスの需要が急増。内容も進化している。
そんな“見守りサービス”のタイプは大きく3つ。実際に人が自宅を訪れる「訪問型」、電話で状況を確認する「電話型」、機器を使って自宅の様子などをスマホの専用アプリに知らせる「センサー&アプリ型」。
遠距離介護事情に詳しい太田差惠子さんは、“どんな頻度で見守りをしたいか、見守りに何を望むのかを考えて選ぶべき”とアドバイスする。
「訪問型なら多くても週1~2回、電話型なら毎日連絡を取ってくれるサービスもあり、家族以外の人とのやりとりが刺激になる場合もあります。一方、日常の変化を知りたいなら、センサー&アプリ型が有効。リビングや寝室、トイレなどにセンサーを付けることで、離れた家族の生活パターンがわかり、体調の変化にも気づきやすいです」(太田さん、以下同)
見守りサービスを利用する際には、見守られる親世代との話し合いも大切だ。
「特に生活の様子が映像などで伝わるのは、親が“監視されている、見張られている”と嫌な気持ちになる場合が。センサー&アプリ型など、電気を使用した、携帯を使用したなどアクションだけわかるものや、監視感が和らぐかわいいロボット型などもあるので、勝手に決めるのではなく親が受け入れやすいサービスを一緒に選ぶことが重要。
一度トライしてみて“気に入らなければやめればいい”くらいの気持ちで始めてみては」
最近は、見守りロボットの貸し出しや配食時の安否確認サービスの提供だけでなく、ふるさと納税の返礼品のひとつとして見守りサービスを提供するなど自治体の取り組みも多様化している。
「まずは居住する自治体のサービスを確認してみましょう。民間でも手ごろな価格のサービスや製品が充実しているので情報の収集を。気軽に行き来ができない昨今、利用することで大きな安心につながります。
また、今後、さまざまな介護サービスを使うことを見据えて、介護の第一歩として利用するのも、親と子、お互いのためにもよいと思います」
●自治体で始まる新たな取り組み< 藤枝市の見守りサービスがすごい! >
静岡県藤枝市では65歳以上の単身世帯などに昨年10月から見守りロボット「パペロ」の貸与を開始。もともと緊急通報システムによる安否確認を行っていたが、災害情報などを伝える手段にもなりうると導入を決めた。
「利用者の約6割は介護認定者。1日3回、パペロが高齢者の写真を撮影して家族に送ってくれます」(地域包括ケア推進課・鈴木侃太さん、以下同)。
写真が来ないので訪問したら、親が倒れており、受診につながったという事例も。また「見守りだけでなく、ディスプレイと連動して藤枝市オリジナルの介護予防体操の映像を流し、運動を促すことができるのも利点。ロボットとの会話や体操が日課となり規則正しい生活になっているようです」
注目の見守りサービス
“電球をかえるだけ”など、生活を監視されている感じを与えることもなく、見守る側も見守られる側も手軽に利用可能。月々の利用料金もワンコイン程度からで、お財布にも安心!
※別途初期費用として事務手数料などがかかる
◆医療・介護のプロに身体の心配事も相談OK【東京ガス】「くらし見守りサービス(自宅・家族の見守り)」(センサー&アプリ型)
トイレドアなど毎日使うドアにセンサーを設置し、ドアの開け閉めをセンサーが感知、スマホに通知。見守る側の家族はスマホアプリで気になった時に開閉状況を確認したり、開閉時にプッシュ通知を受け取ることで暮らしぶりを確認できる。さらに身体の心配事を医療・介護専門資格を持った相談員にいつでも相談ができるサービスも。
・太田さん【おすすめポイント】
親宅にインターネット回線等の必要もなく、センサー設置は大がかりな工事も要らないため、設置負担がかからないのもいいですね
(問)東京ガス【TEL】0120-117744
ロボとのやりとりで日々元気に
◆スマホの利用状況で家族の安否がわかる【ソフトバンク】「みまもりサービス」
(アプリ型)
見守る側、見守られる側がそれぞれスマホに専用アプリを設定するだけ。見守られる側のスマホのロック解除や充電の利用履歴が見守る側のアプリに通知され、一定時間スマホの利用がないと自動で安否確認電話を発信する。「みまもり電池(R)」(別売り)との連動も可能
・太田さん【おすすめポイント】
家族がスマホを使わなかったら自動的に電話をしてくれ、応答がない場合のみ通知してくれるのは便利。月々500円ほどで利用できるというのも始めやすいです
(問)ソフトバンク https://mimamori.mb.softbank.jp/
◆キュートなロボが話しかけて楽しく見守り【Powered by ネコリコ】BOCCO emo LTEモデル(相互通信型)
見守る側が専用アプリに入力したメッセージを見守られる家族に音声で話しかけてくれ、その返答を録音して送ってくれるコミュニケーションロボ。リマインダー機能でゴミ出しの日を知らせたり、部屋の温度や湿度などを計測して熱中症などの危険も教えてくれる
・太田さん【おすすめポイント】
「お薬飲んだ?」といったことも聞いてくれ、本当にかわいい! ロボとのやりとりが生活の“ハリ”になるし、あまり見守り的な雰囲気を感じさせないので楽しく利用できます
(問)ネコリコ https://www.necolico.co.jp/emo/
“生活の監視”にならない見守りグッズ
◆センサーの設置も代理訪問も全部お任せ【ヤマト運輸】「見守りサービスあんしんハローライトプラン」(センサー&訪問型)
ヤマト運輸のスタッフが自宅を訪れ、トイレや洗面所などの電球を「Hello Light」に交換。前日朝9時から24時間電球のオン・オフがない場合に異常を検知し、当日朝9~10時にメールでお知らせ。心配なときはヤマト運輸のスタッフに代理訪問を依頼できる。
・太田さん【おすすめポイント】
離れた場所に住んでいたら、すぐに駆けつけるのは難しい。だからこそ、異変を検知してくれるところから代理訪問までが一括になっているサービスは心強い
(問)ヤマト運輸 【TEL】0120-545-425
リモコンの電池を換えて生活リズムを把握 ◆【MaBeee】みまもり電池(R)「家族みまもりサービス」(センサー&アプリ型)
テレビやエアコン、照明のリモコンなど単三電池を使用する家電の電池を通信機能を備えた「みまもり電池R」に換えるだけ。専用アプリに家電の使用状況を知らせてくれる。アプリ内には、家電の使用頻度のグラフ化や家族とのチャット機能も。家族みんなで見守りを共有できる。
・太田さん【おすすめポイント】
電池だけ換えればOKというのは簡単。テレビのリモコンに入れておけば、1日でテレビをどれくらい見ているかわかるので、生活リズムの把握にもなる
(問)ノバルス https://mimamori.novars.jp/
◆毎日使う冷蔵庫の開閉で異変をキャッチ【ネコリコ】まもりこ(センサー&アプリ型)
冷蔵庫に専用の端末を設置するだけで、ネット回線不要で見守りスタート。冷蔵庫のドアの開閉を検知し、一定時間動きがなく異常と判定した場合のみ専用のスマホアプリに通知してくれる。異変を感知したときだけ知らせてくれるので、見守る側の負担が軽減
・太田さん【 おすすめポイント 】
「冷蔵庫の開閉だけ。しかも何か異変があったときだけ」というミニマムな見守りであれば、“生活の監視”からは程遠く、受け入れられやすい!
(問)ネコリコ https://www.necolico.co.jp/mamolico/
介護・暮らしジャーナリスト。NPO法人「パオッコ~離れて暮らす親のケアを考える会~」理事長。遠距離介護、介護とお金についてメディア等で発信。著書に『遠距離介護で自滅しない選択』(日本経済新聞出版)など。
《取材・文/河端直子》