「ひとり一人のお客さまが安心してご利用できるよう、みなさまのご協力をお願いします」
千葉県市川市のJR本八幡駅では、こんな構内アナウンスが朝、昼、夕方と1日に3回ほど流れている。この声の主は千葉県を中心に活躍していたロックミュージシャンのJAGUAR(ジャガー)さんだ。
地球から故郷の星に“帰還”
彼は1980年代から地元のチバテレビで番組枠5分を買いとって『HELLO JAGUAR』という自身の音楽番組を放送。近年は『月曜から夜ふかし』(日本テレビ系)に異色のご当地ミュージシャンとして取り上げられて人気を博す。さらに映画『翔んで埼玉』に伝説の千葉県人役として出演するなど、活動の幅を広げていた。
ところが10月4日、ジャガーさんの所属事務所が突然、次のような発表をした。
《令和3年、JAGUAR星人のJAGUARが、大好きな地球よりJAGUAR星に帰還いたしました。ここに地球でのご厚誼を深く感謝するとともに、謹んでお知らせ申し上げます。帰還の具体的な時期と理由に関しましては、JAGUARの意思により非公表とさせていただいております。地球での音楽活動、タレント活動、全ての活動において、皆様からの沢山の愛をいただけましたことを、心より感謝申し上げます》
ジャガーさんには、世を忍ぶ仮の姿があった。それは洋服のお直し店など手広くビジネスを展開する実業家の顔であり、地元ではそちらのほうでもちょっとした有名人だった。そのため、事務所の発表後、地元・市川市の住民の間でさまざまな憶測が飛び交っている。ある住民は、
「地元ではジャガーさんはタレント活動や仕事から引退しただけという意見と、亡くなったという意見に分かれています」
別の住民は、
「ここ半年ぐらいは、ほとんど見かけなくなってしまったし……」
実業家としての側面
ジャガーさんは、50年近く前にこの市川市の地に降り立ち、住居兼店舗の戸建てから洋服のお直し店の事業をスタートさせた。
「1階がお直し1号店と、駐車場でね。木造なのに電動式のシャッターで、中から黄色のフェアレディZや外車が出てきていたよ。2階にジャガーさんが住んでいたんだけど、空や星を見るのが好きみたいで、天井がガラス張りだったみたい(笑)」(近所の主婦)
当時は町内会の集まりにもよく参加していたジャガーさん。前出の近所の住民はこう話す。
「気さくな人でしたよ。ま、基本は無口でおとなしい人なんだけどね。僕の亡くなった父親が生きていれば、今年で85歳になるんだけど、その父親が“あんな格好をしているけど、ジャガーさんは俺の少し下なんだから”と言っていました。だから、80歳前後じゃないかな……」
実業家だが、見た目はロックミュージシャンそのもの。
「ロン毛の金髪、黄色やピンクのパンタロンみたいなものをよく履いていましたね。父親も実業家としては彼を認めていましたが、なにしろ風変わりでしたから僕には“近づいちゃダメな人”って言っていましたね(笑)」(同・住民)
80年代にジャガーさんがテレビに出演するようになったとき、最初は彼だとは気づかなかったという。
「友人に“お前の家の近くに住んでいるあの人だよ”と言われて、やっとわかったぐらいだった。だってテレビの中ではヘビメタみたいなメイクをしていたから。一度、ライブを見に行ったら、歌は吉田拓郎のようで意外でした(笑)」(同・住民)
そんな中、別の近隣住民からこんな声が。
「2、3か月前の暑い日の午後3時ぐらいだったかな。ジャガーさんが女性に抱きかかえられるようにして、足を引きずって歩いていた。かなり具合が悪そうだったよ」
この話が本当であれば、容態が気になるところ……。所属事務所に確認すると、
「絶対にあり得ません。それはまったくのウソです」
と全面否定だった。
25年ほど前、地下1階、地上4階建てのビルを建設したジャガーさん。
「1階はかつてライブハウス。2階で美容室も経営していた。本来は3階建てだったんだけど、その上にガラス張りの部屋を造ってね、ジャガーさんはそこに住んでいました。やっぱり空や星を見るのが好きだったんでしょうね」(前出・近所の主婦)
星空を見上げて、JAGUAR星を探してみたくなった。