《だいたいさあぁ〜そうやってメソメソした感じだからなめられんのよ》
《あっごめん! ちょっと毒舌すぎた? でも本当のことだよ》
《みんな私みたいにサバサバ生きればいいのに》
『自サバ女』─“自称サバサバ女”を主人公にした『ワタシってサバサバしてるから』が漫画サイト『めちゃコミック』の月間総合ランキングで1位となるなどヒットしている。
雑誌編集部に勤める自サバ女の主人公は、冒頭のような発言で同僚に疎まれている。しかし、自サバ女に悩まされるのは、漫画の登場人物たちだけではない。世間にもあちらこちらに潜んでいて……。
「甘くて弱い酒とか無理〜」
「中途で入ってきた女性が自分のキャリアに自信があるのか、意識高い系で……。下の立場である私たちに“気遣いとか配慮とかいらないから、思ったことがあったらなんでもガンガン言ってきて”とか、仕事なんだから忖度無用みたいな感じ。
自分のことをサバサバ女だと思ってる。自分のことが圧倒的に正しいと思って、違う考え方の人を真っ向から否定。そのくせミスをすると、自分の能力への自信からそれを認めない。自分よりいい仕事した人がいれば悪口を言ったり、サバサバどころか誰よりもネチネチしていて……」(30代女性・会社員)
職場だけでなく、それは友人関係でも現れる。
「可愛い派手めなスカートとかをはいてると、“ワタシってそういういかにも可愛いみたいな服着れないんだよね〜。うらやましいよ”とか“そういう男ウケよさそうな服が着られていいなぁ。男ウケとかどうでもいいんだけど(笑)”みたいなことをたびたび言ってくる友達。周りは誰よりも男ウケを気にして、媚売ってることに気づいています」(30代女性・会社員)
“サバサバしてるから”を、免罪符に他人をイラつかせる自サバ女。
「私思ったこと何でも言っちゃうからさ~」
「女子とは気が合わない」
「男と一緒にいるほうが楽」
「女の子ってネチネチしてて怖いじゃん」
「甘くて弱い酒とか無理〜」
そこのけそこのけ、今日もどこかで自サバ女が人を困らせる。
「『自サバ女』は、“サバサバ”の意味を、自分の都合のいいように解釈してしまっています。それにより、自分の欠点を正当化しているところがあります。
例えば、“空気を読まない”“人の気持ちを察することをしない”というこまやかな心配りができないところを、本人は“サバサバしている”のだと解釈してしまっているところがあります。でも、それは、サバサバというよりは、無神経なだけ」
そう話すのは、『愛される人の境界線』など、恋愛や“大人女子”についての著作も多いコラムニスト・ひかりさん。
自サバ女は「他称ネチネチ女」
「本当のサバサバしている女性ならば、人付き合いにおいては、相手に気を遣ったり、相手の思いを酌んだりすることで、自分の意見を抑えることもあるし、サバサバできないところも。
でも、それこそが、思いやりです。だから、単にサバサバすればいいわけではないんですよね。サバサバが本当なら、大らかな性格だから、細かいことは気にせず、スッキリ、さっぱりした性格の人のこと。執着を持たない、固執しない人」(ひかりさん、以下同)
一方、自称のほうは……。
「自サバ女は、その逆で、大らかさがないので、細かいところを気にしてしまうことが多いし、根に持ってしまうので、性格がサッパリしていないところも。つまり、『自称サバサバ女』イコール『他称ネチネチ女』といえるかもしれません。
例えば、漫画『ワタシってサバサバしてるから』の自称サバサバの主人公は、“人に自分を認めさせること”に固執しています。だから、自己アピールが強い。
“私って、こういうタイプなの”と自分を押しつけてしまう。また、他人を貶めて、自分の価値を上げようとする。“私って、サバサバしているから”というのは、自分は素敵な人間だと、人に認めさせようとしている言葉なのです」
なぜ「自サバ女」になってしまうのだろうか?
「私って、サバサバしているから”という言葉の裏には、“自分をわかって。受け止めて”という思いが隠れています。つまり、劣等感が強くて、自分で自己をきちんと受け止められていないから、人に認めてもらうことで、安心したいのです。
自分を肯定できている人は、むやみに人に自己アピールはしないものです。特に、自分の女性としての魅力にコンプレックスを抱いている人は多いでしょう。だから、“サバサバ=男っぽい女”という都合のいい解釈で、女らしさを捨て、自分のポジションをつくろうとする人も。
また傷つかないために、女性らしさを封印しているところも。そういう人は、“女子とは気が合わない”など、『女性の敵』となるような発言をすることも少なくないでしょう。その言葉の裏には、女性として魅力あふれた人に対して、うらやましさを感じている部分もあるでしょう」
「相手のイジリにマジで返す」
自サバの女への対処法、反撃することはできる?
「どんな間柄かにもよりますね。基本は、“同じ土俵に上がらない。相手にしない。聞き流す。でも、会社や取引先の上司の場合は、相手を肯定してあげると、優しくなることも」
自サバ女は、劣等感が強く、本当は人に認められたくて仕方がない。
「お世辞までは言わなくても、相手のいいところを見つけて褒めてあげると、優しくなることも。ただ、劣等感の強いタイプは、嫉妬心も強く、相手が優しくなったとしても、距離感には気をつけたほうがいい。
距離が近すぎると、嫉妬心から足を引っ張られることもあるので注意。自サバ女の標的になり、“他人(女性)を落として、自分の価値を上げようとする手段”に使われそうなときは、“相手のちゃかし・イジりにマジで返して、かわす”という手も」
漫画では飲み会でオシャレと褒められた女性に対し、主人公が女を出したかいがあったとばかにした。すると女性は「お気に入りの服を着てきただけですが、下品でしたか?」と返し、黙らせた。
「ただ、関わるほどイライラするので、関わらないに越したことはないでしょう……」
あなたの周りにもきっといる自サバ女。離れるか、戦うか……。
初出:週刊女性2021年11月9日号/Web版は「fumufumu news」に掲載