第18回 東出昌大
法律違反とまではいかなくても、常識や倫理から外れた行動を取ると「あの人はヤバい」と言われがちです。ま、人間なんてだいたいヤバいものでしょうし、芸能人の場合、そのヤバさが仕事につながることもありますから、ヤバさはチャンスと前向きにとらえていただきたい。しかし、ごく一部ではありますが、芸能人であれ一般人であれ、他人の人生を侵食するタイプのヤバさを持っている人もいます。今回はそんな「最強のヤバ男」について考えてみたいと思います。
渡部建との違い
記憶に残るヤバい人と言えば、アンジャッシュ・渡部建を思い浮かべる人もいるのではないでしょうか。昨年6月に『週刊文春』に“多目的トイレ不倫”を報じられ、現在は芸能活動自粛中。これまでに何度か復帰説が持ち上がっていますが、実現するまでには至っていません。
妻で女優の佐々木希ら家族に迷惑をかけ、これまでの芸能人人生を棒に振ってしまった、その上、復帰の目途も立っていない。自業自得とは言え、こんな渡部を芸能界「最強のヤバ男」と見る人もいるかもしれません。確かにヤバいとは思いますが、私に言わせると、渡部のようなタイプは「避けられるヤバ男」だと思うのです。
渡部が女性と会うのは、多目的トイレというお金のかからない、かつ非衛生的な場所でした。渡部は佐々木希との交際や結婚を隠していたわけでもありません。これらの行動から推測するのなら、渡部は相手の女性とは遊びのつもりだったと見ることができるでしょう。渡部のしたことは決してほめられたことではありませんし、個人的には気持ち悪いと思います。しかし、渡部は堂々と行動で「遊びですよ」と示しているわけですから、この関係をどうするかは相手の女性の判断にかかっています。女性をだましたり、おどしたりもしていない渡部は、ある意味親切と言えるかもしれません。
ちなみに日ごろの渡部は、他人にお金を使わないタイプではなさそうです。渡部は、2020年放送の『今夜くらべてみました』(日本テレビ系)で、人気の飲食店に行くときは手土産を持っていくことを明かしていました。渡部の場合、グルメは仕事のひとつでもありましたから、大事にしたい人には人一倍気を使う一方、人に見られたらマズい関係の女性には1円もかけたくないという超合理的な思考の持ち主なのでしょう。
一般人の世界でもこういう人はちょいちょいいて、こういうヤバ男は見分けるのは難しくないと思います。職場で力のある上司にしか反応しない人、同じ部の人が何か困っていても自分には関係ないとばかりに無視する人、若い、もしくはかわいい女子社員としか話さない人は渡部タイプだと言えるでしょう。
しかし、他人の人生を侵食する「最強のヤバ男」というのは、すぐに見分けられないところに怖さがあるように思います。
渡部以外で近年稀に見るヤバさを発揮したと言えば、俳優・東出昌大が思い浮かびます。女優・杏と結婚してお子さんにも恵まれ、イクメンのイメージで売っていた東出でしたが、実は家事も育児も妻まかせ。しかも杏の第3子妊娠中から共演した女優・唐田えりかと不倫をしていたことを『週刊文春』に報じられました。東出だけでなく、SNSで頻繁に匂わせをしていた唐田も激しいバッシングにさらされます。
人気俳優と駆け出しの女優の不倫は珍しい話ではありませんが、この不倫劇はちょっとイレギュラーな部分もありました。
東出の行動が常に矛盾する理由
東出と唐田の関係は杏にバレてしまい、東出は「今後はもう(唐田と)会わないし、連絡もしない」と約束しています。ここで終わりにすればよかったのですが、東出が唐田に「会いたい」とメッセージを送ったことで、二人の関係は元に戻ってしまうのです。客観的に考えると、東出は唐田に心を持っていかれているような印象を受けるのですが、不倫がばれ、杏やお子さんと別居することになった際、東出の所属事務所は「今回の別居は離婚へ向かうものではなく、なんとか修復のステップを踏むための冷却期間と聞いております」と発表し、東出に離婚の意志がないことを表明したのでした。
若い女優と不倫をする、でも妻も妊娠する。自分から不倫関係を解消する、でも、再び「会いたい」と連絡する。不倫関係が復活する、けれど、週刊誌にバレたら「離婚はしたくない」とコメントする。
東出の行動は常に矛盾しており、妻、不倫相手のどちらの立場の女性も「この人はいったい何がしたいの?」と混乱してしまうでしょう。なぜこうも気分がコロコロ変わるかというと、東出は常に自分が中心にいて、愛情が注がれていなければ満足できないタイプだからではないでしょうか? 自分は愛さないのに、愛されたいのだとしたら、それは「最強のヤバ男」と言うしかないでしょう。
東出の自分中心なスタイルは、今も変わらないようです。『週刊文春』10月21日号で、東出の新しい恋人の存在が明らかになりました。東出は一般人女性にベタ惚れで、彼女に近所に引っ越してくるように頼んだり、ロケ地に呼び寄せたりしているそうです。彼女も《5歳年上なのにまるで5歳児なのは、こうやって甘やかしてしまう私のせいでもある》と、甘えられてまんざらでもない様子。
おそらく彼女は「東出が甘えてくるのは、それだけ愛されているのだ」と思っているのでしょうが、甘え上手の中には、単なる自分しか愛さない「最強のヤバ男」予備軍がいることも覚えていてほしいと思います。そこに気づかないでハイハイ言うことを聞いていると、いつのまにか「私ばっかり大変」な状況に陥ったり、心身の健康を害してしまう可能性もあります。
自分に自信がない女性や、親が頼りにならない機能不全家庭に育ったために、物事をなんでも自分で解決するクセがついている女性、判断力がない女性がターゲットになりやすいので、自分があてはまっていないか考えてみてください。
こんなふうに書くと、「甘えてくるオトコはヤバいのか」と怖くなってしまう人もいるかもしれませんが、甘えることは悪いことではなく、人間関係の妙味です。心理学では、人間関係はお互いが同じくらい甘えることが、二人の関係性をよくするとされています。こちらの言うことはスルーなのに、自分の言い分だけは通すなど、甘えのバランスがおかしくないかを考えてみましょう。「甘えん坊な彼」が、本当はあなたを苦しめる「最強のヤバ男」でないことを祈るばかりです。
<プロフィール>
仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ。会社員を経てフリーライターに。『サイゾーウーマン』『週刊SPA!』『GINGER』『steady.』などにタレント論、女子アナ批評を寄稿。また、自身のブログ、ツイッターで婚活に悩む男女の相談に応えている。2015年に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)を発表し、異例の女性向け婚活本として話題に。好きな言葉は「勝てば官軍、負ければ賊軍」